ドル円見通し 160円台を維持して6月27日朝高値に再び迫る(週報7月第一週)

ドル円が160円台に到達した段階でも市場介入がなく、4月29日高値を超えても介入は見られず、日本政府・財務省は円安けん制発言にとどまっている。

ドル円見通し 160円台を維持して6月27日朝高値に再び迫る(週報7月第一週)

160円台を維持して6月27日朝高値に再び迫る

〇先週のドル円、26日夕刻からの上昇で4/29高値160.16を超え、28日午前に高値161.26へ一段高
〇28日夜の米PCEデフレーター鈍化により160.24まで下げたものの、29日未明に160.86へ切り返す
〇160円台でも市場介入なく、日本政府が介入に踏み込めなくなっているのではないかとの見方も
〇今週は週末米雇用統計へ向け指標の発表相次ぐが、2円を超える急激な円安等でなければ介入しづらいか
〇米5月PCEデフレーターは+2.6%、順調に鈍化するもまだFRB目標2%を大きく超える
〇米長期債、シカゴ購買部景況指数、ミシガン大消費者信頼感の回復大統領選のトランプ優勢等に大幅上昇
〇160.50から160.24にかけての水準は押し目買い有利とし、161.26超えからは162円前後への上昇想定
〇160.24割れからはいったん下げに入るとみて160.00、159.80、159.60を順次試す下落を想定

【概況】

ドル円は6月26日夕刻からの上昇で4月29日高値160.16円を超え27日朝に160.86円を付けて1986年12月以来凡そ37年半振り高値水準に達したが、市場介入を警戒しつつ26日夜に160.26円までやや下げたところから28日午前高値161.26円へ一段高した。161円台到達でいったん利益確定売りに圧され、28日夜の米5月PCEデフレーターが前月より鈍化したことによるドル安反応で160.24円まで下げたものの、米シカゴPMIやミシガン大消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことによるドル高のぶり返しで29日未明に160.86円へ切り返し、29日早朝にかけて160.60円以上を維持して確りした。
米大統領選挙を巡るトランプ・バイデンTV討論でのバイデン不調による先行き不透明感もあり、米長期債利回りはPCE統計発表後にいったん低下したものの早々に再上昇して前日比プラスとなったこともドル円を押し上げた。

【円安防衛ラインを探る円安続く】

ドル円が160円台に到達した段階でも市場介入がなく、今年最初の市場介入があった4月29日高値を超えても介入は見られず、日本政府・財務省は円安けん制発言にとどまっている。6月20日の米財務省による半期為替報告書で日本が監視対象国に再指定され、「市場介入はまれなもの」とされたことで市場介入に踏み込めなくなっているのではないかとの見方や、介入だけでは日本経済の弱さと利上げしても低金利状態に変わりないことによる歴史的な円安を止められないとの声も日増しに強まるところだ。
4月29日に160円台到達で一度目の介入があり、5月2日早朝に一段下がったところで二度目の介入を行った時はいつでも大規模な市場介入ができるとの姿勢を示した時のかなり強い姿勢は財務省及び市場介入の現場責任者である神田財務官の発言等からは感じられない印象もある。

2022年の市場介入では、9月22日の介入で当日高値145.89円から当日安値140.36円へ5.53円の急落幅となったものの当日から切り返され、3連休を挟んだ10月21日と10月24日の連日介入では10月21日高値151.94円から10月24日安値145.50円へ5.44円の急落幅となり10月27日に145.11円まで安値を切り下げたものの10月31日には148.84円までいったん切り返されている。2023年1月にかけてドル円が大幅下落したのは市場介入効果というよりも11月10日に米CPIが予想以上に大幅鈍化したことによる「逆CPIショック」と2023年4月任期満了へ向けた黒田前総裁による金融政策修正の動きが原因であり、結果的に市場介入時の高値が当面の天井となったものの介入だけでは決め手にはならなかったというのが教訓だ。
今週は週末の米雇用統計へ向けて重要指標の発表も相次ぐため、米FRBによる9月利下げと年内2回利下げが濃厚となればドル安円高へ風向きが変わる可能性があるが、為替報告書で市場介入姿勢に釘を刺されていることを踏まえれば、1日で2円を超える急激な円安等でなければ米重要指標発表をきっかけとした円安に対しては介入を仕掛けづらいだろうと思われる。

