米日の金融政策会合通過による急伸一巡、口先介入警戒しつつ足場固めへ
〇先週のドル円、タカ派のFOMC日銀政策決定会合・植田総裁会見のハト派姿勢に157.92まで急伸
〇その後加藤財務相や三村財務官による円安けん制発言、米長期金利上昇一服で下落に転じ156.35で越週
〇米国の利下げペースダウン、日銀の追加利上げ先延ばしによる円安感は継続か
〇12/25の植田総裁講演での発言内容に注目集まる
〇155.70割れからは下落継続として155.15前後への下落を想定
〇156円割れを買われて確りし、157円超えへ進む場合は157.92円試し
〇高値更新からは159円前後を目指す上昇を想定
【概況】
ドル円は19日早朝のFOMCが利下げペースを大幅にダウンさせる見通しを示したことによるドル全面高で12月16日深夜高値154.47円を超えて19日午前序盤に154.85円へ上昇し、19日昼の日銀金融政策決定会合が追加利上げを見送ったことで155円台に到達し、15時半からの植田日銀総裁会見が追加利上げ判断へ慎重姿勢を示したことで夕刻に157円台へ急伸して20日午前には157.92円まで高値を伸ばした。
しかし158円台へは攻めきれず、米日の金融政策決定会合後の円売り一巡と、加藤財務相や三村財務官による円安けん制発言、FOMC後から急伸した米10年債利回りが上昇一服で低下したことで下落に転じ、21日未明には155.95円を付けて20日午前高値からの下げ幅が2円に迫ったが、21日早朝終値156.35円へやや持ち直して週を終えた。
12月20日夜発表の米11月PCE(個人消費支出)は前月比0.4%増で予想の0.5%を下回ったものの10月の0.3%増を上回って消費の堅調さを示し、米FRBがインフレ指標として重視するPCEデフレーターは前年同月比が2.4%で10月の2.3%を上回ったものの市場予想の2.5%を下回り、コアPCEデフレーターの前年同月比も2.8%で10月と変わらず予想の2.9%を下回った。
12月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報は74.0となり速報と一致し、11月確報の71.8から上昇した。期待インフレ率は1年先で2.8%(11月は2.6%)、5−10年先で3.0%(11月は3.2%)だった。
これらは追加利下げに寄与するものの利下げを急ぐ必要を示すものではなかった。
ドル円の動向と概ね正相関で推移している米長期金利指標の10年債利回りは、18日に前日比0.12%上昇、19日に同0.05%上昇の4.57%とし、一時4.597%をつけて12月6日の4.13%及び9月17日の3.60%以降の最高を更新したが、20日は連騰一服で一時4.48%まで低下してから再上昇したが前日比0.04%低下の4.53%で終了した。
【米国の利下げペースダウン、日銀の追加利上げ先延ばしによる円安感は継続】
米FRBは12月17−18日開催のFOMCで0.25%利下げを決定して3会合連続の利下げとしたが、2025年の利下げ想定回数を9月会合時点の4回から2回へ半減し、2026年の利下げ想定回数も2回とした。パウエルFRB議長は政策金利は依然としてまだ景気抑制的であり利下げを継続する方向にあるとしたが、追加利下げの判断についてはインフレ面でさらなる進展を目にする必要があるとして慎重姿勢を示した。このため、来年1月の利下げ期待はほぼなくなり、トランプ政権発足後の諸情勢を見ながら慎重に判断され、米国景気が比較的確りする中でインフレが高止まりないし再燃する場合は利下げ休止が長引く可能性もあるのではないかと市場は受け止めている。
まだ利下げ余地があるため、米2年債利回りの上昇にはブレーキがかかるかもしれないが、インフレ再燃の際に再利上げが話題となることも危惧されるため、指標の10年債利回りはさらに上昇する可能性があるのではないかと考える。
日銀は12月利上げを見送り、植田総裁はトランプ政権発足後の状況と春闘を見たいとして追加利上げ判断に慎重な姿勢を示した。一時盛り上がっていた12月利上げについては見送られるとの見方が優勢だったものの、来年1月の利上げ確率も大きく低下したと市場は受け止めた。来年3月会合での利上げ可能性は高いと思われるが、金融市場動向や国内景気動向次第では利上げがさらに遅れるとの声も聞かれる。
日銀会合を通過してドル円が急伸したため、20日には財務相や財務官の口先介入的な円安けん制発言も見られたが、12月25日の植田総裁講演での発言内容に注目が集まる。
【9月16日安値を起点とした上昇の二段目】
ドル円は11月15日高値156.74円から12月3日安値148.64円まで8.10円の下げ幅としたところを押し目形成とし、12月20日への上昇で11月15日高値を超えたため、9月16日からの上昇は二段目に入った。
52日移動平均割れまで突っ込んでから26日移動平均や一目均衡表の26日基準線を上抜き返した流れは、3月11日安値146.46円からの反騰で4月29日高値160.16円へ上昇した時や、2023年の6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円への下落(下げ幅7.82円)から反騰して11月13日高値151.90円へ上昇した時にも見られている。直前高値から8円前後規模の反落後に切り返した前例としては、今年4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円へ市場介入で急落(下げ幅8.31円)ところからの反騰時がある。
