来週の為替相場見通し:『トランプ・トレード本格化でドル高に警戒。ドル円は上、ユーロは下か』(11/9朝)

ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、約3カ月ぶり高値となる154.72(7/30以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『トランプ・トレード本格化でドル高に警戒。ドル円は上、ユーロは下か』(11/9朝)

『トランプ・トレード本格化でドル高に警戒。ドル円は上、ユーロは下か』

〇今週のドル円、週初は先週末雇用統計の不冴えや、大統領選前の調整に安値151.32まで下落
〇大統領選でのトランプ氏圧勝後はトランプトレード再開に週後半にかけ154.72まで上昇
〇買い一巡後は反動売りと、FRBの利下げ実施に152円台に戻す
〇ユーロドル、大統領選後の米長期金利上昇に1.0682まで下落するも、週末は1.07台前半を回復
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合い強い
〇日米金利差縮小観測後退、米大統領選後のトランプトレード本格化期待もドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):151.00ー155.00、(EURUSD):1.0550−1.0900

今週のレビュー(11/4−11/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初152.96で寄り付いた後、(1)前週末金曜日に発表された米10月雇用統計後のドル売りの流れの継続(米10月非農業部門雇用者数の冴えない結果)や、(2)重要イベント(米大統領選や米FOMC)を控えたポジション調整、(3)米9月貿易収支(結果844億ドル赤字、予想840億ドル赤字、前回704億ドル赤字)の赤字幅拡大、(4)米10月総合PMI確報値(結果54.1、予想54.3)の市場予想を下回る結果、(5)米10月非製造業PMI確報値(結果55.0、予想55.3)の市場予想を下回る結果が重石となり、翌11/5にかけて、週間安値151.32まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)米10月ISM非製造業景況指数(結果56.0、予想53.8)の市場予想を上回る結果(約2年3ヵ月ぶり高水準)や、(7)米大統領選でのトランプ氏勝利(共和党候補のドナルド・トランプ氏が4年ぶりにホワイトハウスに返り咲くことが確定→大幅減税+財政出動+規制緩和の組み合わせを意識した米株買い・米債売り・米ドル買いが再開=トランプ・トレード)、(8)株式市場の大幅上昇(日経平均株価や米主要株価指数の大幅上昇→リスク選好の円売り圧力)、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力(円キャリートレードの再開期待)、(10)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値154.72(7/30以来の高値圏)まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(11)三村財務官による「為替相場について行きすぎた動きに対しては適切な対応をとる」「投機的な動向含め極めて高い緊張感を持って注視する」との円安牽制発言や、(12)トランプ・トレードの巻き戻し(急ピッチな上昇に対する反動売り)、(13)米FOMCでの25bpの利下げ実施(パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「FRBはより中立的な姿勢への道を歩んでいる」「12月の会合ではデータと見通しを注視する」「大統領選の結果は金融政策に何ら影響しない」と発言)、(14)米金利低下に伴うドル売り圧力、(15)加藤財務相による「為替、投機的な動向も含め極めて高い緊張感を持って注視する」「行き過ぎた為替の動きに対しては適切な対応をとる」との円安牽制発言が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/9午前1時30分現在)では、152.60前後まで値を崩す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0858で寄り付いた後、(1)前週末金曜日に発表された米10月雇用統計後のドル売りの流れの継続や、(2)重要イベント(米大統領選や米FOMC)を控えたポジション調整、(3)ドイツ10月製造業PMI確報値(結果43.0、予想42.6)の市場予想を上回る結果、(4)ユーロ圏10月製造業PMI確報値(結果46.0、予想45.9)の市場予想を上回る結果、(5)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(6)テクニカル的な地合いの好転(200日移動平均線の上方ブレイク)が支えとなり、週央にかけて、週間高値1.0937(10/11以来の高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)米大統領選でのトランプ氏勝利の確定(トランプ・トレードの活発化)や、(8)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米2年債利回りが7/31以来の高水準となる4.31%へ急上昇した他、米10年債利回りも7/1以来の高水準となる4.47%へ急上昇)が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0682(6/27以来の安値圏)まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(9)急ピッチな下落に対する反動買い(トランプ・ラリーの巻き戻し)や、(10)ユーロ圏9月小売売上高(結果+2.9%、予想+1.3%)の市場予想を上回る結果、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間11/9午前1時30分現在)では、1.0735前後まで持ち直す動きとなっております。尚、今週はドイツ政府による連立政権の崩壊(ドイツのショルツ首相が自由民主党のリントナー財務相を解任→3党による連立政権崩壊)が発生しましたが、市場の反応は限られました。

来週の見通し(11/11−11/15)

<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、約3カ月ぶり高値となる154.72(7/30以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「21日線と90日線のゴールデンクロス」「21日線と200日線のゴールデンクロス」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の剥落(衆院選での与党大敗を受けて、日銀による追加利上げは一段と難しくなったとの見方が市場コンセンサス→国民民主党の玉木雄一郎代表も11/1に「春闘の動向を見極める必要があるため、来年3月までは利上げをすべきではない」と発言済み)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(米経済のソフトランディング期待が高まる中、大幅利下げ期待が後退→今週開催された米FOMCについても25bpの利下げに留まった他、次回12月FOMCでは据え置き予想が25%程度まで上昇中)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方から海外勢を中心に円キャリートレードが活発化)、(4)トランプ・トレードの本格化期待(米大統領選でのトランプ氏勝利確定を受けて、大幅減税+財政出動+規制緩和が見込まれるため、インフレ懸念から米長期上昇・米ドル買いの波及経路が意識され易い)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

来週予定されている米国のインフレ指標(10月消費者物価指数や、米10月生産者物価指数など)や、米国の景気関連指標(米10月小売売上高など)が市場予想を上回る場合には、米金利上昇→米ドル買いの経路で、ドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(売り一巡後に再び直近高値を更新するシナリオを想定)。尚、来週は11/11に日本の総理指名選挙が予定されていますが、ドル円相場への影響は限られそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):151.00ー155.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時1.0682(6/27以来の安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(ドイツ経済の下振れ懸念)や、(2)ドイツを巡る政局不透明感(ドイツのショルツ首相が自由民主党のリントナー財務相を解任→3党連立政権が崩壊)、(3)次回ECB理事会での大幅利下げ観測(来月予定されているECB理事会で50bpの大幅利下げに踏み切るとの警戒感)、(4)米FRBによる過度な利下げ期待の後退、(5)上記3、4を背景とした欧米金融政策の方向性の違い、(6)トランプ・トレードの本格化期待(米大統領選でのトランプ氏勝利確定を受けて、大幅減税+財政出動+規制緩和が見込まれるため、インフレ懸念から米長期金利に上昇圧力が加わり易い)、(7)ウクライナおよび中東を巡る地政学的リスク(トランプ氏の勝利確定を受けて地政学的リスクが急速に高まる恐れ)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されているドイツ11月ZEW景況感指数や、ユーロ圏第3四半期実質GDP改定値が市場予想を下回る場合には、欧州経済の先行き不透明感→ECBによる大幅利下げ観測再燃の波及経路で、ユーロドルに強い下落圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0550−1.0900

注:ポイント要約は編集部

『トランプ・トレード本格化でドル高に警戒。ドル円は上、ユーロは下か』

ドル円日足

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