ドル円週間見通し 米雇用統計後に乱高下から一段安、7月3日から二段目の下落期入り(9/9)

米8月雇用統計が強弱まちまちの内容だったために、発表直後に141.99円へ下落してから143.89円へ反騰した後に141.76円へ一段安となる波乱となり、142.26円で週を終えた。

ドル円週間見通し 米雇用統計後に乱高下から一段安、7月3日から二段目の下落期入り(9/9)

米雇用統計後に乱高下から一段安、7月3日から二段目の下落期入り

○米8月雇用統計は強弱まちまちの内容、ドル円は発表直後に141.99円へ下落してから143.89円へ反騰
○その後、141.76円へ一段安となる波乱となり、142.26円で週を終える
○米雇用統計の受け止めについては、9月「0.50%」という大幅利下げの可能性を残す
○米10年債利回りは、一時3.64%をつけて2023年10月のピークである5.02%以降の最低とする
○141.76円割れからは141.00円前後への下落を想定
○143円超えから続伸の場合は143.89円試しとするが、高値切り下がり基調にある点は要注意

【概況】

9月6日夜に発表された米8月雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門就業者数が前月比14万2000人増で市場予想の16万人増を下回り、6月と7月の2か月分も計8万6000人下方修正されたが、失業率は前月から0.1%改善の4.2%となり、平均時給の伸びは前月比及び前年比で7月から上昇した。
強弱まちまちの内容だったために9月FOMC(9/17/18)の利下げ幅に対して0.50%の大幅利下げとなるのか通常の0.25%利下げに留まるのか思惑が交錯したために為替市場は乱高下に見舞われ、ユーロドルやポンドドルが急伸してから上昇分を吐き出して一段安となり、ドル円は発表直後に141.99円へ下落してから143.89円へ反騰した後に141.76円へ一段安となる波乱となり、142.26円で週を終えた。

【米8月雇用統計、9月大幅利下げの可能性を残す】

米労働省が9月6日夜に発表した8月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比14万2000人増となり7月の8万9000人増から拡大したものの市場予想の16万人増を下回った。6月分が当初の17万9000人から前月比11万8000人増へ6万1000人下方修正され、7月分は当初の11万4000人増から8万9000人増へ2万5000人下方修正されて2か月合計8万6000人の下方修正となった。
失業率は7月の4.3%から市場予想通りに4.2%へ改善したが、U6(正社員を希望している完全失業者)失業率は7月の7.8%から7.9%へ悪化した。
インフレ指標の平均時給伸び率は前月比で0.4%となり7月の0.2%及び市場予想の0.3%を上回り、前年同月比は3.8%で7月の3.6%及び市場予想の3.7%を上回った。

8月21日に米労働省が雇用統計の年次改定を行い、速報ベースでは今年3月までの1年間で就業者増加数が合計81万8000人の下方修正されて2009年以来最大の修正規模となり、月平均では6万8000人ずつの下方修正となったため、8月23日のジャクソンホール会合においてパウエルFRB議長はインフレの安定と雇用確保を主眼とするFRBとして9月利下げ開始姿勢を鮮明にした。
8月雇用統計の受け止めについては0.50%利下げとなる可能性を残し、年内3回の会合で利下げが続くとの見通しも優勢となったが、金利先物市場では0.25%利下げ期待度が7割強、0.50%利下げ期待度は3割弱となっている。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は「労働市場の健全性を維持するために複数回の利下げが必要になる」とし、ウォラーFRB理事も「利下げを開始する時期が来た、適切なら前倒しで利下げを実施することを主張する」と述べている。

【米2年債利回りは昨年10月以降の最低を3日連続で更新、米国株は大幅下落】

米雇用統計を受けて9月6日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%低下の3.71%で終了したが、一時3.64%をつけて2023年10月のピークである5.02%以降の最低とした。30年債利回りは一時3.96%へ低下して4月末以降の最低としたところから持ち直して前日比変わらずの4.02%で終了した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは0.10%低下の3.65%で終了したが、一時3.63%をつけて年10月19日に付けた5.26%以降の最低を更新した。
総じて低下傾向だが特に2年債と10年債の低下傾向が鮮明化しており、9月からの連続利下げを睨んだ動きを見せている。
一方でNYダウは前日比410.34ドル安(1.01%安)で前日の219.22ドル安から続落、ナスダック総合指数は436.83ポイント安(2.55%安)、S&P500指数は94.99ポイント安(1.73%安)で9月3日から4営業日続落と揃って大幅下落した。労働統計の悪化がソフトランディングから金融緩和期に入るとの楽観的な強気感からリセッションに陥る懸念が浮上したことで株高にブレーキがかかった印象だ。

