ドル円見通し ECB出口戦略意識でユーロ高(7/21)

欧州中央銀行(ECB)は20日の定例理事会でマイナス金利を据え置き、金融政策を現状維持とした。また従来通り、年末までは量的金融緩和による資産購入を継続するとした。

ドル円見通し ECB出口戦略意識でユーロ高(7/21)

<概況>

7月20日は日銀金融政策決定会合、夜のECB理事会、ドラギ総裁会見を控えてポジション調整的な動きとなり、日銀の金融緩和継続から夕刻には112.41円まで戻した。しかし、ECB理事会では年内に金融政策の見直しに着手する姿勢が示されたことでユーロが一段高となってドル安感が高まった他、ロシアゲート問題の再開で、ドル円も111.48円まで一段安した。その後はやや戻しているものの112円が戻り抵抗となっている。
7月11日高値114.49円から下落基調が継続しているが、途中の下げ渋りや小反発としては昨夕への上昇で0.87円高となった戻りが一番大きかったが、その後の下げは0.93円安、安値も更新しており、戻り一巡、新たな下落ステージに入ってきている印象だ。

【ユーロ高とロシアゲート】

欧州中央銀行(ECB)は20日の定例理事会でマイナス金利を据え置き、金融政策を現状維持とした。また従来通り、年末までは量的金融緩和による資産購入を継続するとした。しかしこの量的緩和策については、来年以降の方針を秋に議論するとし、量的緩和の縮小、終了へ向けたプロセスを示す方向づけを行った。議論の時期については未定とされており、EUの消費者物価指数の伸びも鈍化していることから、緩和政策が延長されてゆく可能性もあるが、順調に進めば次回の9月理事会で来年からの段階的縮小プランが示されるのではないかと思われる。金融緩和政策が出口へ向かい始めたことからユーロは上昇してきたわけだが、その見通しがより一段と強まったとしてユーロドルは昨年5月高値を上抜いて1.1650ドル台へと一段高している。

ユーロドルは2015年3月に1.0461ドルまで下落してからは1.10ドルを中心とした往来相場で推移しており、この間の高値は2015年8月の1.1714ドルであり、未だこれを突破してはいない。しかし、今年1月3日安値からの上昇は既に半年を超えており、この間の往来相場における上昇としては最長となっている。このため、2015年3月底と2017年1月底をダブル底とし、2015年8月高値超えから一段高へ進む可能性も出てきたかもしれない。ユーロ高は大きなドル安要因であり、ドル円にとってもドル安円高を助長しやすい状況に入ってきている印象だ。

トランプ政権を巡っても、芳しくない話が続いている。ロシアゲート問題について、モラー特別検察官が捜査の対象をトランプ氏及び関係者のビジネスにまで拡大する方針であると報じられた。既にトランプ政権が公約として掲げ、共和党の修正も踏まえたヘルスケア改革法案の上院通過が難しくなったが、大統領就任以降、最も期待されてきた大規模減税、巨額インフラ投資等の政策は進んでおらず、失望感が拡大している。それでも米国株は史上最高値を更新して楽観的な上昇基調を享受しているが、トランプ政権の主要政策の行き詰まり感がここにきて大きなドル安要因となり始めており、米10年債利回りは7月7日をピークに低下傾向が続いている。

【主要指標が焦点】

20日の米経済指標はまちまちだった。米労働省が発表した週間新規失業保険申請件数は前週比1万5000件減の23万3000件となり市場予想の24万5000件を下回った。
米コンファレンス・ボードが発表した6月景気先行指数は127.8で、前月比0.6%上昇して市場予想のプラス0.4%、前月のプラス0.2%を上回った。
フィラデルフィア連銀の7月景況指数は19.5で市場予想の23、前月の27.6を下回った。

来週は25日、26日に米連銀FOMCがある。7月12日のイエレン議長議会証言がハト派的な内容=利上げペースを加速させる姿勢が乏しかったとして米長期金利下落、ドル安のきっかけとなった。バランスシート縮小計画についてより詳細な計画が示されるかどうか、それが緩いものなのか金融引き締め的に米長期金利上昇を招くものになるのか、追加利上げに対してハト派的なスタンスが示されるかどうかが焦点となる。市場は今のところ、年内あと1回とされる利上げについても確率は5割以下と踏んでいる。

今のところ、6月14日から7月11日への上昇に対する半値を削ったところにあるが、来週のFOMCから一段と円高ドル安が進む場合には、5月11日高値と7月11日高値によるダブル天井感が増し、4月17日安値、6月14日安値と2か月周期でつけている次の安値形成期となる8月半ばへ向けた円高が進む可能性も警戒される。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

7月20日夜への上昇で先行スパンを一時的に上抜けたが、ECB政策発表からの下落で先行スパンから転落した。遅行スパンも21日午前時点では悪化している。7月11日からの下落においては、先行スパンを一時的にでも超えたのは初めてだか、再び転落したことは下落基調の強さを示すと思われる。このため、先行スパンを上抜けても20日夜高値を上抜けない内は、次の先行スパン転落から一段安へ進む可能性が懸念され、先行スパン突破まで戻せずに安値更新ならさらに弱い印象を与えると思われる。

60分足の14本相対力指数は14日深夜安値以降、相場が安値を切り下げてきている中で指数の安値は切り上がりを継続しており、この点では強気逆行なのだが、相場が戻しきれないため、指数自身の安値を結ぶ支持線を割り込む下落となる場合は逆行破りによる下落再開となる可能性を警戒させる。強気回復には20日高値を相場も指数もともに超える必要がある。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月13日安値から4日目となる19日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて反発したが、前回サイクルトップの14日高値から4日目となる20日夜高値で直近のサイクルトップをつけ、その後の底割れにより新たな弱気サイクル入りとなっている可能性が考えられる。この場合、次の安値形成期となる24日夜から26日にかけての下落継続が想定される。強気転換には20日深夜安値割れを回避し、20日夜高値を超えることにより、19日夜と20日夜の安値をダブル底とした強気サイクル入りへと進む必要がある。

以上を踏まえて、20日午後から21日朝にかけてのポイントを示す。
(1)112.00円から112.20円までを戻り抵抗とし、112.20円超えへ進めない内は一段安警戒を優先する。111.60円割れからは下げ再開の可能性を優先し、安値更新の場合は111.00円から110.70円にかけての下落を想定する。また112円以下で終了の場合は週明けへ一段安しやすいとみる。
(2)112.20円超えの場合は20日夜高値112.41円試しとするが、高値更新できない内は反落、下げ再開を警戒する。高値更新の場合はダブル底からの上昇入りとして112.50円台から112.70円への上昇を想定する。また20日夜高値を上抜いた後に112円台を維持して終了なら週明けも高値を試す可能性ありとみる。(了)<10:00執筆>

【当面の主な予定】

7/21(金)
特に主要な米国経済指標の発表、イベントは無し

オーダー/ポジション状況

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