【概況】
11月3日夜の米雇用統計直後の安値112.95円から上昇して11月6日午前には114.734円の高値を付けた。7月11日高値114.49円を若干超えたが、その後は反落に転じた。10月23日に114円台を回復した後、1円弱の調整安を入れながら10月25日、27日と高値を切り上げたときとは真逆に6日午前高値の後は1円弱の下落から戻して、また1円弱の一段安を繰り返し11月10日未明には113.093円まで下げた。
11月6日への上昇は9月8日から始まった。2か月で7.4円幅であるが、ちょうど7月11日高値から9月8日へ2か月間下げ、7.17円幅下落したことに対する「イッテコイ」は実現した。
連日のように史上最高値を更新してきたNYダウが9日には一時253ドル安と急落したが、その引き金になったのは同じく大連騰してきた日経平均が9日に当日の高値から安値まで860円安と暴落したことであった。株高に対する警戒感が一挙に噴出したともいえる。日経平均は10日も続落し、9日に付けたローソク足における上下の長いヒゲのうち、下ヒゲ部分に止まって続落。NYダウも9日の下ヒゲ陰線の下ヒゲ部分に止まった。トランプラリー、総選挙での与党勝利と日銀金融会合・株買い支え期待という楽観による「もうはまだなり」の総強気状態にあった株式市場に対して、その裏側でリスク回避感が侵食し始めたためにドル円が6日高値で7月高値を超えたところ以上へと走れなかった市場心理があるかもしれない。
【1年サイクル、26日移動平均、中勢の判断目安】
テクニカル的な状況を整理しておこう。
@ 9月8日安値から2か月間の上昇で、手前の下落分を解消したが、ほぼ左右対称的な展開でイッテコイを実現した。また3月以降の戻り高値は3月10日の115.50円、手前の114円台に対しては、戻り抵抗帯に到達した。このため揺れ返しの下落へ進む可能性が警戒される。
A 上昇途中の10月16日安値への下落では上昇相場の重要支持線となる26日移動平均をザラバで割り込むところまで下げたが切り返した。11月6日からの下落で9日にはザラバで同線を割り込んだが、10日はぎりぎり上回っている。7月11日からの下落、3月10日からの下落はいずれも26日移動平均割れから下落が加速していった。5月11日からの下落は5月17日に同線を一挙に割り込んでからさらに一段安へ向かった。今回も26日移動平均を維持できるかどうか、一時的に割り込んでも翌日から切り返すなら強気回復だが、同線割れから続落なら3月、5月、7月と同様に下げ再開の可能性を疑うことになるだろうと思われる。
B 週足レベルでは、概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移している。このサイクルの前回底は策ね6月24日のブレクジットショック安値と昨年9月22日安値までの三角持合い終点で付けており、そこから1年目の今年9月8日安値が新たなサイクルの底となっている。前回のサイクルトップは昨年12月15日高値と今年1月3日の毛抜き天井のため、今回の天井形成期は10か月目の10月から1年目となる2018年1月序盤にかけての間と想定される。すでに、いつ天井を付けても不思議ないが、昨年は12月のFOMCにて利上げ決定と2017年の利上げ見通しが示されるまではドル高円安であったので、今年も同様に12月のFOMCまでドル高円安が継続する可能性はある。ただし、下馬評の高かったタカ派のテイラー教授ではなくハト派とされるパウエル理事に決まったため、ここ2年続いたように利上げ決定を待つ12月へとドル高を継続するかどうかはやや怪しい。このため、9月8日からの上昇に対する半値を削る下落となる場合は1年サイクルの天井を付けて下落期入りした可能性を優先すべきかもしれない。
C 仮に26日移動平均を支持線として反発し、114円を回復してくる場合は高値更新へ進む可能性が高まる。伸び代としては3月10日高値115.50円試し、あるいはやや超える可能性もあるかもしれない。
D 26日移動平均割れから続落の場合ないしは11月9日安値割れからはまず、10月16日安値111.64円試しとし、さらに割り込む場合は1年サイクルの下落期入りの可能性も意識しつつ、110円、次いで9月8日安値試しへ向かう可能性を考える必要が出てくるだろうと思う。
【株安リスク】
11月9日、日経平均が1日の騰落で860円安となり、日足(ローソク足)は上下に長いヒゲを同規模で付けた。翌日はその下ヒゲ部分から抜け出せずに終わった。長い下ヒゲを付ける場合、その下ヒゲ部分を温存して切り返せば「たくり足」としてかえって強いが、下ヒゲをつぶす下落となれば、下ヒゲによる「たくり上げ」効果は失せる。日経平均の強気回復には9日の上ヒゲ部分を塗りつぶしにかかる上昇発生が必要であり、上ヒゲが残っているうちは一段安警戒が続くと思う。
株安継続ならドル円にとっても大きなリスク回避円高要因となってくる。特にNYダウが下げに転じるようならその可能性も高まる。9日昼までは万人総強気であり、株買いに乗り遅れるな、という市場心理であった。週明けから反騰に転じるようならその強気心理も相当強烈なものとして再認識されるが、下落基調へ進み始めれば、高値をつかんだ買い方の狼狽売りが始まるため、それまでの買い連鎖による大上昇とは真逆の展開になっていっても不思議ない。
ドル円でも、アベノミクスの初期、2013年2月25日、高値94.72円から安値90.89円まで、1日で4円近い暴落となる大陰線が出現したことがある。しかしその時は、翌日に下げ渋り、3月には一段高へと進んだ。いわゆる高所恐怖症による買い方の狼狽売りだったが、それが一巡すればバーゲンセール買いが凌駕した。こうした高値圏の大陰線は「化け線」と言われる。今回の日経平均も「化け線」となるのかどうか、週明けの終値を前日比でマイナスとせずに切り返せるかどうかが大事だろう。ただ、切り返して高値を更新したとしても、今回の急落商状が近い将来の天井形成への警告となっている可能性を考えるべきだろうと思う。
