ドル円見通し 揺れ返しの上昇続くか(週報12月第一週)

12月1日深夜、ロシアゲート問題でトランプ政権の元高官だったマイケル・フリン氏が偽証罪で訴追されたこと、同氏が容疑を認めて捜査に全面協力すると報じられたために

ドル円見通し 揺れ返しの上昇続くか(週報12月第一週)

【概況】

11月6日に114.73円まで上昇して7月11日高値114.49円をわずかに上抜いたが、その後は下落に転じ、11月28日未明には110.84円の安値を付けた。そこまでの下落はドイツ総選挙後の連立政権協議の決裂、ロシアゲート問題の再燃、米税制改革法案成立への不透明感、米連銀のハト派的な金融政策姿勢等が背景であった。
ところが11月28日夜から流れが変わった。米経済指標の強さ、米連銀の次期議長および現議長の議会証言(12月利上げ姿勢)、米税制改革法案の上院予算委員会通過がドル高株高、米長期債下落=長期金利上昇となり、リスクオンと日米長期金利差拡大によるドル買い円売りにより、12月1日深夜には112.875円を付けた。この1週間の上昇幅は2.03円幅であり、11月14日から20日朝にかけて2.03円幅したところとは逆の上昇幅となった。また相場の揺れ返しとしては、11月21日高値112.70円からの下落に対して112.875円とわずかに上回ってきた。

しかし、12月1日深夜、ロシアゲート問題でトランプ政権の元高官だったマイケル・フリン氏が偽証罪で訴追されたこと、同氏が容疑を認めて捜査に全面協力すると報じられたためにドルが急落、米長期債が上昇(長期金利は低下)、米国株もいったん急落反応となり、ドル円は2日未明安値111.404円までわずか1時間で1.41円幅の急落となった。その後は米国株が楽観的心理を取り戻して反発したため、ドル円も凡そ急落分の半値を戻して112円台を回復して終了している。
取引終了後、12月2日には米上院が税制改革法案を本会議で可決したと報じられている。

【ロシアゲート問題と米税制改革進展】

12月1日夜、トランプ政権の元高官であり、トランプ大統領誕生に多大な貢献をしたとされるマイケル・フリン氏が訴追された。同氏はトランプ大統領の娘婿であるクシュナー上級顧問による要請でロシア、イスラエルと接触したとされ、米大統領選挙運動に関して何等かの法令違反があった可能性が指摘されているが、フリン氏は容疑を認めて捜査への全面協力姿勢を示したとされる。一方でホワイトハウスは、フリン氏が嘘の説明を政権側にしていたために2月に更迭したとし、政権運営に問題はないとしている。
この問題が大統領弾劾へと発展するのかどうかは推移を見守る必要があるが、NYダウはこの報道をきっかけにいったん急落したものの早々に戻した。またドル指数もドル円も同様にいったん急落した後は半値を戻している。

12月2日、日本時間午後に米上院は税制改革法案を本会議で可決した。採決結果は賛成51、反対49だった。共和党の反対者は1名に止まった。上院の可決した法案と下院の可決した法案では内容が異なるため、12月4日から上下両院協議会による調整協議が始まる予定だ。個別条項を巡る協議は難航するのではないかとされているが、いずれにしても30年ぶりの大型改革が進展することになるため、株式市場にとっては昨年11月以降のトランプラリーを継続させてゆく心理的な後押しになるものと思われる。

ロシアゲート問題と税制改革(大型減税)、市場にとっては不安要素と強気要素が入り混じることになるが、より楽観的で現状肯定的な強気材料へ反応しやすいのではないかと思われる。

【26日移動平均線の攻防】

【26日移動平均線の攻防】

11月6日高値114.73円から11月27日安値110.84円まで4円近い下落となった。この下落に対する半値戻しが112.78円であり、12月1日高値でひとまず到達した。また今回の下落は11月15日に113円割れ、26日移動平均割れとなったところから加速したが、1日夜の高値で26日移動平均まで戻している。26日移動平均を割り込んだ相場はその後の反発では同線が戻り抵抗となりやすいが、逆に言えば同線を超えて続伸し始めれば強気転換として手前の高値=11月6日高値を試すところへと進む可能性が開ける。特に今回は11月28日から日足3本連続の陽線=赤三兵から戻してきているので、1日の陰線を入れても再び陽線連続で戻り高値を切り上げてくる=26日移動平均を超えてくれば11月6日高値を再び試す可能性も高まってくると思われる。

