来週の為替相場見通し:『約38年ぶり高値圏から反落するも下値は堅い。来週は米CPIに注目』(7/6朝)

ドル円は週央にかけて161.99(約38年ぶり高値圏)まで上昇するも、週末にかけては一転、160.34まで反落する動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『約38年ぶり高値圏から反落するも下値は堅い。来週は米CPIに注目』(7/6朝)

『約38年ぶり高値圏から反落するも下値は堅い。来週は米CPIに注目』

〇今週のドル円、介入警戒感後退、米5月JOLTS雇用動態調査の好調等に週央にかけ161.99まで上昇
〇週末にかけては、FRB議長のハト派発言、米指標の不冴え等に160.34まで反落後160円台後半で越週
〇ユーロドル、ECB関係者のハト派発言に週初1.0709まで下落
〇売り一巡後は、欧州株の堅調、米金利急低下等に1.08台前半に戻して越週
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイントの上で推移、買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇日米金融政策の違い、介入警戒感の後退、米大統領選のトランプ優勢報道等がドル円をサポート
〇今週は米6月消費者物価指数に注目集まる
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):158.50ー162.50、(EURUSD):1.0550−1.0950

今週のレビュー(7/1−7/5)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初160.88で寄り付いた後、(1)日米金利差に着目した円キャリートレードの継続や、(2)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(3)政府・日銀による介入警戒感の後退(ドル円が161円台を突破しているにも係わらず為替介入が実施されなかったことに対する安堵感)、(4)先週末金曜日高値161.28突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(5)ロンドンフィキシングに絡むドル買い圧力、(6)米5月JOLTS雇用動態調査(結果814.0万件、予想791.0)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週央にかけて、週間高値161.99(約38年ぶり高値圏)まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(8)政府・日銀による為替介入警戒感(神田財務官は「最近の為替の動きは投機的な動きの兆候を示している」と発言)、(9)パウエルFRB議長による「物価はディスインフレ傾向の再開を示唆」とのハト派的な発言、(10)米新規失業保険申請件数(結果23.8万件、予想23.5万件)の冴えない結果、(11)米6月ISM非製造業景況指数(結果48.8、予想52.7)の市場予想を下回る結果、(12)米5月製造業受注指数(結果▲0.5%、予想+0.2)の市場予想を下回る結果、(13)米6月雇用統計における非農業部門雇用者数の前月分と前々月分の下方修正、(14)米6月失業率(結果4.1%、予想4.0%)の冴えない結果、(15)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値160.34まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/6午前4時00分現在)では、160.72前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0728で寄り付いた後、(1)ドイツ6月消費者物価指数速報値(結果+2.2%、予想+2.3%)の市場予想を下回る結果や、(2)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「大きなマイナスサプライズがない限り二回目の利下げ余地がある」とのハト派的な発言、(3)ポルトガル中銀センテノ総裁による「インフレ率が2025年に2%になることに対して自信がある」とのハト派的な発言、(4)スロベニア中銀バスレ総裁による「予想通り進むなら追加利下げの可能性」とのハト派的な発言が重石となり、翌7/2にかけて、週間安値1.0709まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)欧州株の堅調推移(与党と左派が極右警戒姿勢で一致団結→RNへの対立候補を一本化→フランス政治を巡る過度な警戒感後退→フランス国債のリスクプレミアム低下→欧州株反発)や、(6)ユーロ圏6月総合PMI(結果50.9、予想50.8)の市場予想を上回る結果、(7)パウエルFRB議長による「物価はディスインフレ傾向の再開を示すようになった」とのハト派的な発言、(8)米経済指標(米6月ADP全米雇用報告、米新規失業保険申請件数、米6月ISM非製造業景況指数、米5月製造業受注指数、米6月雇用統計)の冴えない結果、(9)上記7、8を背景とした米長期金利の急低下、(10)ECB理事会議事要旨における「一部メンバーがインフレの根強さに警戒感を持っている」とのタカ派的な見解発表、(11)ラガルドECB総裁による「インフレには引き続き警戒が必要」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0842(6/12以来の高値圏)まで急伸しました。

引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間7/6午前4時00分現在)では、1.0837前後で推移しております。

来週の見通し(7/8−7/12)

<ドル円相場>
ドル円は週央にかけて161.99(約38年ぶり高値圏)まで上昇するも、週末にかけては一転、160.34まで反落する動きとなりました。但し、日足ローソク足が依然として主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していること(全てのトレンドラインが右肩上がりの形状を維持していること)や、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます(週末にかけての下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週発表された米経済指標が冴えない結果を示したことで、年内2回の利下げ観測が浮上しているが、米大統領選年という特殊要因に鑑みれば、今年の利下げ回数は多くても1回に留まる公算大)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(国債買い入れ減額と追加利上げが同時決定される可能性は低い)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル買い・円売りに安心感)、(4)政府・日銀による為替介入警戒感の後退(イエレン米財務長官による複数回にわたる牽制発言や、米財務省による日本の「監視リスト」追加の影響で、政府・日銀は為替介入に踏み切りづらい)、(5)米大統領選におけるトランプ氏優勢報道(トランプ氏再選ならインフレ加速との見方から市場はドル買いで反応しやすい)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は上記1を見極める目的で、7/11に予定されている米6月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を下回る場合には、最近の冴えない米経済指標と相俟って、米金利低下→米ドル売りの流れが一時的に強まる恐れがあるものの、円の先安観は依然として根強いことから(ドル円のみならず、クロス円の上昇圧力も根強いことから)、下がったところでは怒涛の押し目買いに下支えされる形で、すぐに持ち直すシナリオが想定されます。一方、市場予想を上回る場合には、米FRBによる利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買いの経路で再び心理的節目162.00を試す動きとなりそうです。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米CPI以外にも、パウエルFRB議長による半期に一度の議会証言や、米6月生産者物価指数、米7月ミシガン大学消費者信頼感指数、米当局者発言(バーFRB副議長、ボウマンFRB理事、シカゴ連銀グールズビー総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、セントルイス連銀ムサレム総裁)にも注目が集まります。

来週の予想レンジ(USDJPY):158.50ー162.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は6/26に記録した約2ヵ月ぶり安値1.0666をボトムに切り返すと、今週末にかけて、約3週間ぶり高値1.0842まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力)、(3)欧州域内の財政悪化リスク(欧州委員会は6/19に、フランス、イタリア、ベルギー、スロバキア、マルタ、ポーランド、ハンガリーの7カ国に対して過剰財政赤字手続きの開始を勧告)、(4)フランス政治を巡る先行き不透明感など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

特に上記4(フランスを巡る政局不透明感)については、今週末7/7に予定されている第2回投票の結果次第(世論調査ではRNは第一党となりつつも単独過半数獲得には至らないとの見方が主流であるが、予想外にRNが善戦する場合はフランスを巡る政局不透明感が再燃する可能性あり。また、大統領は中道、首相は極右というコアビタシオンが生じる点も今後の懸念要因)で再燃する恐れがあるため、週明け早々のギャップダウン(出口調査は日本時間7/8午前3時頃)に警戒が必要でしょう。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0550−1.0950

注:ポイント要約は編集部

『約38年ぶり高値圏から反落するも下値は堅い。来週は米CPIに注目』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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