来週の為替相場見通し:『良好な米経済指標を背景にドル買い・円売りトレンドが本格再開』(8/17朝)

ドル円は8/5に記録した安値141.69をボトムに切り返すと、僅か10日後の8/15に一時149.40まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『良好な米経済指標を背景にドル買い・円売りトレンドが本格再開』(8/17朝)

『良好な米経済指標を背景にドル買い・円売りトレンドが本格再開』

〇今週のドル円、弱い米7月PPI等に週央にかけ週間安値146.07まで下落
〇その後CPIも弱い結果だったもののアク抜け感が出て反発、米小売売上高も強く、149.40まで急伸
〇週末反落するも底堅く、148円台前半で越週
〇ユーロドル、週央にかけ1.1048まで上昇するも米長期金利上昇等に再び1.10割れで推移
〇ドル円、転換線を上抜け、下位足で買いサインも点灯、地合い好転印象づけるチャート形状に
〇ファンダメンタルズも円キャリートレード再開期待、株式市場の世界低持ち直し等がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00、(EURUSD):1.0800−1.1100

今週のレビュー(8/12−8/16)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初146.74で寄り付いた後、(1)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの高まり(一部メディアによる「ハマスがイスラエルの都市テルアビブにロケット弾で攻撃した」「テルアビブで爆発音が聞こえた」との観測報道)や、(2)米7月生産者物価指数(結果+2.2%、予想+2.3%)および、米7月コア生産者物価指数(結果+2.4%、予想+2.6%)の市場予想を下回る結果、(3)アトランタ連銀ボスティック総裁による「利下げは近づいている」とのハト派発言、(4)米金利低下に伴うドル売り圧力、(5)ニュージーランド準備銀行(RBNZ)によるサプライズ的な利下げ決定(RBNZは市場の据え置き予想に反して25bpの利下げを実施→NZDJPY急落→ドル円連れ安)、(6)岸田首相による自民党総裁選不出馬の意向表明が重石となり、週央にかけて、週間安値146.07まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)日経平均株価の大幅上昇(リスク選好の円売り圧力)や、(8)米7月消費者物価指数(結果+2.9%、予想+3.0%)が概ね市場予想の範囲内に留まったことに対する安堵感、(9)米新規失業保険申請件数(結果22.7万件、予想23.5万件)の良好な結果、(10)米7月小売売上高(結果+1.0%、予想+0.4%)および、同除く自動車(結果+0.4%、予想+0.1%)の力強い結果、(11)米8月ニューヨーク連銀製造業景況指数は(結果▲4.7、予想▲6.0)の市場予想を上回る結果、(12)米7月輸入物価指数(結果+1.6%、予想+1.5%)の市場予想を上回る結果、(13)米7月輸出物価指数(結果+1.4%、予想+0.1%)の市場予想を上回る結果、(14)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(15)米主要株価指数の堅調推移が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値149.40まで急伸しました。

週末にかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/17午前1時00分現在)では、148.15前後で推移しております。尚、週末に発表された米8月ミシガン大消費者信頼感指数速報値(結果67.8、予想66.9)は市場予想を上回る結果となりましたが、ドル円相場の反応は限定的となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0915で寄り付いた後、早々に週間安値1.0911まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ドイツ7月生産者物価指数(結果▲0.1%、前回▲0.6%)の前回数値を上回る結果や、(2)ドイツ6月経常収支(結果232.0億ユーロ黒字、前回185.0億ユーロ黒字)の黒字額増加、(3)心理的節目1.1000突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売り、(4)テクニカル的な地合いの好転(強い買いシグナルが複数点灯)、(5)欧州株の堅調推移、(6)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1048まで上昇しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(7)注目された米7月消費者物価指数が概ね市場予想の範囲内に留まったことに対する安堵感(米金利上昇→米ドル買い)や、(8)米経済を巡る過度な悲観論の後退(米新規失業保険申請件数、米7月小売売上高、米8月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米8月ミシガン大消費者信頼感指数の良好な結果→米FRBによる大幅利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買い)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間8/17午前1時00分現在)では、1.0995前後で推移しております。尚、今週発表されたドイツ8月ZEW景況感指数(結果+19.2、予想+34.0、前回+41.8)は市場予想を大幅に下回る結果(過去2年で最大の落ち込み)となりましたが、市場の反応は限られました。またワムバッハZEW所長からも「ドイツ経済見通しは崩壊しつつある」との悲観的なコメントが発せられましたが、こちらもユーロ売りでの反応は限定的となりました。