【米PCEデフレーターは順調に鈍化するもまだFRB目標の2%を大きく超えている】

6月28日に米商務省が発表した5月のPCE(個人消費支出)デフレーター上昇率は全体の前年同月比が市場予想通りの2.6%となり4月の2.7%から鈍化し、コアPCEデフレーターの上昇率は前月比0.1%で予想と一致して4月の0.3%から鈍化し、前年同月比は2.6%で予想と一致して4月の2.8%から鈍化した。
コアPCEデフレーターの前年同月比は2022年2月の5.58%をピークとして低下傾向に入り今年2月に2.8%まで鈍化してから横ばいだったものの5月に2.6%へさらに鈍化したことでインフレ鎮静化への印象を強め、米FRBの9月利下げ判断に寄与するものと市場は受け止めて発表後は米長期債利回りが低下してドル高反応を見せたが一時的なものに留まった。

米MNIインディケーターズによる6月のシカゴ購買部景況指数は47.4となり市場予想の40.0を上回り5月の35.4から改善して2023年11月以来7カ月ぶり高水準となった。米ミシガン大による6月消費者信頼感指数確報値は68.2となり速報の65.6から改善して市場予想の65.8を上回った。5月確報値の69.1は下回ったものの、これらは米経済の堅調さを示すものとしてPCE統計発表後のドル安反応に水を差して米長期債利回り再上昇のきっかけとなった。

【米長期債利回りは大幅上昇】

6月28日の米長期債利回りは総じて大幅上昇した。米PCE統計発表後にいったん低下したものの、その後の米経済指標が強かったことに加え、米大統領選におけるトランプ・バイデンTV討論会でのトランプ優勢感が債券売り・利回り上昇を助長したとみられている。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.11%上昇の4.40%となり、6月14日に付けたこの間の最低である4.19%以降の高値を更新して再上昇感を強め、週間では6月21日の4.26%から0.14%上昇した。30年債利回りは前日比0.13%上昇の4.56%となり6月14日の4.33%以降の高値を更新し、週間では6月21日の4.40%から0.16%上昇した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.76%で終了したが、一時4.66%まで低下して6月14日に付けたこの間の最低に並んだところから反騰し、週間では6月21日の4.73%から0.03%上昇した。

一方でNYダウは米長期債利回り上昇やTV討論でのトランプ氏優勢との見方から売られて前日比45.20ドル安と3日ぶりの反落となり、ナスダック総合指数も4日ぶりの反落に終わった。
トランプ前大統領は関税引き上げを掲げており当選すればインフレ助長要因となると市場は見ているようだ。

【二重の三段上げと当面のポイント】

【二重の三段上げと当面のポイント】

ドル円の日足は6月20日終値158.92円で4月26日終値158.29円を超えたことで終値ベースで昨年末以降の高値を更新して4月26日以降の三角持ち合いから上放れしたが、4月29日高値160.16円も超えたことで昨年12月28日安値140.24円を起点とした上昇が2月13日高値までを一段目、4月29日高値までを二段目とし、5月3日安値を起点として三段目に入った。この三段上げの規模は2023年の1月底から10月天井までの三段上げに近い規模に発展している。
より細かく見れば、5月3日安値からの上昇は5月14日高値までを一段目、5月30日高値までを二段目とし、6月4日安値を起点として三段目に入り二重構造での三段上げとなっている。
1986年12月(高値163.36円)以来の高値水準に達しているものの過去の月足において上値抵抗線とすべき主要なピークは1985年2月高値263.84円まで見当たらなくなっている。1ドル200円時代到来かというような言説もあるが、相場というのは過去の高値を意識してそれに挑戦してゆくものでもあり、日足や週足に目安となる過去の高値がなければ月足に立ち返り、まだ暫くは遠い水準であったとしても深層心理的に意識してしまうものだ。

