米雇用統計直後の戻りは鈍く、11月15日から三段目の下落期入りを伺う
〇先週のドル円、12/3日夜の韓国戒厳令騒動で148.64へ一段安、戒厳令撤回で4日夜に151.22まで戻す
〇戻り一巡後は軟調推移、米雇用統計後149.35まで下落するも150円近辺まで反発して越週
〇米11月雇用統計、12月利下げを妨げず、利下げペース鈍化感は変わらず
〇FRB高官、利下げ慎重姿勢、利下げ休止の可能性も示唆する発言目立つ
〇三尊の右肩から下落、7/3からの下落時や昨年11/13からの下落時に近い印象
〇149.35割れからは下向きとして148.64試し、148.64割れからは147円、146円、145円を順次試すか
〇150.69超えからは4日夜高値151.22試し、高値更新からは152円台を試す上昇を想定するも上値重いか
【概況】
ドル円は米国の利下げペースが鈍るとの見方による米長期債利回りの低下と日銀追加利上げへの警戒感、トランプ次期政権の保護主義政策と先行き不透明感によるリスク回避的な円買いにより11月15日午前高値156.74円から下落基調を続けてきた。12月3日夜の韓国戒厳令騒動で148.64円へ一段安してから、戒厳令撤回による騒動終息感で4日夜に151.22円まで戻したが、戻り一巡後は再び軟調な推移に入り、5日夕安値149.64円まで下げた後は150円を挟んだ揉み合いで6日夜の雇用統計へ向かった。
6日夜発表の米雇用統計は決め手に欠く内容で、米長期債利回りがいったん上昇を見せてから低下に転じて発表前水準を割り込み、ユーロやポンドも一段高してから急落する乱調な展開となったが、ドル円は19時台高値150.69円から事前の下落に入り、雇用統計発表直後に149.35円へ安値を更新してから米長期債利回り低下やユーロの下落等を見て反発したが、150.0円を挟んだ揉み合いにとどまり、149.95円で週を終えた。
【米11月雇用統計、12月利下げを妨げず、利下げペース鈍化感は変わらず】
米労働省が6日夜に発表した11月雇用統計では、景気動向を反映する指標として重視されている非農業部門就業者数が前月比22万7000人増となり市場予想の20万人増を上回ったが、(訂正×10月分は速報の12万人増から3万6000人増へ大幅に下方修正された。相次いだ大型ハリケーンと航空大手ボーイングのストの影響が下方修正に反映され、その後の回復が11月に反映されたと思われる。→〇1万2千人増から3万6千人増に上方修正された。)
失業率は4.2%で予想と一致したものの10月の4.1%から悪化しており、12月利下げ判断に寄与すると市場は受け止めたが、インフレ指標の平均時給は前月比0.4%で10月と同じだったものの予想の0.3%を上回り、前年同月比も4.0%で10月と同じだったが予想の3.9%を上回り、賃金上昇によるインフレ圧力がまだ続いている印象を与えたため、利下げペースは鈍化してゆくと市場は受け止めたようだ。
米ミシガン大の12月消費者信頼感指数速報値は74.0となり11月の71.8から上昇して市場予想の73.0を上回った。現況指数は11月の63.9から77.7へ上昇したが、期待指数は76.9から71.6へ悪化した。期待インフレ率は1年先で11月の2.6%から2.9%へ上昇、5年先は3.2%から3.1%へ低下した。足元の景気はしっかりし1年先のインフレ高止まり感もあるため、利下げペース鈍化に寄与する内容と思われる。
【FRB高官、利下げ慎重姿勢、利下げ休止の可能性も示唆する発言目立つ】
クリーブランド連銀のハマック総裁は6日、「米経済成長が強く、労働市場が健全で、インフレも目標を依然上回っている状況などを踏まえれば、(現状の政策金利は)景気に中立的な水準からさほど遠くないかもしれない」、「利下げペースを緩和するのが妥当な地点にいるか、そこに近づいている」とし、「来年1月までに1回、来年末までに2〜3回の利下げが妥当」との見方を示した。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は6日、「今後の一連の会合(FOMC)では利下げ決定と見送りが紙一重になる」と述べ、FRBのボウマン理事は6日、「米国の労働市場は完全雇用状態に近く、インフレ上振れリスクは顕著」として利下げへの慎重姿勢を示した。
米金利先物市場における12月利下げ期待は米雇用統計発表後に9割近くへ上昇しており、市場は12月に0.25%利下げを実施した上で1月は見送り、その後は状況次第とみているようだ。
【米長期債利回りは上昇後に低下、米主要株価指数は反落】
12月6日の米長期債利回りは米雇用統計発表直後にいったん上昇してから低下に転じた。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.22%へ上昇してから失速して前日比0.03%低下の4.15%で終了したが、一時4.12%へ失速して11月18日に付けた年初来ピークである4.51%以降の最低を更新した。
30年債利回りは前日比変わらずの4.34%で終了したが、一時4.31%をつけて11月18日につけた4.68%以降の最低を更新した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは一時4.22%へ上昇してから失速して前日比0.03%低下の4.11%で終了したが、一時4.08%まで低下して11月22日に付けた4.38%以降の最低を更新した。
一方で6日の米主要株価指数はまちまちだった。
NYダウは12月4日に取引時間中及び終値の史上最高値を更新したが、5日に前日比248.33ドル安と下落し、6日も医療保険大手ユナイテッドヘルスの急落や原油安によるエネルギー関連株安の影響で前日比123.19ドル安と続落した。
ナスダック総合指数は5日に取引時間中の最高値を更新してからの反落で34.86ポイント安としたが、6日は米長期債利回り低下を好感して159.05ポイント高とし、高値で19859.77を付けて取引時間中の最高値を更新、終値も最高値更新とした。
S&P500指数も6日に取引時間中の最高値を更新してから失速して11.38ポイント安としたが、6日は15.16ポイント高として取引時間中及び終値の最高値を更新した。
米国株高が日経平均高へ直結すればドル円には押し上げ要因となるが、日経平均は9月後半から4万円前後を売られ37000円台後半を買われる持ち合いにつかまっているため円安に寄与できず、11月中盤までの長期債利回り上昇が一巡して低下基調に入っているため、ドル円にとっては円高圧力がかかりやすい状況といえる。
【三尊の右肩から下落、7月3日からの下落時や昨年11月13日からの下落時に近い印象】
ドル円は11月15日高値156.74円から12月3日安値148.64円まで8.10円の円高ドル安となった。
4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円まで下げ幅8.31円としてから7月3日高値161.94円へ一段高した経緯もあるが、5月3日からの反騰は政府・日銀による市場介入での短期的急落とその解消であり、26日移動平均は上昇を維持していたが、今回は市場介入を伴わずに米10年債利回りが低下に転じた流れと相関し、52日移動平均を割り込んだ後も同線近辺へ戻したところで上値が抑えられていること、26日移動平均自身が下落しているため、5月3日からの反騰時とは異なる状況にあると考える。
比較対象は7月3日からの下落時(9月16日安値139.57円まで下げ幅22.37円)、昨年11月13日からの下落時(12月28日安値140.24円まで下げ幅11.66円)の前半と考える。
チャート・パターンとしては今年7月3日高値を頭、昨年11月13日高値を左肩、今年11月15日高値を右肩とした三尊天井形成の可能性があり、昨年12月28日安値140.24円や今年9月16日安値139.57円等のある140円前後をもう一度試す流れへ進んでも不思議ないと思われる。
米国が利下げペースを緩めても12月利下げに加えて来年も数回の利下げを行う可能性はまだ高いこと、日銀は利上げ継続姿勢にあること、2017年から2020年1月までのトランプ前政権時代は概ね円高で推移したことを踏まえれば、11月15日を起点とした円高基調はまだ続くのではないかと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面は12月3日夜安値148.64円を下値支持線、4日夜高値151.22円を上値抵抗線とし、上下いずれへ抜けるのかにより年末への方向性が定まるのではないかと考える。
(2)6日深夜安値149.35円割れからは下向きとして148.64円試しとし、148.64円割れからは11月15日以降の下落が三段目に入るが、11月19日夕安値153.28円から20日夜高値155.88円まで戻り幅2.60円としてから12月3日夜安値148.64円まで下落した時に近い展開とし、147円台、146円台、145円台を順次試して行く流れと考える。
