ドル円週間見通し安値持合いから雇用統計へ(5月5週)

FOMC議事録公開後に下落したが、当初の下落を消化した後はやや戻していた。26日の日中から急落して111円割れまで進んだが、これは議事録内容からの円高というよりも、

ドル円週間見通し安値持合いから雇用統計へ(5月5週)

<概況>

              ドル円日足

              ドル円日足

米トランプ大統領への弾劾訴追の動き等を警戒したNYダウ大幅下落等と呼応して5月17日に112円割れ、18日には110.23円まで続落したが、その後は111円台を中心とした持合いで推移している。23日への下落で111円を割り込んだところは買い戻されて24日深夜には112.12円に到達したが、25日未明のFOMC議事録公開はドル安に材料視されて下落、26日はトランプ政権に絡むロシアゲート関連材料や米英の3連休前のポジション調整的な動きから再び111円割れまで下落したが、割り込んだところはまた買い戻されて111円台序盤で終了した。
過去、3月10日高値期には115.50円から下落期に入り、4月17日には108.13円まで下げた。その後は揺れ返しの上昇期に入って5月11日に114.36円まで戻したが、115円には届かなかった。

【5月17日の大陰線を「化け線」に出来ず?】

5月17日は前日比で2円を超える下落、高値から安値までは2.34円安となる大陰線だった。上昇途中で出現する大陰線は、高値で買いついた強気筋が急落に直面して狼狽売りの連鎖に巻き込まれるという状況で発生するが、上昇基調そのものがしっかりしていれば翌日からの反騰で早々に大陰線の半値を解消する。そうなれば大陰線は弱気転換とならない「化け線」であり、かえって買い場を提供したところ、ということになるのだが、大陰線を解消できずに下げ渋り程度の持合いで推移する場合は、切り返す力が乏しいことを示唆し、「化け線」ではなく弱気転換合図の「勢力線」である可能性が懸念された状況を示す。持合いから下放れを回避し、持合いからジリ高へ発展し、大陰線を消す上昇へと時間をかけて進む可能性も残っているので、大陰線翌日の18日安値を割り込まないうちは切り返しに入る可能性は残る。しかし18日安値割れの場合は持合い下放れ=一段安開始であり、ジリ高による戻り幅の倍返しでV波=108.35円、さらに5月11日から18日への下げ幅をもう一つ分とする二倍値E波=106.1円を目指す可能性も出てくると思われる。

【ロシアゲート問題】

FOMC議事録公開後に下落したが、当初の下落を消化した後はやや戻していた。26日の日中から急落して111円割れまで進んだが、これは議事録内容からの円高というよりも、クシュナー上級顧問(トランプ大統領の娘婿)がFBIの捜査対象となっているとの複数メディア報道がきっかけとなった印象がある。所謂ロシアゲート問題については、5月17日のNYダウ急落、ドル円の112円割れへの急落要因であったが、その後は大統領の外遊もあってひとまず材料的には脇に置かれてきた。

ニクソン大統領が弾劾を前に辞任へ追い込まれたウォーターゲート事件になぞらえてロシアゲート事件と言われ始めている。大統領選挙前の大手メディアによるトランプ批判、トランプ大統領勝利によりメンツをつぶされたメディアによる大統領批判の継続でもあり、刑事事件に発展する可能性があるのかどうかもまだ不明な状況だ。5月17日には株安が発生したもののすぐに立ち直っており、週末にはナスダックは史上最高値を更新しているのはメディアによるキャンペーン程にはウォール街はリスク懸念に陥っていないことを示しているかもしれない。しかしこうした問題は、当事者(NY株式市場)よりも冷静な外部としての為替市場において、相対的に悲観論が進みやすいという見方もできる。
今週は週末の米雇用統計も大事だが、クシュナー氏の事情聴取等、ロシアゲート問題が進展する場合にはリスク回避的な株安ドル安、円高が進む可能性も警戒される。

【米雇用統計と米連銀の利上げ問題】

6月2日には米雇用統計の発表がある。25日未明のFOMC議事録では、米経済指標が良好なら6月会合で利上げする姿勢が示されたので、今回の米雇用統計が良好なら6月会合での利上げはほぼ確実となるだろう。ただ、市場も8割方は利上げを予想しているので、問題は予想を大幅に超える良好さにより9月の追加利上げ確率が5割以上に跳ね上がるかどうかだろう。
米雇用統計(5月分)に対する市場の事前予想は、非農業部門雇用者数が17万7000人増、4月の21万1000人増からは減速するが良好さを維持するとみている。失業率は4.4%で前月と変わらずと予想されている。
予想を大幅に上回る良好さなら9月追加利上げの可能性も高まりドル高円安反応が進む可能性がある。しかし予想に近いか、予想を若干下回る程度ならばドル高円安へ切り返すきっかけとならず、円高進行となる可能性がある。また雇用統計よりもロシアゲート問題、朝鮮半島問題等がクローズアップされる状況なら雇用統計反応も限定的なもので終わるかもしれない。