当面、2023年12月28日安値を起点とした三段上げ構造を踏まえ、一段目の上昇幅10.64円と二段目の上昇幅13.70円により三段目の上昇が一段目と同規模なら162.49円、二段目と同規模なら165.55円、4月29日高値から5月3日への下げ幅の倍返しなら168.47円等の上値目途は現実味のある水準と考えておきたい。また5月3日以降の上昇途中では3円を超える規模の反落を入れながら上昇しているため、市場介入がなくても警戒感と売り注文連鎖により直前高値から3円を超える規模の下落がいつ入っても不思議なく、介入なく市場環境が劇的に変化しなければそのような規模の下落はバーゲンハントされやすいと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月28日夜安値160.24円を下値支持線、6月28日午前高値161.26円を上値抵抗線とする。
(2)160.50台から160.24円にかけての水準は押し目買い有利とし、161.26円超えからは162円前後への上昇を想定する。週末にかけて米経済指標を強気で通過する場合は163円台へ上値目途を引き上げる。
(3)160.24円割れからはいったん下げに入るとみて160.00円、159.80円、159.60円を順次試す下落を想定する。159.60円以下は買われやすいとみるが、160円を下回っての推移が続く場合はやや大きめの下落期に入っている可能性もあると注意する。市場介入の場合は直前高値から3円前後規模の下落を想定するが、その後の反騰にも注意したい。

【当面の予定】

7/1(月)
休場 香港、カナダ
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (1-3月 11、予想 11)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・四半期大企業製造業先行き (1-3月 10、予想 11)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・四半期大企業非製造業業況判断 (1-3月 34、予想 33)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・四半期大企業非製造業先行き (1-3月 27、予想 28)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・四半期大企業全産業設備投資 前年度比 (1-3月 4.0%、予想 13.9%)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.1%、予想 0.3%)
10:45 (中) 6月 財新 製造業PMI (5月 51.7、予想 51.5)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 36.2、予想 36.3)
16:55 (独) 6月 HOCB 製造業PMI・改定値 (速報 43.4、予想 43.4)
17:00 (欧) 6月 HOCB 製造業PMI・改定値 (速報 45.6、予想 45.6)
17:30 (英) 6月 S&P 製造業PMI・改定値 (速報 51.4)

21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (5月 0.1%、予想 0.2%)
21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 2.4%、予想 2.3%)
22:45 (米) 6月 S&P 製造業PMI・改定値 (速報 51.7)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 48.7、予想 49.0)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 -0.1%、予想 0.3%)
28:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演

7/2(火)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -1.9%)
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 0.9%)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
18:00 (欧) 6月 HICP(調和消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 2.6%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 6月 コアHICP・速報値 前年同月比 (5月 2.9%、予想 2.8%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 6.4%、予想 6.5%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁とパネル討論会
23:00 (米) 5月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (4月 805.9万件)

7/3(水)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -0.3%、予想 2.0%)
10:45 (中) 6月 財新 サービス業PMI (5月 54.0)
16:55 (独) 6月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.5、予想 53.5)
17:00 (欧) 6月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 52.6、予想 52.6)
17:30 (英) 6月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 51.2、予想 51.2)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 -1.0%)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 -5.7%)

20:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、パネル討論会
21:15 (米) 6月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (5月 15.2万人、予想 16.0万人)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -746億ドル、予想 -712億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.9万人)
22:45 (米) 6月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 55.1)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 0.7%、予想 0.4%)
23:00 (米) 6月 ISM非製造業景況指数 (5月53.8、予想 52.0)
23:15 (欧) ラガルドECB総裁、ECBフォーラム閉会挨拶
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月12-13日分)

7/4(木)
英国総選挙、休場 米国
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 65.48億豪ドル、予想 66.50億豪ドル)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -0.2%、予想 1.0%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -1.6%、予想 -5.3%)
20:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨

7/5(金)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 0.5%、予想 0.2%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・速報値 (4月 110.9)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・速報値 (4月 115.2)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.1%、予想 0.3%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -3.9%、予想 -4.2%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -0.5%、予想 0.5%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 0.0%、予想 0.6%)
18:40 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
21:30 (米) 6月 非農業部門雇用者数 前月比 (5月 27.2万人、予想 18.5万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 4.0%、予想 4.0%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 4.1%)
26:15 (欧) ラガルドECB総裁、講演

7/7(日)
東京都知事選挙、フランス下院選挙第2回投票


注:ポイント要約は編集部

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