二段目の上昇期に入ったことで、テクニカルな上値計算値は12月3日への下げ幅の倍返しとなるV計算値=164.84円、一段目と二段目が同規模の上昇としてN計算値=165.81円等と計測される。今年4月と7月に160円超えで市場介入が実施されているため、それらの上値計算値へ進む前には160円到達後の市場介入により急落するリスクに直面すると思われるが、26日移動平均や26日基準線を上回る範囲で押し目を形成して確りする展開なら、160円超えに挑戦して当局の市場介入姿勢が強硬であることを試したくなるのが市場心理だと思う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月18日未明から20日午前への上昇幅に対する半値押し155.15円を下値支持線、157円を上値抵抗線とする。
(2)155.70円割れからは下落継続として155.15円前後への下落を想定する。155.25円以下は反騰注意とするが、直前安値から1円を超える反騰がみられないうちは続落余地ありとし、155.15円割れからは3分の2押し154.71円前後を試す下落を想定する。
(3)156円割れを買われて確りし、157円超えへ進む場合は20日午前高値からの調整一巡による上昇再開とみて20日午前高値157.92円試しとし、高値更新からは159円前後を目指す上昇を想定する。157.92円を超えずに失速した後も156円前後を買われるなら、157円を中心とした高値圏持ち合いの形成で年末へ向かい、年始からレンジブレイクを試すのではないかと考える。
注:ポイント要約は編集部
【当面の予定】
12/23(月)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -284億ポンド、予想 -230億ポンド)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.3%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 0.1%、予想 0.3%)
24:00 (米) 12月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (11月 111.7、予想 113.0)
12/24(火)
休場 ノルウェー、スイス、ドイツ、メキシコ、ブラジル、フィリピン、南ア
米国は株式・債券市場で短縮取引
短縮取引 NZ、豪、香港、シンガポール、英、仏、
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合議事要旨10月30-31日分
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数・年率換算 (10月 61.0万件、予想 66.3万件)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数 前月比 (10月 -17.3%、予想 8.7%)
24:00 (米) 12月 リッチモンド連銀製造業指数 (11月 -14)
12/25(水)
休場 ノルウェー、メキシコ、豪、NZ、シンガポール、香港
休場 米、英、仏、独、スイス、南ア、加、
未 定 (日) 植田日銀総裁、経団連審議員会で講演
08:50 (日) 11月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (10月 2.9%、予想 3.0%)
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI改定値 (速報 116.5)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI改定値 (速報 108.6)
12/26(木)
休場 ノルウェー、豪、NZ、香港、インドネシア
休場 英、スイス、仏、独、南ア、加
14:00 (日) 11月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (10月 -2.9%、予想 0.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.4万人)
24:30 (米) EIA週間石油在庫
12/27(金)
08:30 (日) 11月 失業率 (10月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 12月 東京区部CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.5%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合12月18-19日分・主な意見
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前月比 (10月 2.8%、予想 -3.5%)
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (10月 1.4%、予想 -3.6%)
08:50 (日) 11月 小売業販売額 前年同月比 (10月 1.6%、予想 1.7%)
22:30 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 0.2%)
オーダー/ポジション状況
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