来週の見通し(8/19−8/23)

<ドル円相場>
ドル円は8/5に記録した安値141.69をボトムに切り返すと、僅か10日後の8/15に一時149.40まで急伸しました。この間、日足ローソク足が一目均衡表転換線を上抜けした他、1時間足や4時間足などの下位足で強い買いシグナルが点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による追加利上げ観測が足元で大幅に後退しつつあること(日銀による先月末の利上げ決定がその後の株価大暴落など金融市場を不安定化させる失敗事例を作ってしまったため、少なくとも日銀は年内追加利上げに踏み切りにくい→内田日銀副総裁も「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言)や、(2)米FRBによる大幅利下げ観測の後退(今週発表された米国の主要経済指標が軒並み良好な結果を示したことで、米経済のハードランディング懸念が大幅後退→9月FOMCでの50bp利下げの織り込み度合が8/5時点の85.0%から足元25.0%へ急低下)、

(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方から、日米金利差に着目したドル買い・円売りが再開)、(4)株式市場の世界的な持ち直し(リスクオン再開に伴うリスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。加えて、市場のポジション構造的に見ても、歴史的高水準に積み上がっていた円ショートポジションが大幅に解消するなど(米CFTCが8/9に発表した8/6時点のIMM通貨先物非商業部門の建玉は、2021年3月以来の水準まで円ショートポジションが急縮小→円キャリートレードの巻き戻し局面は終了したとの見方が市場コンセンサス)、円キャリートレード再構築の動きが足元で活発化しつつあります。

来週予定されている米経済指標(米7月景気先行指数、米8月PMI速報値、米7月シカゴ連銀全米活動指数、米7月中古住宅販売件数、米7月新築住宅販売件数)が市場予想を上回る場合には、米経済を巡る過度な悲観論が一段と後退し、米金利上昇→米ドル買いの経路で、心理的節目150.00を突破する展開も想定されるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は上記以外にも、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長講演(8/23)に注目が集まりますが、市場の焦点である「利下げ幅(25bpか50bp)」についての踏み込んだ発言が出てくる可能性は乏しいと見られるため、ドル円相場への影響は限定的となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週央にかけて一時1.1048まで急伸するなど、年初来高値を更新しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けしていることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、オシレータ系インジケータに過熱感(買われ過ぎ感)が見られないこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済に依然として先行き不透明感が燻っていること(今週発表されたドイツ8月ZEW景況感指数は、直近2年間で最大の落ち込みを記録)や、(2)欧州域内を巡る財政悪化懸念(欧州委員会は6/19にフランスやイタリアを含む域内7カ国に「過剰財政赤字手続き」の開始を勧告→対象国は9/20までに構造改革案を提出する必要性あり)、

(3)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(FRBに先行してECBが利下げサイクルに突入済みであることに加えて、足元では米国のハードランディング懸念後退を背景に、米FRBによる大幅利下げ観測が後退→金融政策面でユーロドルに下落圧力が加わり易い)、(4)中東情勢緊迫化に伴う地政学的リスクの長期化懸念など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。来週予定されているユーロ圏8月PMI速報値や、ユーロ圏8月消費者信頼感速報値が市場予想を下回る場合には、上記1で示した「欧州経済の先行き不安」と、上記3で示した「ECBによる追加利下げ期待」が組み合わさることで、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0800−1.1100

注:ポイント要約は編集部

『良好な米経済指標を背景にドル買い・円売りトレンドが本格再開』

ドル円日足

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