しかし、一時的に113円台へ乗せても反落し、今回の戻り幅の半値以上を削る下落となる場合は11月27日安値試しとなり、安値更新の場合は戻り高値切り下がり、その後の安値も切り下がる弱気パターンでの二段下げに入るため、先行きもさらに円高ドル安が進みやすくなる。12月8日の米雇用統計へ向けた前哨戦となる米経済指標が強く、12月4日から始まる見込みの米上下院協議会による税制改革法案成立への進展があればドル高株高円安という流れもできやすいだろう。逆にロシアゲート問題がさらに暗雲となり、上下院協議が進まず、米経済指標もさほど強くないという展開になれば上昇を継続できずに失速へ向かう可能性も残っている。経済指標の内容、税制法案とロシアゲート関連報道等にしばらく一喜一憂しながら週末の米雇用統計を迎えるという、やや波乱もありつつの展開だろうか。

以上を踏まえ、当面の判断目安を示す。
(1)12月1日深夜高値(112.875円)を上抜き返せないうちは112.00円を中心に112円台中盤から111円台後半での持合い推移が続く可能性がある。
(2)112円を上回る状況が続く場合は上向きと仮定し、112.50円超えからは112.875円超え試しを想定し、高値更新なら113.50円から113.91円(11月14日高値)試しへと上値目途を切り上げる。113.50円以上はいったん売られやすいと注意するが、株高がかなり進む場合は114円到達の可能性もありとみる。
(3)112円以下での推移が続く場合は2日未明安値111.40円試しとし、安値更新の場合は週末にかけて28日未明安値110.84円に迫る下落へ向かう可能性を警戒する。

※ 週後半へ上昇基調継続なら12月8日の米雇用統計からの一段高期待、さらに12月12-13日のFOMCへ向けた上昇継続の可能性を考える。週後半へ下落の場合は米雇用統計からさらに一段安するリスクを警戒、またその後も続落ならFOMCまで安値試しが続く可能性を考えてゆく。
市場心理は1週間単位でころころ変わるものだ。また連騰していても12月1日深夜のように、突然急落するリスクも常に抱えていることを念頭に入れておきたい。(了)<3日22:00執筆>

【当面の主な予定】

12月4日
    (欧) 非公式ユーロ圏財務相会合、次期議長選出(ブリュッセル)
    (英) メイ英首相・ユンケル欧州委員長会談(ブリュッセル)
24:00 (米) 10月製造業受注指数 前月比 (9月 +1.4%、予想 +0.3%)

12月5日
    (欧) EU経済・財務相理事会(ブリュッセル)
10:45 (中) 11月財新サービス業PMI (10月 51.2 )
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
19:00 (欧) ユーロ圏10月小売売上高 前月比 (9月 +0.7%、予想 -0.7%)
22:30 (米) 10月貿易収支 (9月 -435億ドル、予想 -474億ドル)
24:00 (米) 11月ISM非製造業景況指数 (10月 60.1、予想 59.0)

12月6日
09:30 (豪) 7-9月期GDP 前期比 (前期 +0.8%、予想 +0.7%)
09:30 (豪) 7-9月期GDP 前年比 (前期 +1.8%、予想 +3.0%)
22:15 (米) 11月ADP全国民間雇用者数 (10月 +23.5万人、予想 +19.0万人)
22:30 (米) 7-9月期非農業部門労働生産性 確報値 (速報 +3.0%、予想 3.3%)
22:30 (米) 7-9月期単位労働コスト 確報値 (速報 +0.5%、予想 +0.3%)
24:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利発表 (現行 1.00%、予想 据え置き)

12月7日
19:00 (欧) ユーロ圏7-9月期GDP・確報値 前期比 (速報 +0.6%、予想 +0.6%) 
19:00 (欧) ユーロ圏7-9月期GDP・確報値 前年比 (速報 +2.5%、予想 +2.5%) 
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.8万件、予想 24.0万件)

12月8日
未定 (中) 11月貿易収支 (10月 +381.7億ドル、予想 347.0憶ドル)
08:50 (日) 7-9月期GDP・2次速報値 前期比 (速報 +0.3% 予想 +0.4%))
08:50 (日) 7-9月期GDP・2次速報値 前期年率比 (速報 1.4%、予想 +1.5%)
22:30 (米) 11月非農業部門雇用者数 (10月 +26.1万人、予想 +19.9万人)
22:30 (米) 11月失業率 (10月 4.1%、予想 4.1%)
22:30 (米) 11月平均時給 前月比 (10月 +0.0%、予想 +0.3%)
24:00 (米) 12月ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (11月 98.5、予想 99.0)

12月9日
10:30 (中) 11月消費者物価指数 前年比 (10月 +1.90%、予想 +1.8%)
10:30 (中) 11月生産者物価指数 前年比 (10月 6.9%、予想 )

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