米大統領選後の円安一巡、FOMC後の続落で急騰幅の6割弱を削る
〇昨日のドル円、大統領選後の円売りドル買い一巡で153.65まで反落後、154円を挟んだ揉み合いに
〇FOMCを控え修正的な円高ドル安へと進み、FRB議長会見後152.69へ下落
〇FRBは2会合連続利下げ、次回会合での利下げ継続へ含み持たせる
〇米新規失業保険申請件数は4週ぶり悪化
〇152.50割れからは152円前後への下落を想定
〇153.70超えからは強気転換注意として154円前後試しとする
【概況】
ドル円は米大統領選挙開票速報でのトランプ氏優勢報道により6日午前安値151.28円から急伸し、当確見通しにより7日午前には154.71円へ高値を伸ばしてこの間の上昇幅を3.43円とした。大統領選後の円売りドル買いが一巡して7日夕刻に153.65円まで反落してから154円を挟んだ揉み合いとなり、8日早朝のFOMCを控えて修正的な円高ドル安へと進み、8日早朝のFOMCが0.25%利下げと追加利下げの可能性を示したことで152.69円へ下落した。7日午前からの下げ幅は2.02円となり直前の急騰幅の半値押しを超えて6割弱を削った。
米大統領選挙では事前の接戦予想に反してトランプ氏が圧勝したこと、共和党が上院で過半数を超えて下院も過半数超えの見通しとなり共和党が大統領・上下院を制する「トリプル・レッド」の様相となったことでドル全面高へ進んだ。トランプ政権は来年1月後半発足となるが、トランプ氏が主張してきた大型減税と財政拡大による国債増発、保護主義や関税強化によるインフレ再燃懸念等が思惑されて米国債券売り・利回り急上昇を招いたが、大勢が判明したことで大統領選直後のドル高が一巡して8日早朝にかけては揺れ返しのドル安へ進んだ。
FRB(米連邦準備制度理事会)は7日のFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)で政策金利を0.25%引き下げて4.50〜4.75%とした。9月会合で0.50%の大幅利下げを決定した時から通常の0.25%利下げへとペースダウンしたが、2会合連続の利下げとした。現状の政策金利水準はまだ引き締め的であるとし、「追加的な金利調整の検討で指標などを注意深く精査する」として12月会合での利下げ継続へ含みを持たせた。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「金融政策はなおも景気抑制的」、「景気を押し上げも冷ましもしない中立的な水準へ金利を時間とともに下げる」利下げサイクルの継続姿勢を改めて示したが、12月会合で追加利下げについては「何の決定もしていない」とした。米大統領選の結果については「短期的に我々の政策決定に何も影響しない」、経済政策が変更されるとしても法制化プロセスで時間がかかるとの認識を示し、トランプ氏がFRB議長の解任を検討しているとの見方については「任期中は辞任しない」との立場を表明した。
FOMCと議長会見を通過して米金利先物市場における12月会合での利下げ継続期待は7割強となっている。
【米新規失業保険申請件数は4週ぶり悪化】
米労働省による新規失業保険申請件数は11月2日までの週間で前週比3000件増の22万1000件となり市場予想と一致したが4週ぶりに悪化し、失業保険受給者総数は10月26日までの週間で189万2000人となり前週から3万9000人増加して市場予想の187万5000人を上回った。
米労働省による第3四半期の非農業部門労働生産性は年率換算で前期比2.2%上昇して前期の2.1%(速報の2.5%から下方修正)を上回ったが市場予想の2.3%を下回った。前年同期比は2.0%上昇った。
単位労働コストは前期比1.9%上昇して前期の2.4%から低下し、前年同期比は3.4%上昇で前期の3.2%を下回った。また時間当たりの労働報酬は前期比4.2%増で前期の4.6%から低下したが、前年同期比は5.5%増だった。
【米長期債利回りは急低下、NYダウやナスダックは取引時間中の史上最高値を連日更新】
7日の米長期債利回りは総じて低下し、前日の急騰幅の過半を解消した。7日夜に英中銀が0.25%の利下げを決定、8日早朝にFRBが0.25%利下げを決定して追加利下げの可能性を示したことで、前日の大統領選挙でのトランプ氏圧勝による急伸が一巡した。
長期金利指標の10年債利回りは6日に前日比0.16%の大幅上昇で4.43%となり、一時4.49%をつけて9月16日に付けた3.60%以降の最高を大幅に更新したが、7日は前日比0.10%低下の4.33%へ失速した。30年債利回りは6日に前日比0.17%の大幅昇で4.61%となり、一時4.67%をつけて9月16日に付けた3.90%以降の最高を更新したが、7日は前日比0.08%低下の4.53%へ失速した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは6日に前日比0.09%上昇の4.27%となり一時4.30%をつけて9月25日に付けた3.51%以降の最高を更新したが、7日は前日比0.07%低下の4.20%へ失速した。
いずれも6日の急騰幅を解消したわけではなく、来年1月発足のトランプ政権が大型減税、国債大量発行、対外関税強化等を実行し始めれば債券需給悪化やインフレ再燃懸念を招き、FRBの利下げが短期間で終了する可能性も否定できないのではないかとの声もあるため、米長期債利回りの上昇傾向が継続することも懸念される。
一方で米国株高は続いている。NYダウは6日に前日比1508.05ドル高の大上昇で史上最高値を更新したが、7日は取引時間中の最高値を43823.10ドルへ伸ばしてから利食いに圧されて前日比0.59ドル安とわずかに下げた。ナスダック総合指数は6日に544.30ポイント高と大上昇したが、7日も取引時間中の史上最高値を19301.70へ伸ばし、終値も2日連続で最高値更新とした。S&P500指数は前日比44.06ポイント高と上昇して3連騰とし、取引時間中及び終値の史上最高値を2日連続で更新した。トランプ政権下での減税、規制緩和、財政拡大、対外関税強化による国内需要増への期待が強まっている。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は11月6日午前安値からの反騰で10月28日午前と29日夜の両高値をダブルトップとした右肩下がりの下降トレンドから脱却してダブルトップラインも超えたが、7日午前へ大幅続伸してから直前の急騰幅の6割弱を削る下落となった。7日午前高値を目先のピークとしていったん仕切り直しに入っているところと思われ、154円台回復へ進めないうちは9日早朝から13日午前にかけての間への下落余地ありとするが、154円超えからは7日午前高値試しとする。
60分足の一目均衡表では11月8日早朝への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下落再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8日早朝への下落で30ポイントを割り込んでから40ポイント近辺へ戻している。50ポイント以下での推移か一時的に50ポイントを超えても維持できないうちは一段安余地ありとするが、相場が一段安したところで指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰警戒とし、55ポイント超えからは反騰継続とみて60ポイント台後半への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、152.50円を下値支持線、153.70円を上値抵抗線とする。
(2)153.70円を下回るうちは一段安余地ありとし、152.50円割れからは152円前後への下落を想定する。152円前後は買われやすいとみるが、下げ足が速まる場合は151円台中盤へ下値目途を引き下げる。
(3)153.70円超えからは強気転換注意として154円前後試しとする。154円超えから続伸の場合は反騰継続とみて7日午前高値154.71円に迫る上昇を想定する。ただし、7日午前高値に迫る場合はダブルトップに留まって反落しやすいと注意する。
【当面の予定】
11/8(金)
中国全人代常務委員会([最終日)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI・速報値 (8月 106.9、予想 109.0)
14:00 (日) 9月 景気一致指数CI・速報値 (8月 114.0、予想 115.5)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (10月 70.5、予想 71.0)
25:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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