『日米金融政策格差に着目したドル買い・円売り基調が続く見通し』
〇今週のドル円、週前半の安値153.15から週末にかけ高値157.93(7/17以来の高値圏)まで急伸
〇FOMCとパウエル議長のタカ派姿勢、日銀の利上げ見送り植田総裁のハト派姿勢がドル円をサポート
〇その後は本邦当局からの牽制発言も出て、週末は156円台での推移
〇ユーロドル、週初1.0535まで上昇後欧州指標不冴え、米長期金利上昇等に一時1.0343まで急落
〇ドル円、主要テクニカルポイントを軒並み上抜け、強い買いシグナルも点灯、テクニカルの地合い好転
〇ファンダメンタルズも日銀利上げ観測の後退、FRB利下げ観測の後退がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー158.50、(EURUSD):1.0300−1.0550
今週のレビュー(12/16−12/20)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初153.64で寄り付いた後、(1)日米金融政策イベントを控えたポジション調整や、(2)日経平均株価の冴えない動き、(3)米11月小売売上高・除く自動車(結果+0.2%、予想+0.4%)の市場予想を下回る結果、(4)米11月鉱工業生産(結果▲0.1%、予想+0.3%)の市場予想を下回る結果、(5)米11月設備稼働率(結果76.8%、予想77.3%)の市場予想を下回る結果が重石となり、翌12/17にかけて、週間安値153.15まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)米FOMCのタカ派的な結果(FFレート誘導目標は予想通り25bpの利下げが決定されるも、同時に発表されたドットチャートで2025年末時点の政策金利見通しが前回の3.375%から3.875%へ引き上げられた他、2026年末分も2.875%から3.375%へ、長期見通しも2.875%から3.000%へ大幅上方修正。また、クリーブランド連銀ハマック総裁が政策金利の据え置きを支持。声明文にもthe extent and timing ofとの文言が追加されるなど、緩和速度を緩めることを示唆)や、(7)パウエルFRB議長による「追加調整を検討する上で慎重姿勢を強める可能性」「道筋が不確かな間はゆっくり進む」とのタカ派的な発言、(8)日銀金融政策決定会合のハト派的な結果(政策金利の引き上げが見送られた他、植田日銀総裁からも「追加利上げの判断にはもうワンノッチ欲しい」「来年の春闘などの情報も必要」「輸入物価の対前年比は落ち着いている」とのハト派的な発言あり)、(9)円キャリートレードの本格再開(次回1月会合での追加利上げも見送られるとの見方が浮上→円金利先高観後退→対主要通貨で円が独歩安)、
(10)米新規失業保険申請件数(結果22.0万件、予想23.0万件)の良好な結果、(11)米7-9月期GDP(結果+3.1%、予想+2.8%)の市場予想を上回る結果、(12)米7-9月期コアPCE(結果+2.2%、予想+2.1%)の市場予想を上回る結果、(13)米7?9月期個人消費(結果+3.7%、予想+3.6%)の市場予想を上回る結果、(14)米11月景気先行指数(結果+0.3%、予想▲0.1%)の市場予想を上回る結果、(15)米11月中古住宅販売件数(結果415万件、予想408万件)の市場予想を上回る結果、(16)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが5/30以来の高水準となる4.59%へ急上昇)が支えとなり、週末にかけて、週間高値157.93(7/17以来の高値圏)まで急伸しました。
その後は、(17)三村財務官による「為替の動向を憂慮、行き過ぎた動きには適切に対応」「投機的な動き含めて憂慮している」との円安牽制発言や、(18)米11月PCEデフレーター(結果+2.4%、予想+2.5%)および、米11月PCEコアデフレーター(結果+2.8%、予想+2.9%)の市場予想を下回る結果、(19)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りが4.59%から4.48%へ急低下)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/21午前4時45分現在)では、156.05前後まで値を崩す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0497で寄り付いた後、翌12/17にかけて、週間高値1.0535まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ドイツ12月IFO企業景況感指数(結果84.7、予想85.6)の市場予想を下回る結果や、(2)ユーロ圏10月貿易収支(結果61億ユーロ黒字、予想116億ユーロ黒字)の市場予想を下回る結果、(3)フィンランド中銀レーン総裁による「金融政策の方向性は今や明確だ」「利下げのスピードと規模は公表されるデータと総合的な分析に基づいて会合ごとに決定される」とのハト派的な発言、(4)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「ユーロがパリティなら競争力をそれほど失わないだろう」とのユーロ安容認発言、(5)ユーロ圏11月消費者物価指数(結果+2.2%、予想+2.3%)の市場予想を下回る結果、(6)米FOMCおよびパウエル議長記者会見のタカ派的な結果、(7)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