【概況 米雇用統計から反騰したものの上げ渋る】
8月4日夜の米雇用統計を前にして4日朝に109.84円まで下落、8月1日深夜安値109.92円をわずかに割り込んで7月11日高値114.49円以降の安値を更新した。
米雇用統計が強い数字だったことでドル高円安となり、4日深夜高値で111.04円をつけ、雇用統計前の戻り高値であった2日夜高値110.91円をわずかに上回った。しかしその後は新たな高値更新へ進めず、7日は終日横這い、8日朝も横ばいを継続している。
一段高した状況での横ばい=持ち合いは一般的には上げ渋りであり、持ち合い上放れへ進みやすいとされる。しかし、あくまでも「持ち合いは持ち合い放れにつけ」が鉄則であり、下放れし始めれば下げ再開へと向かう可能性が高まる。
7月27日未明のFOMCから一段安する前では、111円割れを切り返しており、現状はその水準まで戻したところにあるので、まだ戻り抵抗帯に引っかかっている状況と思われる。この抵抗を突破=111円台維持、続伸と進む場合は7月27日未明高値112.18円や、7月20日高値112.41円等まで上値目処が切り上がる可能性がある。その際は8月1日深夜安値と8月4日午前安値によるダブル底型形成からの反騰というイメージになるだろう。
111円を超えても維持できずに110.50円割れ、110.40円割れと下げ始める場合は抵抗に引っかかり、2日夜高値と4日深夜高値を戻りのダブルトップとした下落再開に入るか、110円弱から111円前後までの横這いボックス型持ち合いでしばらく推移する可能性が出てくると思われる。
【米連銀はタカ派になれるのか?】
7月12日のイエレン議長議会証言はハト派的で利上げを急ぐ姿勢ではなかった。7月27日のFOMC声明文もインフレ目標の未達成に対する不満足が示されていたため今後のインフレ指標が目標に届かない状況なら利上げの先送りもあり得る、というのが8月4日まで下落基調の背景であった。
雇用統計は2か月連続で20万人以上の就業者増加を示し、既に完全雇用に近い状況にもかかわらずかなり高い水準を示した。失業率も4.3%となり、リーマンショックによる悪化から改善し始めて以降の最低値まで改善している。雇用面では利上げを躊躇する必要性はない。NY連銀総裁もかつて発言しているように、完全雇用に近い状況なら10万人以上がコンスタントに増えれば問題はない。しかし、商品市況全般が低迷している中では量的緩和だけでインフレが加速することは難しい。原油相場が本格的に上昇し、商品市場全般が上昇基調を鮮明にすればインフレは加速するが、そうではない状況なら賃金上昇によるインフレ化が必要であり、そのためにはさらに良好な雇用改善、時給上昇へ低金利を継続する必要がある。
8月10日に米生産者物価指数の発表がある。前年比での市場予想は+2.3%で前月の+2.0%から改善し、コア指数前年比の予想も+2.1%で前月の+1.9%から改善する見込み。しかし、11日の米消費者物価指数の予想では、全体の前年比が+1.8%(前月+1.6%)、コア指数では+1.7%(同+1.7%)と、まだ目標の2%に到達しない程度に留まるとみられている。これらの数字が予想よりよければ、米連銀のインフレ認識も改善し、よりタカ派的なスタンスへと変わる可能性が意識され、ドル高円安反応となりやすいが、予想を下回るようだとドル安がぶり返すことになるのだろう。
10日夜にはダドリーNY連銀総裁の会見、11日にはカブラン米ダラス連銀総裁、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁講演の講演等もあるので、当局者の姿勢も注目される。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、8月4日夜の上昇で先行スパンから上抜け、その後も上抜いた状況を維持している。遅行スパンはいったん好転したが、その後の相場横ばいにより、実線と交錯している。先行スパンは110.40円から110.60円台序盤にかけての間にあり、夜間では上限がやや切り上がってくる。先行スパンから転落を回避する=110.50円を一時的に割り込んでも切り返すうちは高値圏の維持であり、米雇用統計から反騰した上昇幅の半値押しまでの水準に留まるため、高値更新から一段高へ進む可能性も維持される。先行スパンから転落なら、戻り一巡からの下げ再開として4日安値109.84円前後をもう一度試す可能性が高まるとみる。
60分足の14本相対力指数は8月4日夜高値で70ポイントを超えたが、その後は相場が横ばいで高値更新できずにいるため、右肩下がりで下降し、8日未明には50ポイント割れとなったが、そこは切り返している。50ポイント前後を支持線として維持する内は上昇継続余地ありとし、65ポイント超えからは指数自身の抵抗線突破となるので一段高へ進みやすくなるとみる。50ポイント割れから続落の場合、及び、いったん4日深夜高値を相場が更新してから反落し、指数が弱気逆行型となる場合は下げ再開を警戒する。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月1日昼安値と1日深夜安値を小ダブル底として上昇、2日夜高値でサイクルトップをつけて下落したが、雇用統計からの反騰により、直前の安値である4日午前安値で直近のサイクルボトムをつけて上昇期に入ったと思われる。今回の高値形成期は7日夜から9日夜にかけての間と想定される。概ね110.50円以上で推移する内は高値形成への一段高余地ありとみるが、高値更新できずに110.50円割れから続落し始める場合は2日夜高値と4日深夜高値をダブルトップとした下落期入りとなる可能性を優先的に考える。その際は4日午前安値を基準として次の安値形成期となる9日の日中から11日への下落が想定される。
以上を踏まえて、4日午後から7日朝にかけてのポイントを示す。
(1)110.50円から110.40円を支持線とし、110.50円を割り込まないか、割り込んでも切り返す内は一段高余地ありとし、4日深夜高値超えの場合は111.50円前後への上昇を想定する。また111円台を維持して明朝を迎える場合は9日の日中へさらに高値を試す余地ありとみる。
(2)110.40円割れの場合は下げ再開の可能性を優先し、4日午前安値109.84円試しへ向かうとみる。また110円台序盤に下げてから戻す場合は110.40円台が戻り抵抗となりやすいと考える。
(3)現状は、110円前後から111円前後でのボックス圏での推移が続くか、ボックス圏を上放れて112円を目指すか、下放れて109円を目指すかの分岐点にあると思われる。(了)<9:45執筆>
【当面の主な予定】
8月8日
未定 (中) 中国7月貿易収支 (6月 +428憶ドル、予想 452億ドル)
未定 (SA) 南ア、議会でズマ大統領の不信任投票
8月9日
シンガポール市場休場(独立記念日)、 南ア市場休場(女性の日)
08:50 (日) 7月マネーストック
10:30 (中) 中国7月消費者物価指数 前年比 (6月 +1.5%、予想 +1.5%)
10:30 (中) 中国7月生産者物価指数 前年比 (6月 +5.5%、予想 +5.6%)
21:30 (米) 米4-6月期単位労働コスト・速報値
21:30 (米) 米4-6月期非農業部門労働生産性・速報値
23:00 (米) 米6月卸売売上高、在庫
オーダー/ポジション状況
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