<概況>
8月29日早朝の北朝鮮ミサイル発射から有事リスク増大としてドル円は急落、夕刻には108.265円まで下落、8月25日夜のジャクソンホール会合におけるイエレン議長講演をきっかけとしたドル安開始からの下げ幅は1.58円幅となった。
しかし、29日夜の米国市場では今回のミサイル着弾がグアムを目指したものではなかったことと、テキサスの大洪水被害対策に世間の関心が集中していたこともあって有事リスクの拡大感は見られず、ケースシラー住宅価格指数、米消費者信頼感指数等が強かったことでドル高となり、109円台を回復した。
30日もこの流れは継続して夕刻には110円に到達、30日夜の米ADP民間雇用統計、GDP改定値が予想を上回ったことからドル高感が強まって110.50円に迫るところまで上昇した。
25日のジャクソンホール会合でのイエレン議長講演、さらに26日未明のドラギ総裁会見からユーロが大幅上昇していたが、さすがに急騰し過ぎとして29日夜から反落、30日も大幅続落したため、8月17日以降のドル安に一服感が出ていることもドル円上昇の背景となっている。
【北朝鮮リスク】
トランプ米大統領は30日夜、北朝鮮のミサイル発射について「対話は答えではない」「米国は25年間にわたり北朝鮮と対話し、ゆすられてカネを渡してきた」とつぶやいた。北朝鮮がミサイル発射計画を「米国の動向を見守る」としたことに対して「良い判断をした」「われわれに敬意を払い始めた」と前向きに評価する発言をしていたが、今回のミサイル発射で前向きさは後退しただろう。
9月9日は北朝鮮の建国記念日であり、韓国紙報道等によれば核実験強行の可能性も取り沙汰されている。当面は1日の米雇用統計が焦点だが、土日、月曜朝にはまた北朝鮮動向に注意する必要があるかもしれない。引き続き有事リスクは消えないとすれば、29日夜からのドル高円安はやや過剰な巻き戻しであり、次に有事緊張問題が発生した場合には今の上昇に対する逆流が発生しかねないと注意する。
【ADPとGDP】
8月のADP民間雇用報告では、民間雇用者数が23万7000人増となり、市場予想の18万5000人増を大幅に上回った。このため9月1日の米労働省雇用統計でも良好な数字となる可能性が高まった。市場予想では非農業部門就業者数が18.0万人増と予想されており、前月の20.9万人増からはやや鈍化するもののかなり良好な数字が見込まれている。8月4日の前回雇用統計では強い数字を背景にドル円は直前安値109.82円から8月4日深夜高値110.03円まで1円強の上昇だったが、大きなドル円下落基調は継続として戻り一巡後は一段安へ向かっている。
今回も米雇用統計が良ければドル高反応と思われるが、米連銀が年内あと1回の利上げ予定についても慎重姿勢というハト派姿勢を崩してタカ派的になるようなサプライズがなければ、一時的な上昇に終わる可能性がある。しかしそれでも、週末の雇用統計から一段高する可能性があることが30日のドル円上昇を後押ししたという事だろう。
4-6月期の米実質GDP改定値は前期比年率3.0%増となり、市場予想の2.7%増を上回った。個人消費も3.3%増で市場予想の3.0%増より良い数字。ただインフレ関連指標では個人消費支出物価指数が0.3%上昇、エネルギーと食料品を除いたコア指数は0.9%上昇に止まり、速報値から変わらず、米連銀の期待するインフレ促進に至っていない印象を与えた。
31日夜には7月の米個人消費統計の発表がある。市場予想は前月比+0.4%(前月は+0.1%)、コアPCEデフレーターの前年比については+1.4%(前月は+1.5%)と見込んでいる。予想を上回ればドル高円安反応もあり得るが、デフレーターが弱ければ米連銀のハト派姿勢維持としてドル安要因となりやすい。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では29日夕安値からの急反騰で遅行スパンが好転。先行スパンを上抜き返した。両スパン好転が継続している。このため、遅行スパン好転中はさらに高値を試す可能性がある。110.50円前後は大きな抵抗とみるが、超えてくる場合は8月16日高値110.95円を目指す可能性も考える必要があるかもしれない。110円割れへ下落の場合は26本基準線割れ、遅行スパン悪化と続くと思われるので上昇一巡からの反動安入りが警戒される、その場合は先行スパン下限のある109.30円台を試す可能性が考えられる。
60分足の14本相対力指数は29日早朝の急落時と夕刻の安値更新の間で強気逆行を示し、今回の反騰を示唆した。30日夕、夜、31日朝と相場は高値を更新しているが、指数は70ポイントを挟んでジグザグしつつ弱気逆行の気配となっている。60分足26本移動平均ポイント割れしてくる場合は弱気逆行からの下落入りを想定する。
概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月25日夜高値を前回のサイクルトップとし、29日夕安値を同サイクルボトムとして上昇期に入った。今回の高値形成期は30日夜から1日夜にかけての間と想定されるので、既に高値をつけて反落警戒期に入ってきているが、31日夜、1日の日中にかけてはまだ高値更新する可能性も残す。110円割れしてくるようなら下落期入りの可能性を優先して、次の底形成期となる1日夜から5日への下落が想定される。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)110.00円を支持線とし、上回る内は高値更新余地ありとみる。8月11日から16日への上昇が2.2円幅であり、今回、これを当てはめると110.48円となる。このため、110.50円前後では抵抗感も大きいとみるが、110.50円超えから続伸の場合はチャート上の節目として16日高値110.95円試しへと発展する可能性を考えるが、その前後は反落警戒圏と考える。
(2)110.00円割れから続落の場合は下げ再開の可能性を優先して109.70円から109.40円前後にかけての下落を想定する。
(3)110円以下で明朝を迎える場合は1日の日中へ続落しやすいとみるが、110.00円を上回っている場合は1日の日中へさらに高値を試す可能性ありとみる。(了)<10:00執筆>
【当面の主な予定】
8月21日から米韓軍事演習、31日まで
8月31日
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.6万件)
21:30 (米) 7月個人所得 (6月 +0.0%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 7月個人消費 (6月 +0.1%、予想 +0.4%)
21:30 (米) 7月コアPCEデフレーター前年比 (6月 +1.5%、予想 +1.4%)
22:45 (米) 8月シカゴ購買部協会景気指数 (7月 58.9、予想 58.5)
23:00 (米) 7月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (6月 +1.5%、予想+0.5%)
9月1日
シンガポール市場休場(ハリラヤハジ、イスラム教巡礼祭)
08:50 (日) 4-6月期法人企業統計・設備投資 前年比 (前期 +4.5%、予想 +8.3%)
21:30 (米) 8月非農業部門雇用者数 (7月 +20.9万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 8月平均時給 前月比 (7月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 8月失業率 (7月 4.3%、予想 4.3%)
23:00 (米) 8月ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 97.6、予想 97.4)
23:00 (米) 7月建設支出 前月比 (6月 -1.3%、予想 +0.5%)
23:00 (米) 8月ISM製造業景況指数 (7月 56.3、予想 56.5)
オーダー/ポジション状況
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