ドル円見通し 日銀副総裁発言で147円台後半へ戻したものの8日午前序盤に146円割る(24/8/8)

ドル円は、8日朝に146.50円を割り込み8時台終盤に145円台後半へ続落している。

ドル円見通し 日銀副総裁発言で147円台後半へ戻したものの8日午前序盤に146円割る(24/8/8)

日銀副総裁発言で147円台後半へ戻したものの8日午前序盤に146円割る

〇昨日のドル円、内田副総裁発言を受け147.47へ急伸、午後147.88まで高値を伸ばす
〇その後は手掛かり難で高値更新へ進めず、8/8午前序盤に145円台後半へ下落
〇8/5の下落幅は解消するも、8/2夜米雇用統計をきっかけとした下落幅は解消せず
〇内田副総裁、7/31の植田総裁による追加利上げ発言を封印
〇FRB9月会合での0.50%利下げ予測が濃厚となるなか、ドル円に対する売り圧力も継続か
〇米長期債利回りは連騰、米株価指数は乱調、世界連鎖株安終息とまでは言えない印象
〇146.50以下での推移中は下向きとし、145円割れからは144円、143円を順次試す下落を想定
〇147円手前は戻り売り有利としてその後に146円を割り込むところから下げ再開とみる

【概況】

ドル円は8月5日に日経平均が過去最大の下げ幅となる暴落に見舞われたことで5日午後に141.69円へ急落したが、日経平均の持ち直しで6日午前に146.36円へ戻してから145円を挟んだ揉み合いで推移し、7日午前に日銀の内田副総裁が金融市場混乱期に利上げはしないと述べたことで147.47円へ急伸し、午後に147.88円まで高値を伸ばした。その後は手掛かりに欠けて高値更新へ進めず米長期債利回りが連騰したものの反応は鈍いままで、8日朝に146.50円を割り込み8時台終盤に145円台後半へ続落している。

7月3日高値161.94円から8月5日安値141.69円まで20円を超える下落幅となり、7月30日高値155.21円からの下げ幅は13.52円となったが、7日午後高値147.88円まで6.19円の上昇幅として8月5日の下落幅は解消したものの8月2日夜の米雇用統計をきっかけとした下落幅の解消には至らなかった。
日経平均の歴史的暴落はひとまず落ち着いて5日の急落幅は解消したが先週末からギャップを開けて一段安した窓を埋めたに過ぎず、NYダウが7日に一時500ドル近く上昇してから前日比234.21ドル安に終わるなど、世界連鎖株安が再開しかねない不安を残しており、米FRBが9月会合で0.50%利下げに踏み切るとの見方も濃厚となる中でドル円に対する売り圧力もまだ継続しているのではないかと思われる。

【日銀副総裁、追加利上げ封印】

日銀の内田副総裁は8月7日の講演で「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」、「先行きの緩和度合い調整はここ1週間の株価・為替の大幅な変動が影響する」、「金融資本市場が不安定な状況で利上げすることはない」と述べた。
7月31日に日銀が0.25%程度への利上げを決定して植田総裁が今後の追加利上げ姿勢を示したことがドル円の急落と日経平均大幅下落のきっかけとされて植田ショック等と報じられたことに対する火消し的な発言と思われる。利上げ決定を大きな要因として急激な円高と株安を招いたために当面は追加利上げできない状況に陥ったともいえるが、米国の利下げ期入りにより日米長期金利差の縮小が続くことによる円高圧力も続くと思われる。

日経平均の大幅下落時に日銀・財務省・金融庁は三者会合を開いている。7月末に就任した三村財務官は7日に「我々がパニックになってはならず、冷静に何が起きているのかを見極める必要がある」、為替に関しては「特定の水準を念頭に置いているわけではなくボラティリティーを見ている」「安定的に推移することが望ましい」と述べている。
8月7日に財務省が発表した4-6月期の介入実績では4月29日の市場介入が5兆9185億円で2022年10月21日の5兆6202億円を上回って過去最大だったことが示された。5月2日早朝の1日付け介入も3兆8700億円と大きな規模だった。7月11日と12日も覆面での市場介入があったとされるが、財務省データでは6月27日から7月29日までの月間で5兆5348億円の介入があった模様だ。

【米長期債利回りは連騰、米株価指数は乱調】

8月7日の米長期債利回りはまちまちの動きとなり、2年債利回りが低下したものの10年債入札が不調だったことで10年債と30年債の利回りは上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%上昇の3.95%となった。8月5日の世界連鎖株安で一時3.67%へ低下して2023年6月以降の最低を更新したところから低下幅を解消して先週末比変わらずとし、6日は急低下後の反動で0.10%上昇となり、7日は10年債入札の応札倍率が2.32倍で2022年12月以来最低となる不調だったために債券売り・利回り上昇反応を招いて連騰したようだ。30年債利回りも前日比0.07%上昇して6日の0.11%上昇から連騰した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.02%低下の3.96%となった。8月5日に一時3.65%へ低下して2023年4月以降の最低としてからの反騰で先週末比0.04%上昇とし、6日も0.06%上昇と連騰したが、7日は4.03%まで上昇してから先行きの利下げ見通しを踏まえて低下に転じた。

一方でNYダウは前日比234.21ドル安と下落した。8月5日に前日比1033.99ドル安となり8月1日からの3日間で2000ドルを超える下落に見舞われ、6日は反動で294.39ドル高と上昇し、7日も一時500ドル近く続伸したものの上げ幅解消からマイナスに転じた。ナスダック総合指数も8月5日に一時1000ポイントを超える下落から戻して576.08ポイント安とした後、7日に166.78ポイント高と戻したが、7日は一時300ポイントを超える上昇から反落して前日比171.05ポイント安に終わった。まだ世界連鎖株安が終息したとまでは言えない印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は8月5日午後安値141.69円から反騰入りしたが、7日午後に147.88円まで戻してから9日午前序盤に145円台後半へ失速しているため、7日午後高値を目先のピークとして戻り一巡後の下落期に入っている印象のため、5日午後安値を基準として目先の安値形成期を8日午後から12日午後にかけての間と想定する。ただし、147円超えを強気転換注意として7日午後高値147.88円試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとして12日午後から14日午後にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8月6日午前への反騰で遅行スパンが好転して7日午前の一段高で先行スパンを上抜いたが、9日午前への反落で遅行スパンは再び悪化しやすい位置に来ている。先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開と一段高を想定するが、先行スパンから転落する場合は下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月7日午後に70ポイントを超えたものの9日午前序盤の下落で50ポイントを割り込んでいるためいったん仕切り直しの下落期に入っているとみて20ポイント台への低下を想定し、強気転換は60ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.00円を下値支持線、147.00円を上値抵抗線とする。
(2)146.50円以下での推移中は下向きとし、145円割れからは144円、143円を順次試す下落を想定する。143円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は142円台中盤へ下値目途を引き下げる。
(3)146.50円超えからは147円手前を試すとみるが、147円手前は戻り売り有利としてその後に146円を割り込むところから下げ再開とみる。ただし、7日午後高値147.88円を上抜き返す場合は5日午後安値からの反騰継続として150円を目指す上昇期に入るのではないかと考える。

【当面の予定】

8/8(木)
11:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、講演
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状 (6月 47.0、予想 47.5)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行き (6月 47.9、予想 48.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.9万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.7万人、予想 187.0万人)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
28:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、ウェビナー出演

8/9(金)
休場 シンガポール、南ア
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 1.5%)
10:30 (中) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 -0.8%、予想 -0.9%)
10:30 (中) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 0.2%、予想 0.3%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.3%)


注:ポイント要約は編集部

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