(8)トランプ次期大統領による「欧州連合は対米貿易黒字を相殺するために米国から石油・ガスを購入する必要がある」との見解発表が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0343(11/22以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(9)急ピッチな下落に対する反動買い(11/22に記録した年初来安値1.0334を背にした押し目買い圧力)や、(10)米11月PCEデフレーターおよび、同コアデフレーターの市場予想を下回る結果、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間12/21午前4時45分現在)では、1.0440前後まで持ち直す動きとなっております。
来週の見通し(12/23−12/27)
<ドル円相場>
ドル円は12/3に記録した約2カ月ぶり安値148.64(10/11以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週は一時157.93(7/17以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による利上げ観測の後退(今週開催された日銀金融政策決定会合は予想以上にハト派的な内容。植田日銀総裁より「追加利上げの判断にはもうワンノッチ欲しい」「来年の春闘などの情報も必要」「輸入物価の対前年比は落ち着いている」との発言が出てきたことで、来年1月どころか、来年3月の追加利上げ実施の雲行きも怪しい状態)や、(2)米FRBによる利下げ観測の後退(今週開催された米FOMCは予想以上にタカ派的な内容。ドットチャートが大幅に上方修正された他、パウエルFRB議長からも「追加調整を検討する上で慎重姿勢を強める可能性」「道筋が不確かな間はゆっくり進む」との発言あり)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの本格開始期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル買い・円売りポジションに強い安心感)、(4)中国政府による大規模景気対策期待(中国共産党指導部は12/9に金融緩和および積極財政への方針転換を発表)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
政府・日銀による為替介入警戒感が燻っているものの、年初来高値(7/3高値161.99)を更新するまでは、口先介入に留まる可能性が高い(実弾介入に踏み切る可能性は乏しい)と見られることから、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米共に経済イベントの発表に乏しく(※注目されているのは12/25に予定されている植田日銀総裁講演のみ)、また、クリスマス休暇、年末・年始休暇に向けて市場参加者の減少も見込まれるため、余程大きなサプライズが見られない限り、ドル円相場の値動きは限定的なものに留まりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー158.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は一時1.0343まで急落するなど、11/22に記録した約2年ぶり安値1.0334(一昨年11/30以来の安値圏)に迫る動きとなりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「EMAベースの弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済を巡る先行き不透明感の高まり(トランプ次期政権下の関税政策が欧州経済に甚大な悪影響を及ぼすリスク)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツの政治不安)、(3)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク、(4)ECBによる根強い追加利下げ観測(先週開催されたECB理事会は総じてハト派的な内容)、(5)米FRBによる利下げ観測の後退(今週開催された米FOMCは予想以上にタカ派的な内容)、(6)上記4、5を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差に着目したユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
ベルギー中銀ウンシュ総裁による「ユーロがパリティなら競争力をそれほど失わないだろう」とのユーロ安容認発言も重石になると見られることから(市場がユーロドル相場の「パリティ割れ」を現実的なものとして捉えやすくなったことから)、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州圏の経済イベントに乏しく、また、クリスマス休暇、年末・年始休暇で市場参加者の減少も見込まれることから、余程大きなサプライズが見られない限り、ユーロドル相場の値動きは限定的なものに留まりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0300−1.0550
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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