今週は介入後のレンジで上下とも手探り状態
〇先週のドル円、予想より弱い米CPIにドル売り反応直後、想定外の介入で157円台前半まで急落
〇159円台半ばまで上昇時にユーロ円でのレートチェックで再び157円台へと下落
〇7月日銀利上げとしても絶対的な日米金利差で、材料無く動きが止まればドル買いの流れ変わらず
〇改めて円安に振れてきた時に介入が出るのかどうか見極めていくことに
〇157円台前半は目先の安値、テクニカルにはいったん下げ止まりやすい水準
〇FRB関係者からのハト派な発言やECB理事会後ユーロ高の動きが出れば、ドル安につながる可能性も
〇今週は157.30レベルをサポート、159.30レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、木曜の米国CPIまではわずかなドル高の動きとなり週初の160円台後半から若干の上下を挟みながら161円台後半へと上昇し、前週高値161.95レベルに近い水準でCPI発表を迎えました。CPIは全般に予想よりも弱かったことでドル売りで反応しましたが、その直後に想定外の介入が出たことから157円台前半まで急落することとなりました。金曜東京早朝には159円台半ばまで上昇時に、ユーロ円でのレートチェックが出たことから改めて157円台へと下落、その後戻したものの介入警戒感が残ったままでの週末クローズとなりました。
先週は、米国市場での介入と翌日のユーロ円でのレートチェックという2つが全てと言って良い動きになったと思いますが、先週の週報でも確認したように最近の値動きは3月に神田財務官が示した2週間4%というボラティリティには程遠く、また特定の水準を気にしていないという発言とは矛盾する不意打ちの介入だったと言えます。
市場参加者を油断させた上で、注目度の高い米国CPIが弱かったところに追い打ちをかけるような介入は効果は高いのですが、前週につけた年初来高値161.95レベルを上抜けると更なる円安を招く可能性があるという考えもあったように思え、そうなると必ずしも特定の水準は考えていないということは無さそうだとも言えそうです。
ここでゴールデンウィークの介入後安値が151.86レベルであったことを考えると、今回介入が出た水準はプラス10円の水準です。介入後の安値から10円以上円安に振れる場合には介入を考えるといったことはあったかもしれません。またドル円と違ってユーロ円での介入は出ないであろうからユーロ円やクロス円での円売りならば安全と考える参加者に対してユーロ円でのレートチェックという動きも意外なものでした。
おそらくG7内で円買い介入について、対ドルだけでなく、対ユーロ、対ポンドといったあたりは事前に調整が進んでいた可能性もありそうです。ユーロ円は1999年1月のユーロ開始以降の史上最高値を更新中でしたから、ドル円の介入と併せてユーロ円のレートチェックを行うことで効果を高め、後に続く三村財務官を動きやすくする道筋をつけたという感じがします。
ただ、そうは言っても米国の利下げは9月以降、日銀が7月に利上げを行うとしても絶対的な日米金利差がある以上動きが止まればドル買いが湧いてくるという流れも簡単には変わらないでしょうから、今週以降の動きで改めて円安に振れてきた時に介入が出るのかどうか見極めていくということになります。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
介入後安値と6月安値を結んだサポートラインとそれに平行に引いたライン(高値を先週高値に変えました)とで構成される平行上昇チャンネル(青)の中で上側のラインから下側のサポートラインへと一気に反落する動きとなっています。6月安値と7月高値の61.8%押しが157.35と今回の安値ともほぼ一致していることからテクニカルにはいったん下げ止まりやすい水準にあると言えそうです。
ここからの一段の下げには更なる材料が必要ですが、今週は米国側でFRB関係者の発言が続くため、先週のCPIを受けてこれまでよりもハト派な発言が出てくるようであれば、それをきっかけとしたドル安も考えられますし、ECB理事会後にユーロ高の動きが出れば、その動きがドル安につながる可能性もあるでしょう。ただ材料が無く動きが止まればドル買いが湧いてくるという流れは簡単には止まらないため、157円台前半は目先の安値と見てよさそうです。
いっぽうで上値も159円台が木曜介入後の戻り高値であることから、同水準では戻り売りも出てくると見られます。今週は157.30レベルをサポートに、159.30レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
