ドル円見通し 米雇用統計後の乱高下レンジで方向感探る
○ドル円、9/9は手掛かりに欠ける中、朝141.92まで下げたところを買われて午後に143円に到達
〇その後はドル高感で夜高値143.79へ上昇したものの、深夜142.65まで再び反落するなど気迷いの様相
○米長期債利回りは米雇用統計をきっかけとした大幅低下にやや一服感、米株価は総じて持ち直す
○ドル円は8年周期の大天井を7/3に付けた可能性
○143.89手前までは戻り売り有利とし、142.50割れからは141円台後半への下落を想定する
○143.89超えからは9/6安値141.76を起点とした上昇期とみて、144.50から145.00手前を試すとみる
【概況】
ドル円は9月6日夜の米雇用統計をきっかけとして乱高下となり、発表後に141.99円へ下落してから143.89円へ反騰したものの深夜に141.76円へ一段安となり142円台序盤で先週を終えた。
9月9日は手掛かりに欠ける中、日経平均が一時1100円安を超える大幅安となったものの先週末比175.72円安まで持ち直したことが円高には若干のブレーキとなったため、朝に141.92円まで下げたところを買われて午後に143円に到達した。その後は米長期債利回りの下げ渋りとユーロやポンドの下落によるドル高感で夜高値143.79円へ上昇したものの、6日の乱高下時高値には届かずに深夜に142.65円まで再び反落するなど気迷いの様相だ。
9月9日発表の米7月卸売売上高は前月比1.1%増となり6月の0.3%減から回復したが市場の反応は鈍かった。
米8月雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門就業者数が予想を下回り直近2カ月分が大幅下方修正されたものの失業率が前月から0.1%改善してインフレ指標の平均時給伸び率も前月を上回ったため、FOMCにおける利下げ規模については0.50%の大幅利下げではなく0.25%の通常利下げに留まるとの見方が優勢となったが、9月から12月にかけての3会合連続での利下げ予想も強まった。
ユーロドルはいったん急伸後に一段安して9日も続落しており、ECBが米国に先行した利下げ姿勢を継続していることで結果的にドル高優勢の動きとなったようだ。しかし日銀が年末にかけて追加利上げを探る姿勢を示していることで円高基調継続感も根強いためにドル円は6日夜高値超えには至らなかったというところか。市場の関心は11日の米8月CPIへ向いている。
【米長期債利回りは低下一服、NYダウは反騰米国株は大幅下落】
9月9日の米長期債利回りはまちまちの動きで、先週末の米雇用統計をきっかけとした大幅低下にやや一服感がみられるものの低下基調の範囲にある印象だ。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.01%低下の3.70%となった。一時3.64%をつけて2023年10月のピークである5.02%以降の最低とし、9日はやや下げ渋ったものの日足終値ベースではこの間の最低とした。
30年債利回りは先週末比0.02%低下の4.00%となった。6日は一時3.96%へ低下して4月末以降の最低としたところから持ち直して前日比変わらずとしていたが、9日は日足終値ベースでこの間の最低とした。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは0.02%上昇の3.67%となった。6日に一時3.63%をつけて昨年10月19日に付けた5.26%以降の最低を更新したが、9日は6日の高安レンジ内に留まった。
一方で米国主要株価指数は9月6日の大幅下落から総じて持ち直した。
NYダウは9月6日に前日比410.34ドル安(1.01%安)と急落したが、9日は先週末比484.18ドル高と上昇し、ナスダック総合指数は6日に436.83ポイント安(2.55%安)と大幅下落したが9日は193.77ポイント高と上昇した。S&P500指数は6日に94.99ポイント安(1.73%安)となり9月3日から4営業日続落したが、9日は62.63ポイント高と反発した。
米国の労働統計悪化が顕著となったことで連続利下げ期待が強まっているものの、ソフトランディングではなくリセッションに陥るのではないかとの懸念が強まったことが先週末の急落背景であり、当面は米国の主要経済指標を見ながら先行き不安と楽観の天秤がいずれへ傾くのか見定めたいところだ。
【8年周期の大天井を付けた可能性】
ドル円の月足レベルにおける長期波動は概ね8年前後のサイクルで天井と大底を付けてきたが、2024年7月3日高値がこのサイクルの大天井となった可能性も考えられる。
変動相場開始から7年目の1978年10月底、9年強経過の1988年1月底、7年強経過の1995年4月底、10年弱経過の2005年1月底、7年弱の2011年10月底と続いて9年強経過の2021年1月6日底で直近の大底を付けている。一方で天井は変動相場開始から10年目の1982年11月天井、7年半経過の1990年4月天井、8年経過の1998年8月11日天井、9年目の2007年6月天井、8年目の2015年6月5日天井と続き、そこから2024年7月3日高値までが9年を経過したところとなる。
今のところは2022年10月21日高値151.94円から2023年1月16日安値127.22円までの下げ幅24.72円に対して今年7月3日高値161.94円から8月5日安値141.69円までの下げ幅は20.25円に留まり、2023年12月28日安値140.24円から底上げした状況を維持しているが、2023年の1月16日安値と12月28日安値を結んだ上昇トレンドの下値支持線からはすでに大きく転落しており、2023年1月16日への下げ幅を超える場合は8年周期の天井を付けての下落期入りを疑う必要も出てくるのではないかと考える。
