ドル円見通し 継続的な円高懸念の動き(9/6)

米連銀のブレイナード理事は5日のNY講演で「FRBの(インフレ2%)目標到達に自信が持てるまで、利上げは慎重であるべきだ」と強く述べた。

ドル円見通し 継続的な円高懸念の動き(9/6)

<概況>

9月3日の北朝鮮による核実験(水爆実験の成功)による有事リスクのエスカレーションでドル円はリスク回避感から売られ、週末2日未明の110.218円から4日朝安値では109.58円まで下落した。さらに4日午後には109.38円まで続落したがその後はやや戻していた。しかし北朝鮮の有事リスク感は解消せず、5日午前の下落で109.20円まで一段安、さらに5日深夜からの下落で109円を割り込み、6日朝時点では108.51円近辺まで下げている。8月29日のミサイル騒動で付けた安値108.265円に迫ってきており、底割れからの一段安へ向かう可能性も警戒される状況となってきた。
9月5日の下落は、北朝鮮情勢の緊張継続、拡大に加え、ブレイナード米FRB理事らによる利上げへの慎重姿勢の強調という米連銀金融政策を背景としたドル安も加わっている。

【北朝鮮情勢】

8月29日の北朝鮮による北太平洋への弾道ミサイル発射騒動では、29日朝、29日午後と下落して108.265円の安値をつけたが、夜からは米経済指標等をきっかけとしたドル高により揺れ返しの戻りに入り、30日夜、31日夜と続伸して110.67円まで戻した。ミサイルがグアムの米軍基地方向へ飛んだわけではなかったことで、過剰反応よりも米経済指標と米連銀の金融姿勢をテーマとした相場展開に回帰しつつあった。
しかし今回の核実験からの下落は反応当日の9月4日では収まっていない。9月9日の北朝鮮建国記念日へ向けた新たな軍事挑発の動き、また韓国の反応もこれまでよりもかなり強く、B1爆撃機や米空母打撃群の集結検討、戦術核の韓国再配備議論、韓国側弾道ミサイルの弾頭重量強化、金委員長斬首作戦部隊の実戦配備等、軍事的対応が強まってきていることも背景にある。

当面、国連安保理の追加制裁決議の動向、北朝鮮とビジネス関係にある国との貿易停止の検討に言及したトランプ大統領の発言動向、北朝鮮の次なる軍事挑発の動向等、目が離せない。8月29日のミサイル発射は25日の先軍節から数日後の火曜日早朝だったことを踏まえれば、9月9日前から11日月曜、12日火曜朝までは警戒が続く。
トランプ米大統領は5日に「日本や韓国が米国から高性能の軍装備品を大量に購入することを認めるつもりだ」とつぶやいたが、新たな北朝鮮への挑発的ないしは攻撃的な発言はなかった。

【米連銀のハト派姿勢】

米連銀のブレイナード理事は5日のNY講演で「FRBの(インフレ2%)目標到達に自信が持てるまで、利上げは慎重であるべきだ」と強く述べた。FRBの保有資産縮小計画については「比較的早く始めると見込まれる」としたため、次回の9月19日から20日のFOMCでは資産縮小計画が決定される可能性が高いと市場は受け止めたが、その計画への市場反応等の見極めも踏まえ、12月の利上げ確率は4割程度、年内利上げ見送りの可能性のほうが高いとみている。

米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は5日のミネアポリス講演で、「これまでの利上げが米経済に打撃を与えている恐れがある」「FRBが認識している以上に労働市場には緩みがあるかもしれない」と述べた。同総裁はFOMCの投票権を持ち、これまでの追加利上げへ反対票を入れてきたので、市場にとってはサプライズ的な発言ではないものの、ブレイナード理事発言も踏まえ、年内利上げ見送りの可能性が依然として高いと再認識した。
21時からのブレイナード理事講演からドル円は下落を開始し、カシュカリ総裁発言でさらに続落したという印象もある。

米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは5日リポートで、米連邦政府の債務上限が期限までに引き上げられなかった場合には米国債の格付けについて現在の最上級の「Aaa」から引き下げるとの見通しを示した。
政府閉鎖に追い込まれる確率は低いと思われるが、トランプ政権の迷走により、そうしたリスクも抱えていることを再認識させられる報道だった。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、31日深夜の下落で遅行スパンが悪化、4日朝の一段安で先行スパンから転落した。5日の続落により両スパン悪化の状況が続いている。
先行スパンとの乖離も1円以上開いているため、短期的な売られすぎ警戒感も出やすいが、26本基準線が段々と下がっている状況なので、まず基準線を上抜けない、遅行スパンが好転できないうちは一段安警戒を優先し、仮に109円台を回復する反発が発生する場合でも先行スパンが109.50円前後で抵抗線として待ち構え、さらに0.50円幅で切り下がってくるため、先行スパン突破による強気転換にはかなりのエネルギー、きっかけ的材料が必要と思われる。

60分足の相対力指数は5日深夜の下落で30ポイントを割り込んだが、その後は相場が安値を更新しているのに対して指数は横ばいにとどまっている。また4日午後安値と現状では強気逆行型となる可能性も見せている。しかし30ポイント前後で横ばいにとどまっているうちは逆行破れで一段安しやすいともいえるので、50ポイント台回復、維持へ進めないうちは下落継続警戒とみる。

概ね3日から5日周期のサイクルでは、29日夜安値から4日目となる9月4日午後安値で底を付け、いったん下げ渋ったが一段安に入っているため、底割れによる新たな弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる7日から11日にかけての間へと下落を継続しやすい状況と思われる。強気転換には109円台回復、維持から続伸するような反発が必要だろう。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1) 109円以下での推移中は29日安値108.265円、および4月17日安値108.13円試しを想定する。4月17日安値割れの場合は107円台中後半への下落を想定する。
(2) 3月以降の往来相場型の中段持合いからの転落開始として、円高が加速し、長期化する可能性も警戒する。
(3) 109円台回復、維持の場合は強気転換注意として109.20円台から109.40円にかけての反発を想定するが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<9:25執筆>

【当面の主な予定】

9月6日
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -436億ドル、予想 -441億ドル)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現状 0.75%、予想 0.75%)
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 53.9、予想 55)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

9月7日
14:00 (日) 7月 景気先行指数 速報値
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)金融政策発表
21:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 前週分 新規失業保険申請件数
21:30 (米) 4-6月期 四半期非農業部門労働生産性 改定値 前期比 (速報 0.9%、予想 0.9%)

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