<概況>
5月14日の北朝鮮による中距離弾道ミサイル発射から朝鮮半島有事リスクも意識され、週明け15日朝は113.10円台まで下落して開始となったが、その後は有事リスク拡大には発展せず持ち直し16日未明には114円に迫るところまで戻していた。しかし114円には届かず、16日夜はドル安要因が相次いだために下落、15日早朝安値および113円を割り込んだ。さらに17日早朝には112.50円処まで続落している。
【ドル安要因】
トランプ米大統領がISに関する機密情報をロシアに漏洩したとの報道による政権運営懸念、4月の米住宅着工件数が5カ月ぶりの低水準となったこと、ユーロが急伸したことがドル安を助長し、ドル円でも円高ドル安がぶり返した。
米商務省が発表した4月の住宅着工件数は前月比2.6%減の117万戸となり、昨年11月以来の低水準となった。これは市場予想の126万戸、下方修正された前月の120万戸を下回った。また住宅着工の先行指標となる住宅着工許可件数も前月比2.5%減の123万件となり、前月の126万件、市場予想の127万件を下回った。先週末の米小売売上高、消費者物価指数、週明けのNY連銀景況指数等が軒並み予想より悪かったことも踏まえ、米連銀の積極的な追加利上げ姿勢を抑制するものになるのではないか、という懸念がドル安を誘った。
トランプ米大統領がISの情報をロシアのラブロフ外相との会談で提供したことについて欧米メディアが機密漏えい疑惑だと騒いでいる。これも米国市場においてはネガティブな話としてドル安要因となった。この件についてマクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシアへの情報提供は「全く適切」と述べた。トランプ大統領も自身のツイッターで「大統領として、私はテロや航空の安全に関する事実をロシアと共有したいと考えた。私にはそうする絶対的な権利がある」「人道的な理由に加えて、私はロシアがISやテロとの戦いに一層力を入れることを望んでいる」と発信し、何ら問題がないと強調している。トランプ大統領とは犬猿の仲となっている米メディアにとてはトランプ政権攻撃材料だが、この話題がさらに発展してトランプ政権が揺さぶられるということにまで発展しなければ、材料的には長続きしないと思う。ただし、その他の要因と重なることでドル安材料とされたということだろう。
【11日高値でひとまず戻り一巡、反動安入り】
週間見通しでも指摘したが、ここ4週、ドル円は週明けから上昇、一段高するパターンを繰り返してきた。しかし、今週は15日朝安値からいったん上昇したものの新たな高値更新、一段高へは進めず、逆に15日朝安値および113円を割り込んで一段安してきている。このため、これまで繰り返されてきた週前半の一段高パターンは崩れた。
概ね3日から5日周期の短期的な底打ちサイクルで見ると、5月5日安値から5日半となる15日朝安値で直近のサイクルボトムをつけて戻したが、16日夜の下落で底割れしたため、新たな弱気サイクル入りとして次の底形成期となる18日朝から22日朝にかけて下落を継続しやすいリズムに入っている印象だ。
また5月11日までは高値を切り上げ、その後の調整安による安値も切り上げてきたが、15日朝安値を割り込んだことにより「高値・安値切り上げ」の強気パターンも崩れている。このため、新たな強気サイクル入り、上昇基調回復の為には16日未明高値を上抜いて114円台に乗せる上昇が必要であり、そうならないうちは戻しても16日未明高値に届かずに高値切り下がりとなる場合には、その後の下げで安値も更新しやすい状況に入っていると思われる。
ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン新大統領がEU統合を進める姿勢を強調したことがユーロ高を促進した。これもドル安要因となってドル円の下落に影響したようだが、さらにEUを発展させてゆく具体的な材料ではないため、最近のユーロ上昇の過熱ぶりを踏まえると、ユーロ高に対する反動も警戒される。
【60分足 一目均衡表分析と下値計算値】
60分足の一目均衡表では先行スパン突破に失敗して転落、遅行スパンも悪化(実線を下回る状況)となっている。このため、26本基準線(現在113.14円前後)を目先の抵抗とし、上抜けないうちは一段安余地ありとみる。
5月11日高値から15日朝安値までの下げ幅と16日未明から同値レベルの下げとすればN波=122.58円で既に到達しているが、16日未明への戻り幅の倍返しとすればV波=112.36円。さらに15日朝への下げ波動の二倍値とすればE=111.84円まで下値目途が切り下がる可能性がある。
当面、11日高値からの二段下げ調整安=ドル安円高と仮定し、112円試しの可能性を優先する。ここは、4/17安値からの上昇幅に対する38.2%押しのレベルでもあり、節目となり易いポイントだ。112円割れの場合は111.80円台への下落を想定するが、そこは突っ込み警戒、反騰注意圏とするが、戻りが鈍い場合は、11日高値からの下げが三段下げへと発展する可能性にも注意する。(了)<9:30執筆>
【当面の予定】
5月17日
18:00 (欧) ユーロ圏4月消費者物価指数(HICP)確報値 前年比 予想 +1.9% 速報値 +1.9%
5月18日
8:50 (日) 1-3月期GDP・1次速報値前期比 予想 +0.4% 前期 +0.3%
8:50 (日) 1-3月期GDP・1次速報値前期比年率 予想 +1.8% 前期 +1.2%
21:30 (米) 米新規失業保険申請件数 予想 24.0万件 前週 23.6万件
21:30 (米) 米5月フィラデルフィア連銀製造業指数 予想 18.8 4月 22.0
5月19日
2:00 (欧) ドラギECB総裁、講演
2:15 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁講演
オーダー/ポジション状況
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