来週の為替相場見通し『ドル円は高値圏から急落するも下値余地は限定的か。一巡後の反発に期待』(7/13朝)

ドル円は高値圏から暴落する荒々しい値動きとなりましたが、強い買いシグナルが継続しているため、テクニカル的に地合いは崩れていないと判断できます。

来週の為替相場見通し『ドル円は高値圏から急落するも下値余地は限定的か。一巡後の反発に期待』(7/13朝)

『ドル円は高値圏から急落するも下値余地は限定的か。一巡後の反発に期待』

〇今週のドル円、週央にかけ週間高値161.85まで上昇後、週末にかけて安値157.38まで急落
〇米6月CPIの予想以上の鈍化、政府・日銀による為替介入観測、短期筋の大規模ロスカット等が重石
〇引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、157円台後半での越週
〇ユーロドル、欧州株堅調や、米早期利下げ観測再燃に週末にかけ一時1.0912まで上昇
〇ドル円、高値圏から暴落するも強い買いシグナルは継続、テクニカルの地合い崩れてない
〇ファンダメンタルズも9月米利下げをほぼ織り込み、介入効果も限定的
〇引き続き、ドル買い円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー160.00、(EURUSD):1.0750−1.1050

今週のレビュー(7/8−7/12)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初160.71で寄り付いた後、(1)本邦5月実質賃金(結果▲1.4%、前回▲1.2%)の前月比悪化(26カ月連続の実質賃金マイナス)や、(2)上記1を背景とした日銀による追加利上げ観測後退、(3)日経平均株価の史上最高値更新(リスク選好の円売り圧力)、(4)パウエルFRB議長による「インフレが持続的に2%に向かうという確信をさらに高めるまでは利下げは適切ではない」「利下げはまだ差し迫っていない」「将来的な政策変更について何のシグナルも出していない」との慎重な議会証言(ハト派寄りの見解を見込んでいたドルショート勢による買い戻しを誘発)、(5)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(6)米5月卸売売上高(結果+0.4%、予想+0.3%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週央にかけて、週間高値161.85まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)7/3に記録した約38年ぶり高値161.99を背にした戻り売り圧力や、(8)米6月消費者物価指数(結果+3.0%、予想+3.1%)の市場予想を下回る結果、(9)米6月コアCPI(結果+3.3%、予想+3.4%)の市場予想を下回る結果、(10)上記8、9を背景とした米FRBによる早期利下げ観測再燃(米長期金利急低下→米ドル急落)、(11)政府・日銀による為替介入観測(米CPI後に円売り圧力が弱まったタイミングで不意打ち的な為替介入を実施したとの思惑浮上)、(12)短期筋の大規模ロスカット(ドル円ロングの大量清算)が重石となり、週末にかけて、週間安値157.38まで急落しました。

引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/13午前5時00分現在)では、157.80前後で推移しております。尚、週末に発表された米6月生産者物価指数(結果+2.6%、予想+2.3%)および、米6月コアPPI(結果+3.0%、予想+2.3%)は市場予想を上回る結果となりましたが、市場の反応は限られました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0809で寄り付いた後、(1)フランス国民議会選挙の結果が事前予想に反して左派連合が第1党となったことや、(2)上記1を背景にフランスの財政悪化懸念(左派連合の新人民戦線は財政拡大を主張)や政局不透明感が再燃したこと(いずれの勢力も過半数に届かないハングパーラメント顕在化→格付け会社ムーディーズはフランス国民議会総選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスであると警告)などが重石となり、早々に、週間安値1.0802まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)前週末金曜日以降のドル売りの流れの継続や、(4)欧州株の堅調推移(リスク選好のユーロ買い圧力)、(5)イタリア5月鉱工業生産(結果+0.5%、予想±0.0%)の市場予想を上回る結果、(6)米CPIおよび米コアCPIの市場予想を下回る結果、(7)上記6を背景とした米FRBによる早期利下げ観測再燃(米金利低下に伴うドル売り圧力)が支えとなり、週末にかけて、週間高値1.0912まで上昇しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間7/13午前5時00分現在)では、1.0905前後で推移しております。

来週の見通し(7/15−7/19)

<ドル円相場>
ドル円は高値圏から暴落する荒々しい値動き(161.85→157.38)となりましたが、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続しているため、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(上昇→下落へのトレンド転換は生じていない→一巡後に持ち直す可能性が高い)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)9月FOMCでの利下げ開始がほぼ織り込み済みとなったこと(CMEが提供するFed Watch Toolによると、9月利下げの織り込み度合は89.1%へ急上昇→既に織り込み済みのためここから更にドルを売り込む材料にはなり得ない)や、(2)日銀による金融緩和の長期化期待(直近で発表された本邦1ー3月期実質GDP確報値が大幅に下方修正された他、本邦5月毎月勤労統計調査も前月を下回る冴えない結果→日銀による追加利上げ観測後退)、

(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの継続期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方が市場コンセンサス)、(4)トランプトレードの活発化期待(財政悪化→インフレ上昇の思惑から、米金利上昇→米ドル買いを誘発)、(5)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(6)政府・日銀による介入効果の乏しさ(今週は7/11、7/12に連続で不意打ち的な為替介入観測が浮上→仮に本当に為替介入に踏み切っていたとすれば、ドル円の下げ幅は僅か3ー4円程度と限定的。イエレン米財務長官による牽制姿勢や、外国為替報告書における日本の監視リスト追加を考慮すれば、ここから更に介入を立て続けに行うことは容易ではない)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

来週予定されている米経済指標(米7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米6月小売売上高、米6月住宅着工件数、米6月鉱工業生産、米7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数など)が市場予想を上回る場合には、米利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買いの経路で、ドル円に再び強い上昇圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(ドル円の下値余地は限定的→一巡後の急反発リスクに要警戒)。

来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー160.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は6/26に記録した約2ヵ月ぶり安値1.0666をボトムに切り返すと、今週末にかけて、約1カ月ぶり高値となる1.0912まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要レジスタンスポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み突破した他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。6/4に記録した高値1.0917を上抜けできれば、「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するため、下落→上昇へのトレンド転換も期待できます。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)フランスを巡る政局不透明感(ハングパーラメントが顕在化する中、格付け会社ムーディーズはフランス国民議会総選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスであると警告)、(3)欧米金利差も着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力、(4)欧州域内の財政悪化リスク(欧州委員会は先月6/19に、フランス、イタリア、ベルギー、スロバキア、マルタ、ポーランド、ハンガリーの7カ国に対し、「過剰財政赤字手続き(EDP)」開始を勧告→構造改革案を9/20までに示す必要性あり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の下落をメインシナリオとして予想いたします。但し、短期的な視点(向こう1−2週間)で見れば、米FRBによる早期利下げ観測再燃に伴う米金利低下の影響と、フランス選挙通過に伴うあく抜け感、テクニカル的な地合いの強さが組み合わさることで、ユーロドルに上昇圧力が加わり易い時間帯が続きそうです(6/4に記録した直近高値1.0917を突破する可能性が高い)。尚、来週7/18に予定されているECB理事会については、前回会合以降に得られた経済データやECB当局者発言に特筆すべき点が無かったことから、無風通過(現行政策の現状維持に加えて、利下げ時期に関する言及もなし)となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1050

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は高値圏から急落するも下値余地は限定的か。一巡後の反発に期待』

ドル円日足

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