ドル円週間見通し 米大統領選後の円売り一巡で急騰幅の4分の3を削る(24/11/11)

9日早朝にかけてては下げ渋ったが153円には届かず、152円台での小動きにとどまった。

ドル円週間見通し 米大統領選後の円売り一巡で急騰幅の4分の3を削る(24/11/11)

米大統領選後の円売り一巡で急騰幅の4分の3を削る

〇先週のドル円、大統領選トランプ氏当確に154.71まで上昇後、FOMCのハト派姿勢に152.14まで下落
〇トランプ氏勝利報道で4.49%まで上げた米10年債利回りは4.26%まで低下し6日の上げ幅の大半を解消
〇米主要株価指数はトランプ氏勝利後楽観的な強気増し、高値更新続く
〇ドル円、10年債利回りとほぼ同調、利回り上昇継続か仕切り直しの低下か、見定め必要
〇153.35以下での推移中は一段安警戒とし、152円割れからは6日安値151.28を試す下落を想定
〇151.28を割り込んでさらに続落する場合は上昇一巡による下落期入りを疑い、150円台を試しに向かう
〇153.35超えからは上昇再開とみて154.00、7日高値154.71を順次試す上昇を想定
〇154円超え後153円台中盤までで確りする内は上昇継続、154.71超えから155円台前半への上昇を想定

【概況】

ドル円は11月6日の米大統領選挙開票速報におけるトランプ氏優勢報道で6日午前安値151.28円から反騰して154円台に到達し、トランプ氏当確報道により7日午前に154.71円まで高値を伸ばして9月16日安値139.57円以降の最高値としたが、大統領選後の円売りドル買い一巡で7日午後から下落に転じ、8日早朝に米FOMCが0.25%利下げを決定して追加利下げの可能性を示したことで8日夜には152.14円へ下落した。
7日午前高値からの下げ幅は2.57円となり、6日午前からの急伸幅3.43円に対して凡そ4分の3を削った。9日早朝にかけては下げ渋ったが153円には届かず、152円台での小動きにとどまった。
8日深夜に発表された米ミシガン大の11月消費者信頼感指数は73.0となり10月の70.5及び市場予想の71.0を上回ったが市場の反応は鈍かった。消費者調査における期待インフレ率は1年先で2.6%(前月は2.7%)。5年先で3.1%(前月は3.0%)だった。

【米10年債利回りは2日連続で低下、米主要株価指数は史上最高値更新】

11月8日の米長期債利回りはまちまちの動きで10年債と30年債が低下する一方で2年債利回りは上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは、6日のトランプ氏勝利報道で前日比0.16%上昇して一時4.49%をつけて9月16日に付けた3.60%以降の最高を大幅に更新したが、7日は前日比0.10%低下、8日も同0.02%低下となり、一時4.26%まで低下して6日の急騰幅に対して大半を解消した。

30年債利回りは6日に前日比0.17%上の大幅昇で4.61%となり、一時4.67%をつけて9月16日に付けた3.90%以降の最高を更新したが、7日は前日比0.08%低下、8日も0.06%低下して4.47%で終了した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは6日に前日比0.09%上昇の4.27%となり、一時4.30%をつけて9月25日に付けた3.51%以降の最高を更新したが、7日は前日比0.07%低下、8日は一時4.17%へ低下して6日の急騰前水準を割り込んでから持ち直して前日比0.06%上昇の4.26%で終了した。
総じて高止まりしながら一段高へ進むのか、これまでの上昇を過剰だたとして修正的な低下へ進むのか試される。

一方で米国主要株価指数はトランプ氏勝利を好感した楽観的な強気が勢いを増しており、主要3指数が揃って史上最高値を更新した。
NYダウは6日に前日比1508.05ドル高の大上昇で史上最高値を更新し、7日は取引時間中の最高値を更新してからの反落でマイナスに終わったが、8日は前日比259.65ドル高と上昇して取引時間中及び終値ベースの史上最高値を更新、4万4000ドルを初めて超えた。
ナスダック総合指数は5日の259.19ポイント高、6日の544.30ポイント高、7日の285.99ポイント高と連騰していたが、8日も17.32ポイント高で4連騰として史上最高値を更新を続けた。S&P500指数も5日から4連騰とし、3日連続で終値ベースの史上最高値を更新するとともに、一時6000を初めて超えて6012.45へ取引時間中の最高値を伸ばした。

【米10年債利回り上昇継続か仕切り直しの低下か、見定め必要】

【米10年債利回り上昇継続か仕切り直しの低下か、見定め必要】

2021年以降のドル円相場は米10年債利回りの動向とほぼ同調しており、11月6日の急伸は米長期債利回りの大幅上昇が背景だったが、7日午後から8日夜にかけては米長期債利回りが急騰一巡で低下したことに同調して下落した。米大統領選についてはハリス氏優勢説や接戦報道も見られて先行き不透明感が意識されていたが、トランプ氏が圧勝し、与党共和党が上院過半数を制して下院も過半数超えの見通しとなる「トリプル・レッド」の様相でほぼ決着しているため、米長期債利回りも「知ったら終い」でひとまず低下したといえる。

