ドル円 有事リスクに新たな動きなく揺れ返し(8/15)

週末からは新たな動きが出ていないとはいえ、北朝鮮有事リスクは継続していると思われる。

ドル円 有事リスクに新たな動きなく揺れ返し(8/15)

<概況>

8月8日深夜のワシントンポスト紙報道(北朝鮮はICBMに核弾頭搭載可能)から米朝間の緊張が激化、米トランプ大統領による攻撃的発言、北朝鮮によるグアム近海へのミサイル発射計画の表明、米朝双方の首脳による過激発言がエスカレートした。これら一連の流れにより110円後半にあったドル円は11日夜に108.727円の安値を付けるところまで急落した。

しかし、週末には新たな動きは見られず、米朝首脳による新たな挑発的発言も見られなかったため、先週の下落をやや悲観しすぎたという見方が強まった。特に米国株式市場では楽観的な市場心理からNYダウが135ドル高と大幅上昇、ナスダック総合指数も93.67ポイント高と買われた。
ドル円は14日午前からジリ高で推移、夕刻に109.79円を付けた後は深夜に109.425円まで下げたが、15日未明からは上昇再開、15日朝には戻り高値を切り上げて111円台を見ている。

【朝鮮半島有事リスクは継続】

週末からは新たな動きが出ていないとはいえ、北朝鮮有事リスクは継続していると思われる。15日未明にはマティス米国防長官が「北朝鮮が米国を攻撃すれば戦争の始まり」と発言している。
北朝鮮の金総書記の動静が不明となっているが、これまでも核実験やミサイル発射実験の前には動静不明期に入っている。
北朝鮮の海外各国大使が本国に召還されたとの報道もあり、米国の攻撃的な対応のエスカレート、国連による制裁強化等の動きについて、北朝鮮が追い詰められている可能性も考えられる。
いったん、やや楽観的な市場心理を持った後に、新たな緊張を呼ぶ情勢変化が発生すると、かえって悲観反応が強まることも警戒される。米朝が緊張緩和への具体的なステップに入らない限りはこの楽観的な反応も限界があると思われる。

【NY連銀総裁発言】

ニューヨーク連銀のダドリー総裁は14日にメディアのインタビューに答え、「米経済が想定通りに推移するなら年内にもう一回利上げすることが好ましい」と述べた。またインフレ指標の弱さについて「6か月後にはインフレ指標は前年比での伸びが加速する可能性がある」「今後4、5か月はインフレの弱さが一時的なのか構造的な要因なのかを見極める重要な期間となる」と述べた。
8月4日の米雇用統計が予想以上に良好だったこと、8月8日のJOLT米求人統計も良好だったことでいったんはドル高反応が見られる場面もあったが、10日の米生産者物価指数、11日の米消費者物価指数がいずれも弱かったことでドルは売られた。

労働市場状況はかなり良いが、米連銀が政策目標としているインフレ率の上昇レベルは目標に達していないため、市場は年内あと1回とされる利上げについても、先送りされる可能性が高いとみている。
ダドリー総裁発言はあと1回の利上げを支持するものだが、やはり弱いインフレを意識している内容のため、今後の米経済指標、特に物価がさほど強くない状況が続く場合は利上げ確率を低下させるとの市場コンセンサスは変わらないと思われる。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では14日午後への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた。深夜にいったん小反落したところでも先行スパンが支持線となって、その後は戻り高値を切り上げている。このため、遅行スパン好転、先行スパンを上抜いた状況を維持するうちは戻り高値を試す可能性があると思われる。109.50円割れの状況が続く場合は両スパン悪化へ進む可能性が高まるので弱気転換注意とし、109.20円割れからは両スパンの悪化が顕著となるため下落再開へ進むとみる。

60分足の14本相対力指数は11日の下落時に21ポイント台まで低下してから戻している。14日夕に70ポイントを超えてからいったん下げたが、50ポイントを支持線に戻している。15日朝の上昇では指数のピークが14日夕時点のピークを超えていないので、109.50円割れへと下落する場合は弱気逆行=相場が高値を更新したのに指数が高値を切り下げる弱気サインとなる可能性がある。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月11日夜安値からの上昇が継続しているので、11日夜安値をサイクルボトムとした上昇期が継続している。8月4日夜高値とダブルトップを構成した8日深夜の戻り高値を基準として、今回の高値形成期を15日の日中から15日深夜にかけての間と仮定する。高値から0.50円以上の下落発生なら戻り一巡による下落期入りと考え、次の安値形成期となる16日夜から18日への下落へ向かいやすいとみる。

米朝関係の緊張激化による円高ドル安発生直前は、110円前後支持線、111円前後抵抗線でのボックス相場であったため、今回の戻り抵抗は110円前後、110円台序盤までが抵抗帯と思われる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)109.50円以上での推移中は戻り高値を試す可能性ありとし、110円から10.25円にかけてのゾーンを戻り抵帯とみる。そのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(2)ただし、110.25円を超えてさらに米朝間の緊張緩和感が強まって楽観的な市場展開になる場合は、8月8日深夜高値、緊張激化開始時点の110円台後半から111円手前への上昇へと発展する可能性も出てくるかもしれない。
(3)109.50円割れ、ないしは高値から0.50円以上の下落となる場合は弱気転換の可能性を優先し、11日安値試しへ向かうとみる。特に緊張拡大材料が出ての下落再開なら下げも厳しくなるとみる。その場合は11日安値割れから108円試し、さらに107円台後半試しまで段階的に下値目途が切り下がる可能性ありとみる。(了)<9:15執筆>

【当面の主な予定】

8月15日
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)金融政策決定理事会議事録公表(8月1日開催分)
13:30 (日) 6月鉱工業生産・確報値
15:00 (独) 独4-6月期GDP・速報値 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.7%)
15:00 (独) 独4-6月期GDP・速報値 前年比 (前期 +2.9%、予想 +0.6%)
21:30 (米) 米7月小売売上高 (6月 -0.2%、予想 +0.4%)
21:30 (米) 米7月小売売上高 除自動車 (6月 -0.2%、予想 +0.4%)
21:30 (米) 米8月NY連銀製造業景況指数 (7月 9.8 予想 10.0)
23:00 (米) 米8月NAHB住宅市場指数 (7月 64、予想 65)

8月16日
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、第1回会合(ワシントン、20日まで)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・改定値 前期比 (速報 +0.6%、予想 +0.6%)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・改定値 前年比 (速報 +2.1%、予想 +2.1%
21:30 (米) 米7月住宅着工件数 (6月 121.5万件、予想 122.5万件)
21:30 (米) 米7月建設許可件数 (6月 125.4万件、予想 124.0万件)


03:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表(7月25、26日開催分)

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