<概況>
ドル円は112円に迫る111円台後半へと上昇、3/30高値111.94円を捉えた格好だ。
4月11日夜のトランプ大統領による朝鮮半島有事リスクを急上昇させるツイートを発端としてドル円は110円割れとなり、4月17日安値で108円を試すところまで下落した。17日以降はやや落ち着き、108円割れを回避しつつも109円台前半を戻り抵抗とした持合いとなり、4月23日の仏大統領選挙、25日の北朝鮮建軍記念日という二大リスク問題を向かえた。この二つのリスク問題はいずれも大事には至らずにリスク回避感が後退、24日朝、さらに25日午後からの上昇で4月11日夜からの下落に対する揺れ返し的な上昇を継続、4月10日高値をわずかに上抜くところまで戻した。
27日未明からは60分足レベルでの三角持合い型を形成していたが、28日夜への上昇で27日未明高値に迫って三角持合いを上抜き始め、週明けも緩やかな上昇基調を継続させて4月17日以降の戻り高値を更新、112円に迫ってきている。
5月1日は日本市場、米国市場以外が概ね休日となり動きは鈍かった。
21時半の米個人消費統計等が予想より悪かったこと、23時のISM製造業景況指数も予想を下回ったことがドル安要因となってドル円は111.50円を若干割り込むところまで下げたが、その後は切り返して戻り高値を更新している。
【米財務長官発言とトランプ大統領発言】
深夜以降のドル高円安要因は二つ。
一つはムニューシン米財務長官発言で、同長官はブルームバーグTVとのインタビューで「超長期債の発行を検討している作業部会がある」「超長期債発行は財務省にとって完全に理にかなったものとなる可能性があると思う」と述べた。この発言をきっかけとして米債券市場では米長期債が売られ、利回り=長期金利は上昇、ドル高円安を助長した。
もう一つはトランプ大統領発言。トランプ大統領は同じくブルームバーグTVのインタビューにおいて「政治顧問らからは反対されているが、軍事衝突を回避するために自分は金正恩朝鮮労働党委員長との会談に前向きだ」と語った。先週末に北朝鮮は弾道ミサイル発射実験を行い、トランプ大統領は「ひどい」ことだと発言していたが、この日の発言を踏まえれば、拙速な軍事行動へ前傾しているわけではないという印象を与え、一触即発的な緊張感を後退させている。現実問題として北朝鮮を軍事攻撃した際の反撃、日韓への被害、軍事行動による米軍への被害を踏まえれば簡単に軍事行動をとるわけにはいかないだろうと市場も観ているわけだが、トランプ大統領ならやりかねないという不安も市場は抱いてきた。先週からの市場動向を見る限り、有事リスクはひとまず落ち着いた状況で米朝のけん制し合いが続くということだろうか。
【米経済指標】
米商務省が発表した3月の個人消費は前月比変わらず、市場予想の0.2%増を下回ったが、前月も速報値の0.1%増から変わらずに下方修正された。個人所得は0.2%増で市場予想の0.3%増、前月の0.3%増(速報値の0.4%増から下方修正)を下回った。
食品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターは前年比1.6%上昇で市場予想と変わらず、前月の1.8%増から鈍化した。
4月のISM製造業景況指数は54.8で前月の57.2から低下、市場予想の56.5を下回った。
5月2日から3日に米連銀のFOMCがある。3月に追加利上げをしたばかりであり、今回は現状維持とみられるが、市場は6月会合での追加利上げを予想しており、今回の声明文で6月利上げへの示唆がなされるかどうか、利上げペースの拡大姿勢が見られるかどうか、バランスシート縮小プロセスが具体的になるかどうかが注目される。
【60分足 一目均衡表分析】
4月27日夜、28日、週明け1日朝、1日夜と60分足における26本基準線を割り込んで先行スパンを試す下落はあったが、先行スパンからの転落を回避して上昇基調を継続してる。
4月27日高値から28日にかけては高値切り下がり、安値はほぼフラットでの小規模な三角持合いを形成し、28日夜への上昇で上抜け始めた。5月1日の上昇でこの流れは継続している。
先行スパンを上回るうちは上昇継続余地ありとして112円から112.20円台への上昇余地があると思われるが、111.50円割れからは遅行スパン悪化、111.25円割れからは先行スパンからの転落となるため、いったん111円前後まで押してくる可能性がある点に注意する。
昨年12月高値から4月17日まで下落して来たわけだが、その中間にある110円割れ回避で持合った時期の高値が3月31日、112円台序盤であり、4月17日からの上昇を直前の下落に対する揺れ返しとすれば、今回の戻り高値目安は112円から112円台序盤までの間と考えられる。それ以上へと上昇してゆくにはさらに押し上げ材料、楽観的な株高とドル高感を背景とした上昇の加速が必要だが、FOMC、週末の米雇用統計、7日の仏大統領選挙決選投票という流れの中で株高円安が加速できるか、いったん戻り一巡となって調整期に入るのかが見えてくるのではないかと思われる。深追いを避けたい局面だ。(了)<9:10執筆>
【今日、明日の予定】
5月2日
米 米連邦公開市場委員会(FOMC) 3日まで
豪 13:30 (豪) RBAキャッシュターゲット
5月3日
日 東京市場休場(憲法記念日)
米 トランプ米大統領、パレスチナ自治政府アッバス議長と会談
仏 マクロン前仏経済相と、ペン国民戦線党首のテレビ討論会
欧 18:00 ユーロ圏1-3月期GDP・速報値(前期比) 予想 1%、前期 0%
欧 18:00 ユーロ圏1-3月期GDP・速報値(前年比) 予想 2%、前期 2%
米 21:15 米4月ADP全国雇用者数 予想 +19.0万人、前月 +26.3万人
米 23:00 米4月ISM非製造業景況指数 予想 56、前月 55.2
オーダー/ポジション状況
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