『日米金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開』
〇今週のドル円、米5月CPIの不冴えに週央にかけ155.72まで下落
〇売り一巡後はFOMCのタカ派的結果と日銀政策決定会合のハト派的結果に週末にかけ158.27まで急伸
〇買い一巡後は植田日銀総裁のタカ派的発言、米指標不冴えに157円台前半に反落
〇ユーロドル、仏政局不安、ECB関係者のハト派発言等に週前半1.0719まで下落
〇売り一巡後はCPI発表後の米金利低下等に1.0852まで急伸
〇FOMC後は欧州指標不冴え、欧州株下落等で1.0667まで急落
〇ドル円、テクニカルの地合い極めて強く、日米金利差縮小観測後退がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー159.00、(EURUSD):1.0550−1.0850
今週のレビュー(6/10−6/14)
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初156.74で寄り付いた後、(1)米5月消費者物価指数(結果+3.3%、予想+3.4%)の市場予想下回る結果や、(2)米5月コアCPI(結果+3.4%、予想+3.5%)の市場予想を下回る結果、(3)上記1、2を背景とした米長期金利の急低下(米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測)が重石となり、週央にかけて、週間安値155.72まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)米FOMCのタカ派的な結果(米FOMCは予想通り政策金利の据え置きを決定するも、同時に発表されたドットチャートで2024年末時点の中央値を4.6%から5.1%へ上方修正)や、(5)パウエルFRB議長による「インフレは大幅に緩和したが依然として高すぎる」「インフレリスクを引き続き大いに注視している」とのタカ派的な発言、(6)上記4、5を背景とした米長期金利の低下幅縮小(米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測)、(7)日銀金融政策決定会合のハト派的な結果(日銀は政策金利の据え置きを決定すると共に、国債買い入れ減額に関する具体的なプランについても次回7月の会合に持ち越し→市場はハト派的と解釈して円が急落)、(8)上記7を背景とした本邦10年債利回りの急低下、(9)日米金利差に着目したドル買い・円売りが支援材料となり、週末にかけて、週間高値158.27まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(10)植田日銀総裁による「国債買い入れ減額は相応の規模になる」「データ次第では7月利上げの可能性がある」とのタカ派的な発言や、(11)米6月ミシガン大学消費者信頼感指数(結果65.6、予想72.0)の冴えない結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/15午前5時35分現在)では、157.40前後まで反落する動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0797で寄り付いた後、(1)欧州を巡る政局不透明感の高まり(6/10に公表された世論調査はマリーヌ・ルペン氏率いる極右政党「国民連合」の勝利を予想→マクロン仏大統領は下院議会を解散し総選挙を実施すると発表→ムーディーズはフランスの解散総選挙は財政再建に対するリスクを高めるとして同国信用格付けにマイナスに働くとの見解を表明)や、(2)上記1を背景としたリスク回避ムード(フランス株急落→ユーロ急落)、(3)リトアニア中銀シムカス総裁による「インフレ目標達成が確実ならば追加利下げの余地がある」とのハト派的な発言、(4)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「金融引き締め状態から脱却する前に政策金利をさらに大幅に引き下げる余地が十分にある」とのハト派的な発言が重石となり、翌6/11にかけて、一時1.0719まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)米5月消費者物価指数の市場予想を下回る結果や、(6)米5月コアCPIの市場予想を下回る結果、(7)上記5、6を背景とした米長期金利の急低下が支えとなり、週央にかけて、週間高値1.0852まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(8)米FOMCのタカ派的な結果や、(9)パウエルFRB議長のタカ派的な発言、(10)ラトビア中銀カザークス総裁による「年内追加利下げの可能性は残されている」「ECBは段階的に利下げを行うべき」とのハト派的な発言、(11)スロベニア中銀バスレ総裁による「現在の経済見通しが的中すれば今年さらなる利下げを行う可能性が高い」とのハト派的な発言、(12)ユーロ圏4月鉱工業生産(結果▲3.0%、予想▲2.0%)の市場予想を下回る結果、(13)ユーロ圏を巡る政治的混乱、(14)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(15)欧州株の大幅下落が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0667(5/1以来の安値圏)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/15午前5時35分現在)では、1.0705前後で推移しております。
来週の見通し(6/17−6/21)
<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は日米金融政策イベント通過後に158.27(4/29以来の高値圏)まで急伸するなど、力強い動きが続いています。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週開催された米FOMCは予想以上にタカ派的な内容。ドットチャートは前回3月時点の年3回の利下げ示唆から年1回の利下げ示唆へと上方修正。状況次第では年内利下げ見送りの可能性も視野に)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(今週開催された日銀金融政策決定会合は予想以上にハト派的な内容。政策金利が据え置かれただけではなく、国債買い入れについても具体的な計画を次回会合へ持ち越し。植田日銀総裁は7月会合での追加利上げ決定もあり得るとしているが、現実的に見れば、国債買い入れ減額と追加利上げを同時に決定する可能性は乏しい)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル円ロングに安心感)、(4)日本政府・日銀による為替介入のやりづらさ(イエレン米財務長官が日本の為替介入を複数回に亘り牽制しているため、ドル円が直近高値160.24に迫ったとしても為替介入には踏み切りづらい)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は上記1を見極める目的で6/18に予定されている米5月小売売上高に注目が集まる他、上記2を見極める目的で6/21に発表される本邦の5月CPIに注目が集まります。米5月小売売上高が市場予想を上回る場合や、本邦5月CPIが市場予想を下回る場合には、日米金利差拡大が改めて意識されることから、ドル円にもう一段強い上昇圧力が加わる展開が想定されます。日米金融政策イベント通過に伴うあく抜け感や、欧州政治不安に端を発した対ユーロでのドル買い圧力も支えになると見られることから、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):156.00ー159.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は6/4に記録した高値1.0916をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時1.0667(5/1以来の安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週発表された米FOMCはタカ派的な内容)や、(2)ECBによる根強い追加利下げ観測(ECBは先週開催された理事会で25bpの利下げを決定。複数のECB当局者から年内追加利下げの可能性を示唆する発言あり)、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差に着目したユーロ売り・ドル買い)、(4)欧州の政局不透明感(フランスを中心に欧州圏の政治不安が台頭。リスク回避ムードが高まる中、欧州株急落・欧州債利回り低下・ユーロ急落の波及経路。6/30に実施されるフランス下院選挙までこうした不安定な値動きが続く公算大)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(目先は4/16に記録した直近安値1.0601を試すシナリオを想定)。尚、来週は6/18に予定されているドイツ6月ZEW景況感調査や、6/20のユーロ圏6月消費者信頼感指数、6/21のユーロ圏6月PMI速報値などに注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0550−1.0850
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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