ドル円見通し Wトップ(破り)、または三尊(12月第二週)

米労働省が8日夜に発表した11月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比22万8000人増となり、市場予想の20万人増を上回った。

ドル円見通し Wトップ(破り)、または三尊(12月第二週)

【概況】

11月28日未明安値110.84円から上昇再開となり、12月1日には112円台後半まで続伸していた。1日深夜にはトランプ大統領の元側近であるフリン氏が訴追され、捜査に全面協力すると報じられたことで1時間のうちに1.47円幅で111.40円まで急落、112円台まで戻して前週を終えていた。
12月2日、米上院が本会議で税制改革法案を僅差で可決したため、週明けの4日は一転して反騰、28日以降の戻り高値を更新して4日夜には113.08円を付けた。しかし、5日、6日と株安不安から下落して6日夕刻には112円をわずかに割り込むところまで押されたが、その後は米税制改革法案の上下院協議が進展するとの楽観見通しと8日の米雇用統計、12月12-13日のFOMCにおける利上げを意識して上昇を再開、8日夕刻には113.58円まで高値を伸ばした。
米雇用統計発表からいったん小反落するも戻し、113円台半ばで週を終えた。

【米雇用統計反応】

米労働省が8日夜に発表した11月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比22万8000人増となり、市場予想の20万人増を上回った。前月は当初の26.1万人増から24.4万人増へ下方修正されたが、巨大ハリケーンの影響で3.8万人増にとどまった9月からの改善傾向継続を示し、労働市場環境力強さを見せた。失業率は前月と同じ4.1%を維持し、2000年12月の3.9%以来17年ぶりの低水準となっている。ただ、平均時給は26.55ドルとなり、前月比0.05ドル増、0.2%増に止まり、市場予想の0.3%増には届かなかった。
発表後、非農業部門就業者数が予想を上回ったことがドル高材料だったが、平均時給の伸びがいまいちだったことで反応は限定的なものにとどまった。ドル円はいったん下げてから戻したが、値動きはわずかだった。

12月12-13日に米連銀FOMC(連邦公開市場委員会、金融政策決定会合)がある。14日未明には声明文発表と議長会見が予定されている。この会合で今年三度目の利上げが決定されると市場は予想しており、今回の雇用統計内容も利上げにブレーキをかけるものではなかったため、ほぼ確実な情勢となっている。
問題はメンバーによる来年の利上げ見通しがどうなるのかということになる。2016年12月会合での2017年利上げ見通しでは、3回の予想が最多だったが、4回以上の予想も多かった。
トランプ政権による大規模減税・税制改革法案が年内成立見込みとなっており、多少ずれ込んでも早晩実現する可能性が高まっていることが、新たな情勢変化といえる。連日のように史上最高値を更新してきた株高基調も継続しており、資産バブルへの懸念も出てきて不思議ではない。労働市場はほぼ完全雇用に近いが、賃金上昇はもう一つであり、インフレ目標にはなかなか到達しない状況が長引いていることもある。

インフレ目標達成を第一義的に考えれば利上げペースは緩やかなものとならざる終えないが、資産バブル懸念と完全雇用に近い状況に加えて減税が動き出すことを第一義的に考えれば、3回ないし4回の利上げ、あるいは引き上げるべき金利目標水準が従来よりも引き上げられる可能性もあるだろう。
イエレン現議長が来年2月で退任し、イエレン氏に近いとされるパウエル理事の議長就任が決まっている。トランプ政権によってメンバーの空席も埋められてきている。メンバーの2018年利上げ予想回数、金利予想水準がどうなるのかにより、ドル高が進むか、ドル高が材料消化となって一巡するのかが決まってくるのだろう。

【11月6日高値に迫るか、三尊の右肩で終わるか】

【11月6日高値に迫るか、三尊の右肩で終わるか】

12月8日への上昇で11月28日未明以降の戻り高値を更新した。12月4日時点では壁となった26日移動平均を上抜いて続伸している。8日時点の高値は113.58円で、10月6日の戻り高値113.43円を若干上回ったが、11月6日高値114.72円に対してはまだ距離がある。

(1)26日移動平均を上回るうちは、11月28日未明からの上昇継続として11月6日高値114.73円とのダブルトップ形成へ向かう可能性を考える。
(2)114円台へ乗せる場合、今年2月以降の戻り抵抗帯=114円台前半から3月10日高値115.50円にかけてのゾーンに入ってくる。この抵抗帯を突破できるかどうかはFOMCに対する反応で決まってくるのだろうと思われる。ダブルトップまでの上昇で終わらずにこの抵抗帯を突破する勢いとなる場合、9月8日から11月6日への上昇を一段目とし、11月28日未明からの上昇を二段目とし、N字型の上昇波動と仮定すればN=118.24円が上値目途として意識されるため、昨年12月15日天井118.65円へ迫る可能性も考える必要があるだろう。その条件はFOMC後もドル高が継続し、米長期金利が上昇することだ。

