<概況>
11月3日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数が前月比26.1万人増となり、前月も当初発表の3.3万人減から1.8万人増へ上方修正、8月分も上方修正されたこと、失業率が4.1%へ改善したこと、ハリケーン復旧の影響で前月にプラス0.5%と上昇した平均時給も前月比変わらずのまま高い水準を維持したこと等、総じて良好な数字となったため、12月FOMCにおける利上げ確率がさらに上がったとしてドル高円安へ進んだ。
3日夜時点では10月27日高値を上抜けず、反応も小規模なものだったが、週明け6日午前の上昇で114.734円を付け、10月27日高値を超え、さらに7月11日高値114.49円も突破、9月8日以降の高値を更新した。
7月11日高値を超えたこと、日米首脳会談での貿易摩擦が焦点化していることも踏まえて短期的な買われすぎ警戒感から反落、夕刻には114円割れまで下げたが、そこは買い戻されて114円台序盤で米国市場時間入りとなった。
6日夜、サウジでの大規模粛清報道があり、リスク回避感からドル円は一段安となり、7日早朝安値で113.69円まで下げた。
【サウジ問題】
サウジアラビアで次期国王と目されるムハンマド皇太子が汚職等を理由として5日までに王族、閣僚らを多数拘束したと報じられた。同王子がサルマン現国王存命中に権力基盤を固めるための粛清とみられるが、11月4日に同王子勅命の捜査機関が設置され、即座に王子11人、現職閣僚4人、数十人の閣僚経験者が一斉拘束された。この中には世界的な投資家として著名なアルワリード王子も含まれる。
サウジアラビア政府は「首都リヤドに向けてイエメンのイスラム教シーア派系武装組織フーシ派が弾道ミサイルを発射したがこれを迎撃した」と報じた、また同武装勢力は要イランに支援されており、今回のミサイル発射は「イランによる軍事侵攻であり、戦争行為の恐れがある」と警告声明を発した。国内の権力闘争と大規模粛清の動きも踏まえれば、対外的な有事リスクを煽って国内基盤を固めようという政治意志も働きやすい。また、アルワリード王子が関与する企業の株価が暴落するなど、サウジによる投資を抱えている企業の株安リスクも発生している。安全資産としてゴールドが反発したが、米国株式市場はこの問題にさほど動揺せず、NYダウは6日に史上最高値を更新している。
【週明けの高値更新と反落】
2週間前、10月22日の解散総選挙と自公政権勝利を背景に23日(月曜日)午前にドル円は114.10円まで上昇して9月8日以降の高値を更新した。しかし、当日深夜の反落で10月24日未明には113.24円まで下落、下げ幅は1円近くとなった。その後は持ち直して25日には高値を更新、再び1円近い下落となってから切り返して10月27日高値114.45円に到達するという展開があった。
今回も材料は異なるものの週明け月曜日の午前に一段高して114.734円を付けたが、7日早朝には113.692円まで下落、1円に迫る下落幅となった。状況的には週明けの一段高とその後の1円近い反落という構図であり、高値更新後の反落で1円前後下げても切り返してくれば、2週間前と同じようにさらに高値を更新してゆく可能性がある。
しかし、下げ幅が1円を超え、その後も114円台回復へ進めずに113.50円以下での推移が続き始める場合は2週間前とは様相が異なってくる。その場合は10月31日安値112.95円試しまで下値支持線も切り下がってくる。さらに10月31日安値割れとなる場合、10月27日高値を一時的に上抜いただけのダブルトップ、さらにより大きく見れば7月11日高値と11月6日昼高値によるダブルトップ形成でドル円は当面の高値を出し切り、いったん大きな調整局面に入るという可能性も出てくる。
北朝鮮情勢は動かずだが、11月7日は米韓首脳会談、8日には米中首脳会談もある。APECで米ロ首脳会談があるかもしれないとされる。9月15日に弾道ミサイル発射を行って以降、目立った動きのない北朝鮮情勢も警戒を怠れない。サウジ情勢も中東有事リスク拡大となる可能性がある。
日米貿易摩擦問題では大量の米国製兵器購入だけで済むのかどうか、円安がけん制される可能性についても市場が警戒心を抱きやすい水準に来ている。3月以降、115円前後凡そ50銭のゾーンが抵抗帯として強固だったことも意識される。
こうしたことを踏まえれば、7月高値を更新したものの、さらに伸びてゆくには新たな推進力となる円安材料、ドル高材料が欲しところという意味合いで昨晩は下げたという見方になろうか。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、6日深夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため、両スパンが再び好転するまでは一段安余地が残る。先行スパンは114.10円から114.30円にかけてのゾーンにあるため、114円試しへ戻しても114円台維持から114.30円超えへ進めないうちは先行スパンが抵抗となって反落しやすいとみる。114.30円超えからは先行スパン突破による上昇再開感が強まるとみる。
60分足の相対力指数は6日夜からの下げで30ポイント台まで低下したが、今のところ強気逆行型は見られていないので、まだ一段安余地が残る印象だ。強気回復には50ポイント超えへ進む必要がある。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、11月3日夜安値を直近のサイクルボトムとし、高値更新による新たな強気サイクル入りとなった可能性を考えたが、6日夜からの反落で3日夜安値へ迫り、余裕がなくなっているので、6日昼高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。31日夕刻安値から5日目に入るので、114.30円超えへ反騰の場合は新たな強気サイクル入りとするが、7日夜へさらに続落の場合は、3日夜安値を直近のサイクルボトムとし、底割れによる新たな弱気サイクル入りとして8日夜から10日にかけて下落が継続しやすくなるとみる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)114.00円前後を抵抗とし、114.30円超えへ進めないうちは一段安余地ありとみる。3日夜安値113.65円割れの場合は10月31日安値112.95円試しを想定する。
(2)114.30円超えからは強気サイクル入りと仮定して9日から13日への上昇基調とし、まず6日昼高値試しを想定する。6日高値前後ではミニダブルトップ形成からの反落に注意しつつ、高値更新の場合は115円台前半試しへ向かうとみる。
(3)2週間前、高値更新後、1円規模の反落を入れつつも切り返して高値を更新するパターンを週末まで繰り返したことを踏まえれば、今回も高値から1円前後の下落を切り返してくる場合は2週前に近い展開になる可能性もあると念頭に入れておく。(了)<11:15執筆>
【当面の主な予定】
11/7(火)
EU財務相会合
トランプ大統領訪韓 米韓首脳会談 共同記者会見
12:30 (豪) 豪準備銀行(中央銀行)、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
18:00 (欧) ドラギ総裁 発言
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -0.5%、予想 +0.6% )
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 1.2%、予想 +2.8%)
11/8(水)
02:35 (米) クオールズ次期FRB副議長 講演
02:45 (加) ポロズBOC総裁 講演
トランプ大統領 韓国国会で演説
未 定 (中) 10月 貿易収支 (9月 285.0億ドル、予想 394.5憶ドル)
未 定 (中) 10月 貿易収支 (9月 1930.0億元、予想 2774.0憶元)
14:00 (日) 9月 景気先行指数 CI速報 (8月 107.2、予想 106.6)
11/9(木)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)、閣僚会議(於;ベトナム・ダナン、-9日)
トランプ大統領 訪中
オーダー/ポジション状況
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