短期的にはもみあい、長期的なドル高是正には注意
〇先週のドル円、週前半は調整のドル売り目立つ
〇トランプ当確ニュースで154.71レベルの高値つけるも、FOMC前に152円台後半まで水準下げる
〇FOMC結果は予想通り0.25%利下げ、特にサプライズ無くそのまま週末まで上値重たい流れ
〇金融市場に影響大きい関税強化とインフレ懸念、法人減税による米国株高とドル高懸念の2つの流れ意識
〇トランプ大統領1期目には繰り返しドル高へのけん制発言行う、今年7/16には人民元安と円安に懸念表明
〇160円の大台を再び見ることなくドル安方向に修正進む可能性かなり高い点に注意
〇今週は152.00レベルをサポート、154.50レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週の最大の注目材料は米国大統領選。週初にはハリス副大統領がトランプ前大統領との差を縮めて大接戦になるとの予想から、それまでのトランプ・トレードによるドル買いに対して調整のドル売りが目立つ週前半となりました。しかし、6日の東京市場では東京前場から各州でトランプ当確のニュースが広がり、トランプ・トレードが再開、NY市場までにドル円は3円以上もドル買いの動きが見られ高値圏での引けとなりました。
また翌日早朝には154.71レベルの高値をつけましたが、FOMCを前に利食いが進み、NY市場昼前には152円台後半まで水準を下げてのFOMC待ち。結果は予想通り0.25%利下げとなったものの、特にサプライズも無くそのまま152円台後半での引けとなり、週末までは上値が重たい流れが続きました。
大統領選は直前に大接戦との見方が出てきたものの蓋を開けてみたらトランプ前大統領が圧勝となりました。開票結果が出遅れていたアリゾナ州も週末に確定したことで、トランプ前大統領は最終的に312人の選挙人を獲得(ハリス副大統領は226人)、また上院も共和党が53議席(残り1議席未確定)と過半数となりました。下院は共和党が214議席と過半数まであと4議席(残り18議席未確定)となっていて、こちらも共和党が優勢ですから、共和党がすべて押さえるトリプル・レッドの可能性が高まっています。
こうなると、良くも悪くもトランプ政権はやりたい放題ということになりますが、最初は公約を実現する比較的穏やかな政権運営からスタートすると思います。それでも金融市場への影響が大きい関税強化とインフレ懸念、法人減税による米国株高とドル高懸念という2つの流れは常に意識されることとなりそうです。しかし、トランプ大統領2期目は来年1月20日からのスタートであり、それまではバイデン政権が続くことから、行き過ぎた動きにはならないという見方をしています。
またトランプ大統領1期目の2017〜2020年の間に繰り返しドル高に対してけん制発言を行いました。例をあげてみましょう。
2017/01/13 ドルは強すぎる
2017/04/12 ドルは強すぎる
2017/7/25 ドルは強すぎないことが望ましい
2018/07/19 強いドルは米国に不利
2018/08/20 元安・ユーロ安政策を批判
当時のドル円チャートに重ねてみます。最初の4つの発言に縦線を引いてみました。
見なくてもわかりますが、当時発言が行われたドル円の水準は111〜117円です。現在の水準は当時よりも40円も円安が進行していることを考えると、トランプ大統領2期目の前にも何らかのドル高牽制発言を行う可能性がありますし、今年7月16日にも「大きな通貨問題を抱えている」とし、具体的に人民元安と円安への懸念を表明していました。
日本の三村財務官も大統領選後の円安の動きに対して懸念をしめしていたことを考えると、160円の大台は再び見ることなくドル安方向に修正が進む可能性もかなり高い点には注意しておきましょう。短期的には現在の地合いが続きやすいとしても長続きしない可能性が高いということです。
短期的なテクニカルについてはいつもの日足チャートをご覧ください。
中期的な流れとしては9月安値からの上昇トレンド(ピンクの平行チャンネル)をイメージできるのですが、年初来高値と9月安値との61.8%戻し153.40水準でのもみあい局面に移行してきていること、また上述したドル高に対しての牽制が出てくる可能性があることを考えるとドル高に全振りすることはあまりにもリスクが高いと思います。当面は横方向のもみあいを前提に考えた方が良いと思います。
