石破首相の追加利上げ牽制発言と米ADP雇用統計の良好な結果を受けて大幅上昇
〇ドル円、米国時間午後にかけ高値146.51まで急伸
〇植田日銀総裁、石破首相のハト派発言、米9月ADP雇用統計の予想を上回る結果等が背景
〇ユーロドル、中東情勢緊迫化、欧州株の冴えない動き、米金利上昇に1.10台前半に下落
〇ドル円、石破ショックの全値戻しを達成、テクニカルの地合い回復
〇日銀による過度な利上げ期待、米FRBによる過度な利下げ期待の剥落もドル円をサポート
〇国慶節明けの中国の更なる景気刺激策にも期待
〇引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇本日の予想レンジ:145.00ー147.50
海外時間のレビュー
2日(水)のドル円相場は大幅上昇。(1)米メディア・アクシオスによる「イスラエルが数日以内に重大な報復を行う見通し」「イラン国内の石油生産施設などが標的となる可能性あり」との報道や、(2)上記1を背景とした地政学的リスクの大幅上昇(リスクオフ再開)、(3)日経平均株価の大幅下落が重石となり、アジア時間午後にかけて、一時143.53まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)中東情勢緊迫化に伴う有事のドル買い(リスク回避の円買い以上に有事のドル買いが強まる展開)や、(5)植田日銀総裁による「経済物価が見通し通り動けば緩和の度合いを調整するが、本当にそうか見極める時間があるので丁寧にやる」とのハト派的な発言、(6)石破首相による「現在は追加利上げをするような環境にはない」とのハト派的な発言、(7)上記5、6を背景とした日銀による追加利上げ期待の後退(円売り再開)、(8)米9月ADP雇用統計(結果+14.3万人、予想+12.5万人)の市場予想を上回る結果、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支えとなり、米国時間午後にかけて、高値146.51(9/3以来の高値圏)まで急伸しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/3午前6時10分現在)では、146.40前後で推移しております。尚、昨日はリッチモンド連銀バーキン総裁より「経済が予想通りに進展すれば今年さらに2回の25bp利下げは合理的な道筋とみている」「現在の金利引き下げは政策の適切な再調整だが、完全な正常化にはインフレ率が2%に達する必要がある」との発言が見られましたが、市場の反応は限られました。
2日(水)のユーロドル相場は冴えない動き。欧州時間朝方にかけて、高値1.1083まで上値を伸ばすも、一巡後に伸び悩むと、(1)中東情勢緊迫化に伴うリスク回避ムードの高まりや、(2)欧州株の冴えない動き、(3)米9月ADP雇用統計の市場予想を上回る結果、(4)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、米国勢参入後に、安値1.1035(9/12以来の安値圏)まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/3午前6時10分現在)では、1.1048前後で推移しております。尚、昨日はデギンドスECB副総裁による「ユーロ圏の成長率は当面の間ECBの予測値を下回る可能性があるが、その後は回復ペースが徐々に加速する見通し」との発言や、スロベニア中銀バスレ総裁による「さらなる利下げはあるだろうがそれはデータ次第」「10月利下げを除外したり約束したりはできない」との発言、ポルトガル中銀センテノ総裁による「インフレ率はECBが掲げる目標に近づいた」との発言、シュナーベルECB専務理事による「インフレ率が2%まで持続的に低下する可能性が高まっている」との発言が見られましたが、市場の反応は限られました。
本日の見通し
ドル円は「中東情勢緊迫化に伴う有事のドル買い」「石破首相・植田日銀総裁によるハト派的な発言」「良好な米ADP雇用統計」の組み合わせで急伸する動きとなりました。先週末金曜日の自民党総裁選・決選投票前に記録した高値146.49を僅かに更新するなど、石破ショックの全値戻しを達成しております。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けした他、4時間足などの下位足でも強い買いシグナルが点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの回復(上昇トレンドの本格再開)が期待されます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の剥落(昨日は植田日銀総裁と石破首相が会談し、植田日銀総裁からは「緩和的な状態で経済をしっかり支えていることを伝えた」「経済物価が見通し通り動けば緩和の度合いを調整するが、本当にそうか見極める時間があるので丁寧にやる」とのハト派的な発言、石破首相からも「現在は追加利上げをするような環境にはない」とのハト派的な発言あり)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(パウエルFRB議長は今週「FEDが利下げを急いでいるとは感じていない」と市場で高まる早期利下げ期待を牽制。今週発表された米8月JOLT求人件数、米8月ADP雇用統計はいずれも市場予想を上回る結果)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
国慶節明けに中国が更なる景気刺激策を打ち出すのではないかとの期待感もドル買い・円売りを支えると見られることから、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(※中東情勢緊迫化を背景とした地政学的リスクは、「リスク回避の円買い」以上に「有事のドル買い」で反応し易くなっているため、ドル円にはむしろ上昇圧力が加わる公算大)。尚、本日は米9月チャレンジャーレイオフ調査や、米新規失業保険申請件数、米9月非製造業PMI確報値、米8月製造業受注、米8月耐久財受注確報値、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁発言、アトランタ連銀ボスティック総裁発言などが予定されております。
本日の予想レンジ:145.00ー147.50
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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