(3)6日夜反発時高値150.69円超えからは4日夜高値151.22円試しとし、高値更新からは12月3日夜安値を起点としたリバウンドが二段上げ型に発展するとみて152円台を試す上昇を想定するが、152円以上は反落警戒としてその後に150.50円を割り込むところから下落再開と考える。
【当面の予定】
12/9(月)
08:50 (日) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP改定値 年率換算 (速報 0.9%)
08:50 (日) 10月 経常収支・季調前 (9月 1兆7171億円)
08:50 (日) 10月 経常収支・季調済 (9月 1兆2717億円)
08:50 (日) 10月 貿易収支・国際収支ベース (9月 -3152億円)
10:30 (中) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 0.3%)
10:30 (中) 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 -2.9%)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー現状判断DI (10月 47.5)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー先行き判断DI (10月 48.3)
24:00 (米) 10月 卸売売上高 前月比 (9月 0.3%)
12/10(火)
未 定 (中) 11月 貿易収支・米ドル建て (10月 957.2億ドル)
08:50 (日) 11月 マネーストックM2 前年同月比 (10月 1.2%)
09:30 (豪) 11月 NAB企業景況感指数 (10月 7)
12:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.35%)
16:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 -0.2%)
16:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 2.2%)
22:30 (米) 7-9月期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 2.2%)
12/11(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 製造業売上高 前期比 (4‐6月 0.1%)
08:50 (日) 10-12月期 大企業全産業業況判断指数 (7-9月 5.1)
08:50 (日) 10-12月期 大企業製造業業況判断指数 (7‐9月 4.5)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前月比 (10月 0.2%)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前年同月比 (10月 3.4%)
22:30 (米) 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 0.2%)
22:30 (米) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 2.6%)
22:30 (米) 11月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前月比 (10月 0.3%)
22:30 (米) 11月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (10月 3.3%)
23:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 3.75%、予想 3.50%)
24:30 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -2575億ドル)
12/12(木)
休場 メキシコ
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 1.59万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 4.1%)
17:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.00%)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 3.40%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 0.2%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 2.4%)
22:30 (米) 11月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前月比 (10月 0.0%)
22:30 (米) 11月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (10月 3.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.4万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.1万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
12/13(金)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (7‐9月 13)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業先行き (7‐9月 14)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (7‐9月 34)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (7‐9月 28)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (7‐9月 10.6%)
09:01 (英) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -18)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 3.0%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 1.6%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 4.4%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 170億ユーロ、予想 157億ユーロ)
16:00 (独) 11月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (10月 0.4%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 -0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.5%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -1.8%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -163.21億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支 (9月 -34.62億ポンド)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -2.0%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -2.8%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 0.3%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 0.8%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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