【週足先行スパンからの転落を試す】

【週足先行スパンからの転落を試す】

ドル円の日足は9月3日から6日にかけて4日連続陰線で下落して8月28日安値を割り込んだため、8月15日高値149.38円からの下落が二段目に入っている。8月5日安値141.69円割れには至らずにいるためダブルボトム形成からの反騰入りという可能性も多少残すが、日足終値ベースでは8月5日終値144.13円を8月27日終値143.92円で割り込み、さらに9月6日終値142.26円へ下落しているため、すでに7月3日から8月5日までの下落を一段目とすれば、8月15日を起点として二段目に入り、その二段目も三段下げ型における二段目に過ぎずに下落期が長期化する可能性を示唆している。

週足では昨年1月16日にかけての大幅下落時に週足の一目均衡表で先行スパンへ潜り込んだものの転落を回避して上昇を再開しているが、9月6日時点ではまだ週足先行スパンからの転落には至っていないものの転落への余裕は乏しく、転落する場合は大規模な修正安のレベルを超えたより大きな下落期に入ることも懸念される。
すでに2023年1月16日安値と2023年12月28日安値を結ぶ上昇トレンドの下値支持線からは転落しており、14週相対力指数も30ポイント割れから早々に切り返してきた流れに範囲して現状は8月5日への急落時に30ポイントを割り込んでからもさらに指数の切り下げが続いている。8月5日安値割れの場合は凡そ8年前後の周期による大天井を付けての円高期という声も強まりかねないところだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月6日夜の乱高下時を基準として141.76円を下値支持線、143.89円を上値抵抗線とする。
(2)143円前後までは戻り売り有利とし、141.76円割れからは141.00円前後への下落を想定する。141円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、米CPI等をきっかけにドル安が加速する場合は140円前後試しへ下値目途を引き下げる。
(3)143円超えから続伸の場合は143.89円試しとするが、9月5日夜高値144.21円から6日夜高値143.89円へ高値切り下がり基調にあるため、143.89円を超えずに戻り幅の半値を削るところからは下落再開と一段安を想定する

【当面の予定】

9/9(月)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 年率換算 (速報 3.1%、予想 3.2%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 1兆5335億円、予想 2兆4845億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 1兆7763億円、予想 1兆9086億円)
08:50 (日) 7月 貿易収支・国際収支ベース (6月 5563億円、予想 -409.8億円)
10:30 (中) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 0.5%)
10:30 (中) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 -0.8%)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断 (7月 47.5、予想 47.6)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行き判断 (7月 48.3、予想 48.6)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 -0.6%)
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 89.3億ドル、予想 120.0億ドル)

9/10(火)
米大統領選候補者討論会、中国全人代常務委員会(9/13まで)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル建て (7月 846.5億ドル)
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (1-3月 0.7%)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 1.4%)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 85.0)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 6)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報  1.9%、予想 1.9%)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 4.2%)

9/11(水)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、秋田で講演、14時から会見
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 0.0%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.8%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -1.4%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・商品 (6月 -188.94億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支 (6月 -53.24億ポンド)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 2.9%、予想 2.6%)
21:30 (米) 8月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (7月 3.2%、予想 3.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

9/12(木)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業BSI (4‐6月 0.4)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業BSI (4‐6月 -1.0)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.1%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 3.0%、予想 2.8%)
10:00 (日) 田村日銀審議委員、岡山で講演、14時半から会見
21:15 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 4.25%、予想 3.65%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 2.2%)
21:30 (米) 8月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前月比 (7月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (7月 2.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.8万人)
21:45 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、記者会見
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -2437億ドル)

9/13(金)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 2.8%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 2.7%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 -3.1%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -3.9%、予想 -2.1%)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.1%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 0.7%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (8月 67.9)

注:ポイント要約は編集部

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