7月15日(月)
**:** 東京市場休場
11:00 中国4〜6月期GDP
11:00 中国6月鉱工業生産、小売売上高
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産
21:30 米国7月NY連銀製造業景況指数 ☆
25:30 パウエルFRB議長講演 ☆
29:35 サンフランシスコ連銀総裁講演 ☆
7月16日(火)
18:00 ドイツ7月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
21:30 米国6月小売売上高、輸入物価
23:00 米国7月NAHB住宅指数 ☆
23:00 米国5月企業在庫
27:45 クーグラーFRB理事講演 ☆
7月17日(水)
15:00 英国6月CPI ☆
18:00 ユーロ圏6月CPI
21:30 米国6月住宅着工・建設許可 ☆
22:00 リッチモンド連銀総裁講演 ☆
22:15 米国6月鉱工業生産、設備稼働率
22:35 ウォラーFRB理事講演 ☆
27:00 ベージュブック ☆
7月18日(木)
08:50 本邦6月貿易収支(通関)
10:30 豪州6月失業率
15:00 英国6月失業率
18:00 ユーロ圏5月建設支出
21:15 ECB理事会 ☆
21:30 米国7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:45 ラガルドECB総裁会見 ☆
23:00 米国6月景気先行指数
26:45 (ダラス連銀総裁講演)
7月19日(金)
07:05 サンフランシスコ連銀総裁講演 ☆
08:01 英国7月消費者信頼感
08:30 本邦6月CPI ☆
08:45 ボウマンFRB理事講演 ☆
15:00 ドイツ6月PPI
15:00 英国6月小売売上高
23:40 NY連銀総裁講演 ☆
26:00 アトランタ連銀総裁講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月8日(月)
週明けのドル円はユーロが対ドル対円とも売りが先行したことから一時160.26レベルへと下げましたが昼前には反転、欧州市場序盤には161.12レベルへと買い戻されました。この買い戻しもユーロ円が主導した動きでしたが、ドル円は上下とも動きは鈍く160円台後半でのもみあっての引けとなりました。
7月9日(火)
週明けに目先の安値をつけたドル円はじり高、押しを挟みながらもNY市場昼前には一時161.52レベルの高値をつけました。きっかけとなったのはパウエルFRB議長の議会証言でしたが、インフレは目標に向かっているものの確信が持てるまでは利下げをしないと、前回FOMCやECBフォーラムでの講演内容に沿ったものでした。ただ、ハト派では無かったということから米金利が上昇し為替はドル高で反応、引けにかけてはやや押して引けました。
7月10日(水)
ドル円は前日に続いてじり高、多少の押しを挟みながらも朝方の安値161.25レベルからNY後場には161.81レベルまで上昇し、若干押しての引けとなりました。パウエル議長の下院議会証言は上院での内容から変わらず、1日の値幅も56銭と動き自体は静かなままでした。
7月11日(木)
ドル円は米国CPIを前に161円台半ばでもみあいを続けていましたが、全般に予想よりも弱いCPIを受け米金利低下、ドル円は160円台後半へと下落。しかし、その直後にドル円は157円台半ばまで急落、地合いが悪化しているところに介入は無いと考えている市場参加者の裏をかいた介入が出たと見られました。神田財務官はノーコメントとし、その後は158円台半ばでのもみあいを挟んで159円に近づいての引けとなりました。
7月12日(金)
ドル円は前日の介入の影響から上値が重たいところに東京前場にユーロ円でのレートチェックが入ったことから一時的に159円台前半から157円台後半へと下げました。しかしすぐに買い戻され、その後NY市場までは159円台前半でのもみあいが続きました。NY市場ではまた介入が出るのではといった疑心暗鬼と週末前のポジション調整も入り157.38レベルと前日安値を僅かに割り込んだあとに158円に近づいての引けとなりました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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