ドル円見通し 米CPI鈍化による急落からFOMCタカ派で反騰する乱高下(24/6/13)

ドル円は、CPI後の急落幅解消には至らずにいるものの156.50円以上を維持している。

ドル円見通し 米CPI鈍化による急落からFOMCタカ派で反騰する乱高下(24/6/13)

米CPI鈍化による急落からFOMCタカ派で反騰する乱高下

〇ドル円、米5月CPI鈍化による米長期債利回り急低下で157.30台から155.68へ急落
〇FOMC金利据置き(5.25〜5.50%)による米長期債利回り反騰を見て、本日早朝156.89へ反騰
〇米CPI鈍化するもFOMCは年内1回利下げ想定に後退
〇156円台中盤で足場を固め、6/11高値157.39を超えてくれば上昇継続感優勢か
〇日銀会合での国債買入れ減額で円高反応招く可能性も、会合通過前は慎重な動きに留まりそう
〇米長期債利回りは急低下から反発するも前日比マイナス、ナスダック・S&P500は連日最高値更新
〇156.50を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は157円試しとする
〇156.25割れからは戻り一巡による下落再開とみて156円から155.68の間への下落を想定

【概況】

ドル円は6月12日夜の米5月CPI上昇率が予想以上に鈍化したことによる米長期債利回り急低下を見て発表直前の157.30円台から23時台安値155.68円へ急落したが、13日3時の米FOMCが予想通りに政策金利を据え置いた上でメンバーによる年内利下げ想定回数を3月時点の3回から1回へ減らしたことによる米長期債利回りの反騰を見て13日早朝に156.89円へ反騰した。CPI後の急落幅解消には至らずにいるものの156.50円以上を維持している。

ドル円は6月4日深夜安値154.54円から反騰入りし、156.50円手前を壁として6月7日夕刻に155.11円までいったん反落したものの6月7日夜の米雇用統計が予想を上回る強さだったことで157円到達へ急伸し、11日夕刻に157.39円まで高値を伸ばしていたが、5月30日未明に付けた5月3日以降の最高値157.70円には届かなかった。6月12日夜の急落では7日夕安値割れを回避して底上げをした状況から急落幅の過半を解消しているので、156円台中盤で足場を固めて6月11日高値157.39円を超えてくれば上昇継続感が優勢となるのではないかと思われるが、14日の日銀金融政策会合で国債買い入れが減額されて円高反応を招くことも警戒されるため、日銀会合通過前は慎重な動きに留まるのではないかと思われる。

【米CPI鈍化するもFOMCは年内1回利下げ想定に後退】

6月12日夜に米労働省が発表した5月CPI(消費者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.0%で4月の0.3%から鈍化して市場予想の0.1%を下回り、前年同月比は3.3%で4月の3.4%から鈍化して市場予想の3.4%を下回った。前年同月比の鈍化は2か月連続、前月比の0.0%は2022年7月以来の低水準だった。コア指数の上昇率も前月比0.2%となり4月の0.3%から鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は3.4%で4月の3.6%及び市場予想の3.5%を下回った。

FRB(米連邦準備制度理事会)はFOMC(連邦公開市場委員会)で市場予想通りに7会合連続の政策金利据え置き(5.25〜5.50%)を決定したが、参加者による年内の利下げ想定回数を下方修正した。
FRB声明はインフレ鈍化について前回会合での「進展がなかった」から「ここ数カ月で小幅な進展があった」としたが、「インフレが持続的に2%へ向かうより大きな確信を得るまで利下げは適切と考えていない」とした。
パウエルFRB議長は会見において「金融政策は景気抑制的」であり「政策の効果が表れるのを忍耐強く待つ」とし、「現時点では金融緩和開始を妥当とする確信には至っていない」、「インフレが持続するなら妥当な限り金利を現行水準で維持する用意がある」としたが、労働市場が予想外に悪化するかインフレが想定より速やかに低下する場合には利下げで対応するとした。またインフレ再燃の場合には「追加利上げの可能性を排除しない」としつつ、「FOMC参加者は誰も利上げを基本シナリオとしてない」とした。