【朝鮮半島有事リスクは消えず】

ボイス・オブ・アメリカによると、空母ニミッツが6月1日から空母カールビンソンとロナルド・レーガンの隊列に加わるとし、「平時に米海軍が一つの地域に3隻の空母を同時に配備するのは稀だ」と指摘した。空母ロナルド・レーガンはまだ横須賀基地にいるようだが、過去のイラク戦争、リビア空爆等は空母が3隻以上揃ってから始まっているので、これまでにない布陣と言える。
5月21日に続き28日も北朝鮮はミサイル発射実験を行った。21日は中距離弾道ミサイルの発射成功であり、28日は弾道ミサイル迎撃ミサイルの発射実験だったとされる。
市場も北朝鮮ミサイル発射に対しては慣れが出てるが、事態はどんどんとエスカレートしているともいえるので、どこかのタイミングで有事リスク、軍事衝突リスクが再浮上する可能性にも注意しておく。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

5月26日の下落で60分足の一目均衡表では遅行スパンが悪化(実線を割り込む)、先行スパンからも転落し、両スパン悪化のまま週を終えた。
18日から4営業日ジリ高で上昇し、26日午前までは先行スパンからの転落を免れていたが、24日深夜高値からの下落2日目で先行スパンから転落した姿は、5月11日未明高値からの下落で12日深夜に先行スパンから転落した時に近い印象がある。その時はいったん先行スパン上限まで戻したのだが、突破しきれずに安値更新から急落モードに入った。このため今回も、5月29日へ反発して先行スパン上限を試しても突破しきれないで失速する場合は5月15日から16日にかけての展開類似として、その後の安値更新から急落モードに入る可能性も警戒しておく。先行スパンに到達するところまで戻せずに26日安値を割り込む場合も同様とみる。

強気転換には先行スパンを突破して24日深夜高値112.12円を超える上昇へ進む必要がある。その場合は29日夜から31日にかけて戻りを試す可能性があるが、26日安値からの戻り幅の半値を削る下落発生となるところ及び、いったん先行スパンを上抜いた後に再び転落となるところから下げ再開と考えられる。
材料的に5月18日以降のレンジを上下いずれへも越えられない持合い状況が続く場合は週末の米雇用統計反応からの持合い放れへ追従のスタンスで、それまでは逆張り的な展開と見ておく。(了)<5/29 5:30執筆>

【今週の主な予定】

5月29日
(米) NY市場休場(メモリアルデー)
(英) ロンドン市場休場(スプリングバンクホリデー)
(中) 中国市場休場(端午節、-30日)
(露) マクロン仏大統領、プーチン露大統領、会談
(米) 10:15 ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
(欧) 22:00 ドラギECB総裁、欧州議会で講演

5月30日
(中) 中国市場休場(端午節、29日-)
(中) 香港市場休場(端午節)
(日) 8:30 4月失業率 (前月 2.8%、予想 2.8%)
(日) 8:30 4月有効求人倍率 (前月 1.45、予想 1.45)
(米) 21:30 4月個人所得 (3月 +0.2%、予想 +0.4%)
(米) 21:30 4月個人消費 (3月 +0.6%、予想 +0.4%)
(米) 21:30 4月コアPCEデフレーター前月比 (3月 -0.1%、予想 +0.1%)
(米) 21:30 4月コアPCEデフレーター前年比 (3月 +1.6%、予想 +1.5%)
(米) 22:00 3月S&P/ケースシラー住宅価格指数前年比 (2月 +5.85%)
(米) 23:00 5月消費者信頼感指数 (4月 120.3、予想 119.9)

5月31日
(米) 2:00 ブレイナードFRB理事、講演
(日) 8:50 4月鉱工業生産・速報値 (3月 -1.9%、予想 +4.3%)
(中) 10:00 5月製造業PMI (4月 51.2、予想 51.0)
(中) 10:00 5月非製造業PMI (4月 54.0)
(米) 21:00 カプラン米ダラス連銀総裁、講演
(米) 22:45 5月シカゴ購買部協会景気指数 (4月 58.3、予想 57.0)
(米) 23:00 4月中古住宅販売保留件数指数前月比 (3月 -0.8%、予想 +1.0%)

6月1日
(米)  3:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
(中) 習中国国家主席、トゥスクEU大統領、ユンケル欧州委員長と会談
(日) 8:50 1-3月期法人企業統計・設備投資前年比 (前期 +3.8%、予想 +3.8)
(日) 8:50 対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)
(米)  9:10 ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
(中) 10:45 5月財新製造業PMI (4月50.3、予想 50.2)
(米) 21:00 パウエルFRB理事、講演
(米) 21:15 5月ADP全国雇用者数 (4月 +17.7万人、予想 +18.0万人)
(米) 21:30 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件)

(米) 21:30 1-3月期労働生産性・確報値(前期比年率) (速報 -0.6%、予想 -0.6%)
(米) 21:30 1-3月期単位労働コスト・確報値(前期比年率) (速報 3.0%、予想 3.0%)
(米) 23:00 5月ISM製造業景況指数 (4月 54.8、予想 54.6)
(米) 23:00 4月建設支出 (3月 -0.2%、予想 +0.5%)

6月2日
(米) 21:30 5月非農業部門雇用者数 (4月 +21.1万人、予想 +17.6万人)
(米) 21:30 5月失業率 (4月 4.4%、予想 4.4%)
(米) 21:30 5月平均時給前月比 (4月 +0.3%、予想 +0.3%)
(米) 21:30 4月貿易赤字 (3月 -437億ドル、予想 -440億ドル)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る