『ポジション調整終了で来週はドル買い・円売りトレンドの再開を想定』
〇今週のドル円、週初158.86まで上昇後、週後半にかけ155.38まで急落
〇米国の対中半導体規制強化観測報道、ドルロング勢のロスカット、FRB関係者のハト派発言等が背景
〇売り一巡後は、155円を背にした押し目買いの動き、米指標の改善等に週末にかけ157円台前半を回復
〇ユーロドル、トランプ氏のドル高牽制等に週央1.0948まで上昇するもECB理事会後再び1.09割れ
〇ドル円、約一か月ぶり安値に急落するも一目均衡表「雲」下限にサポートされ、地合い崩れず
〇ファンダメンタルズも円キャリー継続期待、トランプトレードの活発化等が支え
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー159.00、(EURUSD):1.0750−1.1000
今週のレビュー(7/15−7/19)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初157.88で寄り付いた後、(1)パウエルFRB議長が「過去3回のインフレ指標は信頼感を高める」「第2四半期のインフレ率はさらに改善する見込み」といったハト派的な見解を示しつつも、利下げ時期や利下げ回数についてのヒントを与えなかったことや、(2)米主要株価指数の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(3)米7月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果▲6.6、予想▲7.6)の市場予想を上回る結果、(4)米6月小売売上高(結果±0.0%、予想▲0.3%)および、除自動車(結果+0.4%、予想+0.1%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、翌7/16にかけて、週間高値158.86まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米国が対中半導体規制で最も厳格な措置を検討していることを同盟国に警告したとのネガティブヘッドラインや、(6)上記5を背景とした株式市場の急反落(リスク回避の円買い再燃)、(7)ロング勢による大規模ロスカット、(8)神田財務官による「投機による過度な変動あれば適切に対応していくしかない」との追加介入を示唆する発言、(9)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「今後数カ月以内に金利引き下げが正当化される可能性がある」とのハト派的な発言、(10)ウォラーFRB理事による「利下げが正当化される時期に近づいている」とのハト派的な発言、(11)トランプ米大統領による「米国がドル高により大きな問題を抱えている」「対ドルでの円安や人民元安がはなはだしい」とのドル高牽制発言、(12)テクニカル的な地合いの悪化(一目均衡表雲上限や90日移動平均線の下方ブレイク→仕掛け的なドル売り・円買い)が重石となり、週後半にかけて、週間安値155.38(6/7以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(13)心理的節目155.00を背にした押し目買い圧力や、(14)米7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果+13.9、予想+2.9)の市場予想を上回る結果、(15)米6月景気先行指数(結果▲0.2%、予想▲0.3%)の市場予想を上回る結果、(16)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間7/20午前1時30分現在)では、157.38前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0887で寄り付いた後、(1)米6月小売売上高の市場予想を上回る結果や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、翌7/16にかけて、週間安値1.0871まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)先週来続くドル売りの流れの再開や、(4)ドイツ7月ZEW景況感指数(結果+41.8、予想+41.0)の市場予想を上回る結果、(5)ドイツ7月ZEW現況指数(結果▲68.9、予想▲74.8)の市場予想を上回る結果、(6)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁やウォラーFRB理事によるハト派発言、(7)トランプ前大統領のドル高牽制発言が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.0948(3/14以来、約4カ月ぶり高値圏)へと上昇しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(8)ECB理事会通過後のユーロ売り再開(ECB理事会では予想通り政策金利の据え置きが決定されると共に、声明文においても「今後の金融政策はデータ次第で会合ごとに決定する」「金利の道筋を事前に約束することはない」との見解を強調。ラガルドECB総裁も記者会見で「9月理事会でどうするかの方向性はまだ決定しない」と発言するなど、今後の動きに対する示唆を一切与えず→但し一部メディアが関係筋の話として「タカ派的な理事でさえもデフレ継続が確認できれば利下げに前向きである」との見解を報道)や、(9)欧州株の冴えない動き、(10)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間7/20午前1時20分現在)では、1.0890前後まで値を崩す動きとなっております。