ドル円は意図的な異次元金融緩和政策と日本経済の低迷によるファンダメンタルズ的な円安感により歴史的な円安相場で推移してきたのだが、円の独歩安による過剰な円安期待で走り過ぎたややバブル的な円安だった側面もあり、日銀がゼロ金利解除から徐々に金利引き上げに入る一方で欧米が金融緩和期に入ることによるズレがバブル的円安感を崩したことで急落商状を招いている。7月までの上昇で円安材料を織り込み済として過剰な円安の修正局面に入ると、今度は円高継続への思惑からも円高がやや過剰に進行しても不思議はない。
中長期的なシナリオとしては、140円前後からいったん150円前後へ戻す場合には7月3日高値を頭、昨年11月13日高値を左肩とした三尊の右肩形成をしてから下落に入るケースと、下げ渋りでボックス型の横ばい持ち合いを入れてから一段安へ進むケース、顕著なリバウンドがなく130円台中盤へ下落してから数週の反発を入れて早々に下落再開となるケースを考えておきたい。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は9月6日の乱高下レンジ内での推移が続いているが、今のところは5日深夜高値144.21円から6日夜高値143.89円、9日夜高値143.79円と戻り高値切り下がり基調にあるため142.50円割れからは下落再開として10日夜から12日夜にかけての間への下落を想定するが、6日夜高値を上抜く場合は6日深夜安値を頭、5日夜安値と9日深夜安値を両肩とした逆三尊形成による上昇期入りとみて10日夜から12日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9月6日夜の乱高下レンジで推移しているが、10日朝時点では遅行スパンが好転して先行スパンも上抜きつつあるため、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化する場合は下落再開とみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は9月5日夜から6日夜にかけての下落時に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる。6日夜に60ポイントを超えてから50ポイント割れへ反落したものの10日朝には50ポイントを超えてきている。このため60ポイント超えからは上昇期とみて70ポイントへ迫るとみるが、40ポイント割れからは下落再開と一段安へ向かうとみて30ポイント以下への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、142.50円を下値支持線、9月6日夜高値143.89円を上値抵抗線とする。
(2)143.89円手前までは戻り売り有利とし、142.50円割れからは下落再開とみて141円台後半への下落を想定する。141.80円以下は反騰注意とするが、142.50円以下での推移が続く場合は11日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.89円超えからは6日深夜安値141.76円を起点とした上昇期とみて144.50円から145.00円手前を試すとみる。144.75円以上は反落注意とするが、6日夜高値を超えた後も143円台を維持しての推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
9/10(火)
米大統領選候補者討論会、中国全人代常務委員会(9/13まで)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル建て (7月 846.5億ドル、予想 820.5億ドル)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 6)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 4.2%、予想 4.1%)
9/11(水)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、秋田で講演、14時から会見
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 0.0%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.8%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -1.4%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・商品 (6月 -188.94億ポンド、予想 -179.50億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支 (6月 -53.24億ポンド、予想 -47.00億ポンド)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 2.9%、予想 2.6%)
21:30 (米) 8月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (7月 3.2%、予想 3.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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