147円挟んだ持ち合いから上放れ、7月3日以降の円高終了による円安再開感強まる
〇ドル円、8/15夜の米経済指標を通過して持ち合いから上放れに入り、147.10台から149.14へ急伸
〇8/16日早朝にかけて149円を挟んで確りしながら、149.38まで高値を伸ばす
〇米経済指標は強弱まちまちだったが雇用改善・小売堅調が注目され、ドル高株高反応を招く
〇米長期債利回りは反騰、NYダウは3連騰、ナスダックは6連騰
〇148円台を維持する内は一段高余地ありとして、150円試しを想定する
〇148円台序盤は買われやすいとみるが、148円割れからは147円台中盤への下落を想定する
【概況】
ドル円は147円を挟んだ揉み合いで推移していたが、8月15日夜の米7月小売売上高が市場予想を上回る堅調さを示して新規失業保険申請件数も2週連続で改善したことをきっかけとしたドル高により直前の147.10円台から149.14円へ急伸し、16日早朝にかけて149円を挟んで確りしながら16日早朝には149.38円まで高値を伸ばした。
ドル円は7月31日の日銀追加利上げやFOMC及び8月2日の米7月雇用統計が悪化したことによる世界連鎖株安で7月30日高値155.21円から8月5日安値141.69円まで大幅下落したが、世界連鎖株安が落ち着いて日米株高再開の動きに入ったことと8月7日に日銀の内田副総裁が追加利上げに否定姿勢を示したことで買い戻し優勢となり8月12日に148.21円まで高値を伸ばした。その後は148円台を維持できずに14日昼に146.07円まで下げてから147円台後半へ持ち直すなど147円を挟んだ持ち合いとしていたが、8月15日の米経済指標を通過して持ち合いから上放れに入り149円台に到達した。
7月30日から8月5日への下げ幅13.52円に対して8月16日早朝高値149.38円までの戻り幅が7.69円となり直前の下げ幅に対する半値戻しを超え、7月3日高値161.94円から8月5日までの下げ幅20.25円に対しては凡そ38%を戻した。日足は前日比1.98円高と勢いのある陽線であり、8月2日の米雇用統計悪化をリセッション入りへの懸念として世界連鎖株安に至ったことは過剰な悲観だったとして米主要株価指数は8月2日から5日にかけての下落幅をすでに解消しており、日銀が前回の利上げによりドル円の急落と株安を招いたことを踏まえて暫く追加利上げへ踏み込めず、FOMCも9月に0.25%利下げしても0.50%の大幅利下げにはならないとすれば、7月3日からの大規模な円高が一巡して円安を再開し、株高円安継続期待が強まりやすい状況に入ったと思われる。
【雇用改善、小売堅調】
8月15日の米経済指標は強弱まちまちだったが新規失業保険申請減少と小売好調が注目されてドル高株高反応を招いた。8月15日の米経済指標を見て市場は9月会合での0.5%利下げ期待を大幅に後退させたが0.25%利下げ期待は変わらないとの反応を示している。
米労働省による新規失業保険申請件数は8月10日までの週間で前週比7000件減の22万7000件となり2週連続で改善し、失業保険受給者総数は8月3日までの週間で186万4000人となり前週から7000人減少した。
米商務省による7月小売売上高は前月比1.0%増となり6月の0.2%減から回復して市場予想の0.3%増を大幅に上回った。自動車・同部品を除くと0.4%増で予想の0.1%増を上回り、ガソリンを除くと1.0%増、自動車・同部品・ガソリンを除くと0.4%増だった。
フィラデルフィア連銀による8月第3地区製造業景況指数はマイナス7.0となり7月の13.9から大幅に低下したが市場予想の6.0も大幅に下回った。NY連銀の8月製造業景況指数はマイナス4.7となり7月のマイナス6.6から改善して市場予想のマイナス6.0を上回った。
FRBによる7月鉱工業生産指数は前月比0.6%低下して6月の0.3%増から悪化し市場予想の0.3%低下も下回った。製造業は0.3%低下で3か月振りマイナスとなり自動車・同部品は7.8%の大幅低下だった。設備稼働率も77.8%で6月の78.4%から低下した。
7月の米輸入物価指数は前月比0.1%上昇で6月の0.0%から加速したが、輸出物価指数は6月の0.3%低下から0.7%上昇へと再加速した。
セントルイス連銀のムサレム総裁は「インフレと雇用に関するリスクのバランスは変化し。金融政策の調整が適切となる時期が近づいているかもしれない」と利下げ姿勢を示し、アトランタ連銀のボスティック総裁は9月利下げについての判断は「オープン」と述べた。
【米長期債利回りは反騰、米株価指数は続伸】
8月15日の米長期債利回りは総じて大幅上昇した。前日までは連続低下していたが9月の0.50%利下げはないとみて再上昇した印象だ。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%上昇の3.92%となり、30年債利回りは0.04%上昇の4.17%、政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.14%上昇の4.10%といずれも上昇した。
米金利先物市場では9月利下げはほぼ確実視されており、0.25%利上げ期待度が75%、0.50%利上げ期待度は25%まで下がった。
一方でNYダウは前日比前日比554.67ドル高と大幅上昇し、13日の408.63ドル高、14日の242.75ドル高から3連騰とした。ナスダック総合指数は前日比401.90ポイント高と大幅上昇して8月8日から6連騰とし、S&P500指数も88.01ポイント高で6連騰とした。いずれも7月末からの下落幅を解消するV字反騰であり株高再開感を強めており、米長期債利回りの反発とともにドル円の上昇に寄与している。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は8月5日午後安値141.69円からの戻りが12日夜高値148.21円で一巡して147円を挟んだ持ち合いに入っていたが、15日夜の急伸で一段高したため14日午前安値146.07円を起点とした上昇期とみて16日の日中から19日夜にかけての間への上昇を想定する。148円以上での推移中は一段高余地ありとするが、148円割れからは弱気転換注意として147円台中盤への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月15日夜の急伸で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたため遅行スパン好転中の高値試し優先とする。26本基準線を上回るうちは一段高へ進みやすいとみるが、26本基準線割れから続落する場合はいったん下げに入る可能性もあるとみて遅行スパンの悪化を警戒する。
60分足の相対力指数は8月15日夜の急伸で80ポイントに迫ってからも70ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、相場が小反落後に一段高する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とし、60ポイント割れからは50ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.00を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)148円台を維持する内は一段高余地ありとして150円試しを想定する。150円前後は売られやすいとみるが、上昇が勢い付く場合は150.0円台中盤(150.35円から150.65円)へ上値目途を引き上げる。
(3)148円台序盤は買われやすいとみるが、148円割れからは147円台中盤への下落を想定し、148円以下での推移が続く場合は週明けも安値試しへ向かいやすくなるとみて147円割れへ向かうとみる。
【当面の予定】
8/16(金)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 -1.2%、予想 0.5%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -0.2%、予想 1.4%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 123億ユーロ、予想 135億ユーロ)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 135.3万件、予想 133.0万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 3.0%、予想 -1.7%)
21:30 (米) 7月 住宅着工許可件数・年率換算 (6月 144.6万件、予想 142.5万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工許可件数 前月比 (6月 3.4%、予想 -1.5%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (7月 66.4、予想 66.8)
26:25 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会参加
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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