参加者による2024年末の政策金利予想では、現状のまま据え置きで利下げ無しとするのが4人(3月時点では2人)。1回利下げが7人(同2人)、2回利下げが8人(同5人)で3月時点の中央値であった3回利下げはゼロ(同9人)となった。1回以下が11人で今回の予想中央値とされたが、2回利下げも8人いるため、今後のインフレ鈍化によっては9月と12月の2回利下げとなる可能性を残したと思われる。

【米長期債利回りは急低下から反発したがマイナス圏、ナスダックとS&P500は連日の最高値更新】

6月12日の米長期債利回りは米5月CPI鈍化から急低下してFOMC後に反騰したが直前の急低下を解消せずに総じて前日比マイナスで終了した。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.25%へ急低下してから4.32%まで戻し前日比は0.09%低下だった。30年債利回りは一時4.42%まで急低下してから4.48%へ戻して前日比は0.06%低下だった。2年債利回りは一時4.67%まで急低下してから4.75%へ戻して前日比は0.09%低下だった。
年内少なくとも1回、インフレ鈍化が続けば2回の利下げもあり得るとの見方と5月CPI鈍化を踏まえて前日からの連続低下に終わったようだ。米金利先物市場における9月利下げ期待度はCPI発表後に7割へ上昇してから63%前後へ低下したがまだ5割を超えている。

一方で6月12日の米株式市場はダウが続落する一方でナスダックが最高値を更新して明暗が分かれている。NYダウは前日比35.21ドル安と下落して11日の120.62ドル安から続落したが、ナスダック総合指数は前日比264.89ポイント高と上昇して6月10日から3日連続で終値ベースの史上最高値更新となり17725.39まで取引時間中の最高値を大幅に伸ばした。S&P500指数も45.71ポイント高で3連騰として取引時間中及び終値の史上最高値を更新している。少なくとも年内1回の利下げがあり2回の利下げ可能性もあることをナスダックやS&P500は楽観し、ダウは5月までの大上昇に対する高値警戒感からやや消極的反応にとどまっているという印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は6月12日夜の急落から反騰したため、6月7日夕安値から3日を経過した12日夜安値で目先の底を付けて上昇期に入ったと思われる。高値形成期は6月11日夕高値を基準として14日午後から18日夕にかけての間と想定されるが戻り一巡後の反落で156.25円を割り込むところからは下落再開を疑って12日夜安値155.68円試しとし、底割れからは下落期入りとして17日夜から19日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月12日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンから転落した。12日早朝への反騰では両スパン揃っての好転に至らずにいるため、先行スパンを上抜き返せないうちは反騰一巡後の反落に注意し、156.25円割れからは下落再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜くところからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は6月12日夜の急落時に10ポイント台へ低下してから50ポイント超えへ戻しているので、40ポイント以上を維持するうちは上昇継続とみて60ポイント超えから70ポイント台への上昇を想定するが、40ポイント割れから続落する場合はもう一度10ポイント台を試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、156.25円を下値支持線、157.00円を上値抵抗線とする。
(2)156.50円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は157円試しとし、157円超えからは157.50円前後への上昇を想定する。157.50円以上は反落警戒とするが、156.50円を上回るか直前高値から0.70円を超える下落とならないうちは14日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)156.25円割れからは戻り一巡による下落再開とみて156円から12日深夜安値155.68円にかけての間への下落を想定する。156円前後は買い戻されやすいとみるが、156.25円を割り込んでの推移なら14日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
※13日夜の米PPI等による小波乱に注意し、14日昼前後の日銀会合結果次第では急伸も急落もあり得ると注意する。

【当面の予定】

6/13(木)
日銀金融政策決定会合初日
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 3.85万人、予想 3.00万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 4.1%、予想 4.0%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -1.0%、予想 -1.9%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 0.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.5%)
21:30 (米) 5月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 22.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.2万人、予想 179.8万人)
25:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イエレン財務長官、討論会
26:00 (米) 財務省30年債入札

6/14(金)
G7首脳会議(6/15迄)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
13:30 (日) 4月 第三次産業活動指数 前月比 (3月 -2.4%、予想 0.4%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (3月 -1.0%)
13:30 (日) 4月 設備稼働率 前月比 (3月 1.3%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 173億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 241億ユーロ )
18:00 (欧) レーンECB理事、講演
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.9%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 0.5%、予想 0.1%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (5月 69.1、予想 72.8)
26:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
27:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、談話会


注:ポイント要約は編集部

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