為替市場としても、株式市場がさらに楽観論で進むのか、本格的な反動安に入るのか、大いに注目される。(了)<6:35執筆>
【当面の主な予定】
11月13日
休 場 (加) トロント市場休場(リメンブランスデー)
ASEAN首脳会議(マニラ)、米比首脳会談
08:50 (日) 10月企業物価指数 前年比 (9月 +3.0%、予想 +3.0%)
09:10 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
18:00 (欧) コンスタンシオECB副総裁、講演
11月14日
02:45 (日) 黒田総裁、発言
11:00 (中) 10月小売売上高 前年比 (9月 +10.3%、予想 +10.4%)
11:00 (中) 10月鉱工業生産 前年比 (9月 +6.6%、予想 +6.3%)
16:00 (独) 7-9月期GDP速報値 前期比 (前期 +0.6%。予想 +0.6%)
16:00 (独) 7-9月期GDP速報値 前年比 (前期 +0.8%、予想 +2.0%)
17:05 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
19:00 イエレンFRB議長、ドラギECB総裁、カーニーBOE総裁、黒田日銀総裁、討論会に参加
19:00 (欧) ユーロ圏7-9月期GDP速報値 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.6%)
19:00 (欧) ユーロ圏7-9月期GDP速報値 前年比 (前期 +2.5%、予想 +2.5%)
22:15 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
22:30 (欧) クーレECB理事、講演
22:30 (米) 10月生産者物価指数 前年比 (9月 +2.6%、予想 +2.5%)
22:30 (米) 10月生産者物価指数コア 前年比 (9月 +2.2%、予想 +2.3%)
11月15日
03:05 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁
08:50 (日) 7-9月期GDP 1次速報値 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.3%)
08:50 (日) 7-9月期GDP 1次速報値 前期比年率 (前期 +2.5%、予想 +1.4%)
13:30 (日) 9月鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -1.1%)
17:00 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
19:00 (欧) プラートECB理事、講演
22:30 (米) 10月消費者物価指数 前年比 (9月 +2.2%、予想 +2.0%)
22:30 (米) 10月消費者物価指数コア 前年比 (9月 +1.7%、予想 +1.7%)
22:30 (米) 10月小売売上高 前月比 (9月 +1.6%、予想 +0.1%)
22:30 (米) 10月小売売上高 除自動車 前月比 (9月 +1.0%、予想 +0.2%)
22:30 (米) 11月NY連銀製造業景況指数 (10月 30.2、予想 26.2)
24:00 (米) 9月企業在庫 前月比 (8月 +0.7%、予想 +0.0%)
11月16日
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件
22:30 (米) 11月フィラデルフィア連銀製造業指数 (10月 27.9、予想 24.1)
23:00 (英) カーニーBOE総裁、ブロードベントBOE副総裁、カンリフBOE副総裁、ホールデン英MPC委員、講演
23:10 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
23:15 (米) 10月鉱工業生産 前月比 (9月 +0.3%、予想 +0.5%)
23:15 (米) 10月設備稼働率 (9月 76.0%、予想 76.3%)
24:00 (米) 11月NAHB住宅市場指数 (10月 68、予想 67)
11月17日
03:10 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
05:00 (欧) コンスタンシオECB副総裁、講演
05:45 (米) ブレイナードFRB理事、講演
06:45 (米) ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
17:30 (欧) ドラギECB総裁、講演
22:00 (独) ワイトマン独連銀総裁、講演
22:30 (米) 10月住宅着工件数 (9月 112.7万件、予想 118.3万件)
22:30 (米) 10月建設許可件数 (9月 121.5万件、予想 124.2万件)
11月18日
07:30 (米) ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、会見
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2017.11.13
ドル安正念場、調整終了近いとの声も(11月第二週)
先週のドル/円相場は、ドル安・円高。ただ、それほど際立った方向性が示されたわけではなく、基本的にはレンジ内。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2017.11.10
米株の動きを警戒、為替は株価にらみの推移(11/10)
10日の東京市場は、113円前半を中心とした揉み合い。価格変動そのものも30ポイント程度と小さく、目立った動きは見られなかった。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。