来週の見通し(7/22−7/26)
<ドル円相場>
ドル円は7/3に記録した約38年ぶり高値161.99をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1カ月ぶり安値となる155.38まで急落しました。但し、市場参加者に意識されている一目均衡表雲下限に確りとサポートされて反発に転じたことや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(上昇→下落へのトレンド転換は生じていない→比較的早いタイミングで上昇トレンドが再開する可能性が高い)と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利下げ開始時期を巡る不確実性(市場では9月FOMCでの25bp利下げ開始がほぼ織り込み済みとなっているため、年内3回の利下げ織り込みが始まらない限り、ここから更にドルを売り込み材料にはなり得ない。トランプ前大統領が「FRBは秋の大統領選前に利下げをするべきではない」と牽制していることもドル売りを思いとどまらせる要因。今週発表された米経済指標も総じて良好な数字)や、(2)日銀による利上げ開始時期の後ずれ観測(本邦1ー3月期実質GDP確報値が大幅に下方修正されたことや、本邦5月毎月勤労統計調査の実質賃金が前月を下回る冴えない結果となったこと等を踏まえると、日銀が今月末の会合で追加利上げに踏み切る可能性は乏しい。
河野デジタル相も「(河野氏が日銀に利上げを求めたとの報道に対して)利上げを直接求めているわけではない」と釈明)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの継続期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方から円キャリートレードの優位性は続く見通し)、(4)トランプトレードの活発化期待(トランプ再選は財政悪化→インフレ上昇の思惑から、米金利上昇→米ドル買いに繋がるとの見方)、(5)政府・日銀による介入限界論の台頭(政府・日銀は7/11に3ー4兆円、7/12に2兆円規模のドル売り・円買い介入を実施したと見られているが、ドル円相場の押し下げ効果は限定的→小出し介入は市場参加者に絶好の買い場を与えるだけとの見方が浸透)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は既にブラックアウト期間に突入しているため、米当局者発言は予定されておりません。従って、米経済イベント(米6月中古住宅販売件数、米6月新築住宅販売件数、米6月耐久財受注、米第2四半期GDP速報値、米新規失業保険申請件数、米6月PCEデフレータなど)や、日銀金融政策決定会合に絡む観測報道(日経新聞や時事通信などのリーク報道)に警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー159.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は6/26に記録した約2ヵ月ぶり安値1.0666をボトムに切り返すと、今週半ばにかけて、約4カ月ぶり高値となる1.0948(3/14以来の高値圏)まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「21日線と90日線のゴールデンクロス」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(ECBによる根強い追加利下げ観測)や、(2)欧州経済の先行き不透明感、(3)フランス政治の先行き不透明感(格付け会社ムーディーズはフランス国民議会総選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスであると警告)、(4)欧州域内の財政悪化リスク(欧州委員会は6/19に、フランス、イタリア、ベルギー、スロバキア、マルタ、ポーランド、ハンガリーの7カ国に対し、「過剰財政赤字手続き」開始を勧告→構造改革案を9/20までに示す必要あるため、同期日が近づくにつれ、ユーロ売り圧力が強まる恐れあり)、(5)トランプトレードの活発化期待(トランプ再選は財政悪化→インフレ上昇の思惑から、米金利上昇→米ドル買いに繋がるとの見方)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(テクニカル面よりもファンダメンタルズ主導の相場展開を想定)。尚、来週は上記2を見極める目的で欧州経済指標(ユーロ圏7月消費者信頼感指数、ユーロ圏7月製造業PMI速報値、ユーロ圏7月サービス業PMI速報値、ドイツ7月IFO景況感指数)に注目が集まる他、上記1を見極める目的で欧州当局者発言(レーンECB専務理事講演、デギンドスECB副総裁講演、ドイツ連銀ナーゲル総裁講演など)にも注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1000
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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