来年1月のトランプ政権発足後には大型減税や規制緩和、関税強化等の保護主義政策、国債増発による財政拡大等が予想され、インフレ再燃への警戒感が米長期債利回り上昇を招いた側面がある。その通りに進めばインフレ鈍化と労働市況悪化により利下げサイクルに入ったばかりの米FRBが利下げペースを緩め、あるいは利下げサイクルそのものが短命に終わる可能性も考えられるのだが、実際の政策実行には法案成立等の手続き的時間もかかること、インフレ鈍化傾向が続き労働市場も冴えない状況が続くなら利下げ継続が催促されることを踏まえれば、9月後半から上昇してきた米長期債利回りがさらに大幅上昇を継続してゆくとみるのは時期尚早と思われる。

米長期債利回りの上昇に頭打ち感が出る場合や、上昇一巡でいったん低下へ向かう場合にはドル円の下落要因となる。米主要株価指数がトランプ氏勝利を歓迎して史上最高値を更新し、日経平均もつれ高となるなら金融市場が不安定な時期の利上げはしないという日銀の遠慮は不要となり、円安へけん制も含めて日銀が12月ないし年明けの日銀金融政策決定会合で追加利上げを検討する姿勢を強く示して円高へ風向きが変わる可能性もある。
今週は13日に米10月CPI、14日に米10月PPIとインフレ指標発表が続き、15日には米10月小売売上高等の発表と続く。FRB高官、地区連銀総裁らの発言も相次ぐ。それらを見ながら米長期債利回りが年末にかけて上昇継続感を示せばドル円も連れ高を再開して11月7日高値154.71円超えへ進む可能性が高まり、11月6日安値151.28円を割り込む場合は米大統領選関連を織り込み済とした円高期入りの可能性が高まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、152.00円を下値支持線、153.35円を上値抵抗線とする。
(2)153.35円以下での推移中は一段安警戒とし、152円割れからは6日安値151.28円を試す下落を想定する。151.28円割れ回避か、わずかに割り込んでから153円台へ切り返す場合は6日安値とのダブル底形成による反騰入りと考えるが、151.28円を割り込んでさらに続落する場合は9月16日以降の上昇一巡による下落期入りを疑い、150円台を維持できるか試しに向かうとみる。
(3)153.35円超えからは上昇再開とみて154.00円、7日高値154.71円を順次試す上昇を想定する。154.71円前後でダブルトップに留まる可能性に注意するが、154円を超えた後も153円台中盤までで確りする内は上昇継続と考え、154.71円超えからは155円台前半へ向かう上昇を想定する。

【当面の予定】

11/11(月)
休場 米国(為替・債券休場、株式・商品は通常取引)、カナダ(株式通常取引、商品休場)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調前 (8月 3兆8036億円)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調済 (8月 3兆165億円)
08:50 (日) 9月 貿易収支・国際収支ベース (8月 -3779億円)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合(10月30-31日分)・主な意見
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断DI (9月 47.8)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー先行き判断DI (9月 49.7)

11/12(火)
08:30 (豪) 11月 ウエストパック消費者信頼感指数 (10月 89.8)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 1.3%)
09:30 (豪) 10月 NAB企業景況感指数 (9月 7)
16:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.4%)
16:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 2.0%)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 4.0%)
19:00 (独) 11月 ZEW景況感 (10月 13.1)
19:00 (欧) 11月 ZEW景況感 (10月 20.1)
24:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
24:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
28:00 (米) FRB、銀行上級融資担当者調査結果発表

11/13(水)
07:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
07:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前月比 (9月 0.0%)
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前年同月比 (9月 2.8%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前期比 (4‐6月 0.8%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 1.8%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 0.1%)

22:30 (米) 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 2.4%、予想 2.6%)
22:30 (米) 10月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前月比 (9月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (9月 3.3%、予想 3.3%)
23:45 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、会議挨拶
27:00 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、講演
27:30 (米) シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、講演
28:00 (米) 10月 月次財政収支 643億ドル

11/14(木)
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 6.41万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 4.1%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4‐6月 0.5%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4‐6月 0.7%)
16:00 (英) 9月 月次GDP 前月比 (8月 0.2%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.5%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -1.6%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -150.60億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支 (8月 -9.55億ポンド)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.4%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 0.9%)

21:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 1.8%)
22:30 (米) 10月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (9月 2.8%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 189.2万人)
23:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、懇話会
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
29:00 (米) パウエルFRB議長、講演

11/15(金)
休場 ブラジル、インド
06:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
06:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4‐6月 0.7%、予想 0.1%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 年率換算 (4‐6月  2.9%、予想 0.6%)
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 3.2%、予想 3.8%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 5.4%、予想 5.5%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 1.4%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.8%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 -5.3%)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -1.1%)

22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 -11.9、予想 0.0)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 -0.4%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 -0.7%、予想 0.0%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.3%、予想 -0.3%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 77.5%、予想 77.3%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)


注:ポイント要約は編集部

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