今週は152.00レベルをサポートに154.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月11日(月)
**:** NY市場休場
08:50 日銀10月会合主な意見 ☆
08:50 本邦9月貿易収支
11月12日(火)
16:00 ドイツ10月CPI
16:00 英国10月失業率
17:00 フィンランド中銀総裁講演
19:00 ドイツ11月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏11月ZEW景況感
23:00 チポローネECB理事講演 ☆
24:00 ウォラーFRB理事講演 ☆
24:15 (リッチモンド連銀総裁講演)
11月13日(水)
07:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
22:30 米国10月CPI ☆
23:45 (ダラス連銀総裁講演)
27:00 (セントルイス連銀総裁講演)
27:30 (カンザスシティー連銀総裁講演)
11月14日(木)
09:01 英国10月住宅価格
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
21:30 10月ECB理事会議事要旨公表 ☆
22:30 米国10月PPI ☆
22:30 米国新規失業保険申請数
23:15 (リッチモンド連銀総裁講演)
25:00 週間原油在庫統計
27:30 シュナーベルECB理事講演 ☆
29:00 パウエルFRB議長講演 ☆
30:00 英中銀総裁講演 ☆
30:15 NY連銀総裁講演 ☆
11月15日(金)
08:50 本邦7〜9月期GDP速報値 ☆
16:00 英国7〜9月期GDP速報値 ☆
16:00 英国9月鉱工業生産、貿易収支
16:45 フランス10月CPI
22:30 米国10月小売売上高 ☆
22:30 米国11月NY連銀製造業景況指数 ☆
22:30 米国10月輸入物価
23:15 米国10月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 米国9月企業在庫
**:** APECサミット(〜16日)
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月4日(月)
週明けのドル円は週末の大統領選世論調査でトランプ氏リードが縮まったとのニュースを受け、大統領選に向けてドルを買い進めていた向きの利食いが出たことでドル売りの動きが強まりました。米金利も低下し東京市場が休場で参加者が少なかったことも重なって東京昼過ぎと欧州市場昼頃に2度151円台半ばをトライしたものの151円台ではまだ押し目買いを考える向きも多く、引けにかけては週明け始値の水準へと戻して引けました。
11月5日(火)
ドル円は朝方こそNY市場の流れを受けてドル買いが先行しましたが、152.54レベルまで。その後は米国大統領選を控えて週初同様にトランプ・トレードのポジション調整によるドル売りが目立ちNY市場では151.33レベルの安値をつけました。
11月6日(水)
東京前場からトランプ前大統領が当確というヘッドラインを背景としたトランプ・トレードが加速、ドル円は154円台半ばまで上昇し高値引け。また米国株は主要3指数が軒並み史上最高値を更新、米10年債利回りも4.479%まで上昇しました。
11月7日(木)
前日はトランプ・トレードが加速する流れでしたが、木曜は行き過ぎた動きに対して調整が入った一日で、FOMCを控え短期筋がいったん利食いを入れる動きが続きました。NY市場では米金利も4.3%台まで低下、FOMCは予想通り0.25%の利下げとなり、152.69レベルまで水準を下げたあと、153円近くへと戻して引けました。
11月8日(金)
金曜のドル円は早朝こそ買いが先行し153.36レベルの戻り高値をつけましたが、その後は米金利が低下する動きとともに売りが広がり欧州市場昼頃に152.14レベルまで下押ししました。しかし、152円は大統領選前の水準でもあり、押し目買いも出ているところにNY市場では強い経済指標も重なり152円台半ばに買い戻されて引けました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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