(3)FOMC声明発表前段階での上昇を躊躇して114円に乗せられないか、乗せても維持できない場合、ないしはやや下落先行で112円台前半へ押される場合、FOMC後にドル安円高反応へ進むとチャートの姿はダブルトップ型ないしは三尊天井型となる可能性が考えられる。すなわち、11月6日高値を頭、10月6日高値を左肩、現状を右肩とした三尊である。三尊ないしダブルトップの完成目安は11月28日未明安値110.84円を割り込むところと考えられる。
(4)FOMCから下落基調に入り、11月28日未明安値割れへと崩れる場合、概ね1年周期の天井(昨年は12月15日天井)を付けての下落期入りとなる可能性が高まる。その場合は11月6日高値から11月27日への下落幅の二倍値E=106.96円を目指す可能性が考えられる。(了)<10日21:30執筆>

【今週の主な予定】

12月11日
08:50 (日) 10-12月期景況判断BSI (前期 5.1、予想 5.8)
08:50 (日) 11月マネーストックM3

12月12日
   (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、13日まで
19:00 (独) 12月ZEW景気期待指数 (11月 18.7、予想 17.8)
22:30 (米) 11月生産者物価指数 前年比 (10月 +2.8%、予想 +3.0%)
22:30 (米) 11月生産者物価指数・コア 前年比 (10月 +2.4%、予想 +2.4%)

12月13日
07:15 (豪) ロウRBA総裁、講演
08:50 (日) 10月機械受注 前年比 (9月 -3.5%、予想 -3.9%)
18:00 (日) 黒田日銀総裁、講演
22:30 (米) 11月消費者物価指数 前年比 (10月 +2.0%、予想 +2.2%)
22:30 (米) 11月消費者物価指数・コア 前年比 (10月 +1.8%、予想 +1.8%)

【今週の主な予定】

12月11日
08:50 (日) 10-12月期景況判断BSI (前期 5.1、予想 5.8)
08:50 (日) 11月マネーストックM3

12月12日
   (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、13日まで
19:00 (独) 12月ZEW景気期待指数 (11月 18.7、予想 17.8)
22:30 (米) 11月生産者物価指数 前年比 (10月 +2.8%、予想 +3.0%)
22:30 (米) 11月生産者物価指数・コア 前年比 (10月 +2.4%、予想 +2.4%)

12月13日
07:15 (豪) ロウRBA総裁、講演
08:50 (日) 10月機械受注 前年比 (9月 -3.5%、予想 -3.9%)
18:00 (日) 黒田日銀総裁、講演
22:30 (米) 11月消費者物価指数 前年比 (10月 +2.0%、予想 +2.2%)
22:30 (米) 11月消費者物価指数・コア 前年比 (10月 +1.8%、予想 +1.8%)

12月14日
04:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 1.00-1.25%、予想 1.25-1.50%へ引き上げ)
04:30 (米) イエレンFRB議長会見
11:00 (中) 11月小売売上高 前年比 (10月 +10.0%、予想 +10.3%)
11:00 (中) 11月鉱工業生産 前年比 (10月 +6.2%、予想 +6.2%) 
11:00 (中) 11月固定資産投資 年初来 前年比 (
13:30 (日) 10月鉱工業生産 前月比 確報 (速報 +0.5%)
17:30 (独) 12月製造業PMI速報 (11月 62.5、予想 62.0)
17:30 (独) 12月サービス業PMI速報 (11月 54.3、予想 54.6)
17:30 (ス) スイス国立銀行(SNB)金融政策、(現状 -1.25-0.25%、予想 据え置き)
18:00 (欧) ユーロ圏12月製造業PMI速報 (11月 60.1、予想 59.7)
18:00 (欧) ユーロ圏12月サービス業PMI速報 (11月 56.2、予想 56.0)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利発表 (現行 8.00%、予想 据え置き)

21:00 (英) イングランド銀行金融政策委員会(MPC)政策金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)資産購入枠 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会、政策金利発表 (現行 0.00%、予想 据え置き)
22:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.6万件、予想 23.9万件)
22:30 (米) 11月小売売上高 前月比 (10月 +0.2%、予想 +0.3%) 
22:30 (米) 11月小売売上高 除自動車 前月比 (10月 +0.1%、予想 +0.7%)
24:00 (米) 10月企業在庫 前月比 (9月 0.0%、予想 -0.1%)
26:25 (加) ポロズBOC総裁、講演

12月15日
   (欧) EU首脳会議(ブリュッセル)
08:50 (日) 日銀短観 大企業製造業 (前期 22、予想 24)
22:30 (米) 12月NY連銀製造業景況指数 (11月 19.4、予想 18.0)

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