ドル円見通し 米景況感悪化による米長期債利回り大幅低下で一時156円割れ(24/6/4)

ドル円は6月3日夜の米サプライ管理協会(ISM)5月製造業景況指数が予想外に悪化して米長期債利回りが大幅低下したことによるドル売りで4日未明に155.95円へ下落した。

ドル円見通し 米景況感悪化による米長期債利回り大幅低下で一時156円割れ(24/6/4)

ドル円見通し 米景況感悪化による米長期債利回り大幅低下で一時156円割れ

○ドル円、6/3夜の経済指標の悪化、米長期債利回り大幅低下によるドル売りで、6/4未明155.95へ下落
○続落基調で推移するのか、米雇用統計をきっかけに上昇再開で三段目の上昇期に入るか、試される週
○米ISM製造業景況指数は予想外の悪化、不況感の分岐点である50を2か月連続で割り込む
○米長期債利回りは大幅続落、NYダウは反落、ナスダックは上昇
○156.40以下での推移中は一段安警戒とし、155.80割れからは155円台前半への下落を想定する
○156.40から156.65にかけての水準は戻り売り有利、156.65超えからは157円を試す上昇を想定する

【概況】

ドル円は6月3日夜の米サプライ管理協会(ISM)5月製造業景況指数が予想外に悪化して米長期債利回りが大幅低下したことによるドル売りで4日未明に155.95円へ下落した。目先の売り一巡でその後は下げ渋っているものの156円台序盤にとどまっている。
FRB高官らによる利下げ先延ばしやインフレ再燃の場合には利上げもあり得るとのタカ派姿勢が続いてきたことによる米長期債利回りの上昇を背景にドル円は5月30日未明に157.70円を付けて5月3日夜安値151.85円以降の高値とし、30日の株安や国内長期債利回り上昇による円高圧力で30日夜に156.37円までいったん下げたものの、5月31日の米PCEデフレーター発表後の乱高下を通過して円安基調は継続とみられて6月3日午前には157.47円まで持ち直していた。その後は米ISM製造業景況指数の発表を控えて157円を割り込んでいたが、同指数が予想以上に悪化したことで5月30日夜安値を割り込んで一段安となった。

5月3日夜安値からの上昇は5月16日安値153.60円を起点として二段目に入り5月2日早朝の二度目介入時高値157.58円も超えたが、6月3日午前への上昇では高値更新へ進めずに4日未明へ一段安したために5月16日からの底上げ基調から転落した。二段目の上昇がピークを付けて修正安に入った印象だが、今週末の米雇用統計へと続く米重要指標発表を通過しながら続落基調で推移するのか、米雇用統計をきっかけとして上昇を再開して三段目の上昇期に入るのか試される週となりそうだ。

【米ISM製造業景況指数は予想外の悪化】

6月3日に米サプライ管理協会(ISM)が発表した5月米製造業景況指数は48.7となり4月の49.2を下回り市場予想の49.6への改善に反して悪化した。3月の50.3をピークとして不況感の分岐点である50を2か月連続で割り込んだ。新規受注は4月の49.1から45.4へ、生産は51.3から50.2へ悪化したが、雇用は48.6から51.1へ上昇、価格は60.9から57.0へ低下した。
5月31日の5月シカゴ購買部景況指数が4月の37.9から35.4へ大幅に悪化したことや、5月のNY連銀及びフィラデルフィア連銀の景況指数も悪化したことなども含めて景況感の悪化が目立ってきている印象だ。
今夜は米4月JOLTS(雇用動態調査)求人件数、明日夜はADP民間雇用者数とISMサービス業景況指数と重要指標の発表が続く。

【米長期債利回りは大幅低下、NYダウは反落】

6月3日の米長期債利回りはISM製造業景況指数悪化により総じて大幅低下した。景況感の悪化が目立ったことはFRBにとっては利下げを先延ばしすることによる景気悪化リスクを意識させるものであり、今週の労働関連統計も悪化が目立つ場合には年内の適切なタイミングで利下げを決定すべきとの声も高まりやすい。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.11%低下の4.39%となった。4月25日に付けた昨年末以降の最高値である4.74%から5月16日に4.31%へ低下し、利下げ先延ばし感が強まったことで5月29日の4.64%まで切り返したものの、30日に前日比0.07%低下、31日も同0.05%低下し、6月3日も3営業日連続低下となった。
30年債利回りは先週末比0.11%低下の4.54%となり、30日の0.06%低下、31日の0.03%低下から3営業日連続低下した。2年債利回りも先週末比0.07%低下の4.81%となり、30日の0.05%低下、31日の0.05%低下から3営業日連続低下した。

一方でNYダウは5月31日に前日比574.84ドル高の大幅上昇となり今年最大の上げ幅としたものの、6月3日はISM景況指数の悪化とNY原油先物の大幅安によるエネルギー関連株安に圧迫されて先週末比115.29ドル安と反落した。ナスダック総合指数は5月28日に史上最高値を付けてから5月31日まで3営業日続落していたが、6月3日は米長期債利回り低下を好感して買い戻し優勢となり先週末比93.65ポイント高と上昇した。株式市場は利下げ期待と景気鈍化への懸念や史上最高値更新後の高値警戒感が交錯している印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は5月30日夜安値からの戻り一巡で一段安に入っており、6月3日午前高値を目先のピークとした下落期として4日夜から6日夜にかけての間への下落を想定する。156.65円超えからは強気転換注意とするが、156円台前半に留まるうちは一段安警戒とする。

60分足の一目均衡表では6月4日未明への急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜くところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月4日未明への急落で30ポイントを割り込み、その後も40ポイント以下での推移のためまだ一段安余地ありとみる。相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、50ポイント超えからは上昇再開とみて60ポイント台半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.80円を下値支持線、156.65円を上値抵抗線とする。
(2)156.40円以下での推移中は一段安警戒とし、155.80円割れからは155円台前半(155.50円から155.00円)への下落を想定する。今夜の米経済指標をきっかけに下げ足が速まる場合は155円割れを試す可能性もあるとみる。155.40円以下での推移か直前安値から0.70円を超える反騰がみられないうちは5日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)156.40円から156.65円にかけての水準は戻り売り有利とするが、156.65円超えからは強気転換注意として157円を試す上昇を想定する。

【当面の予定】

6/4(火)
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (10-12月 118億豪ドル、予想 51億豪ドル)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.9%、予想 5.9%)
23:00 (米) 4月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (3月 848.8万件、予想 835.5万件)
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 1.6%、予想 0.6%)

6/5(水)
08:30 (日) 4月 勤労統計・現金給与総額 前年同月比 (3月 0.6%、予想 1.8%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 0.2%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 1.5%、予想 1.2%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 52.5、予想 52.6)
16:55 (独) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.9、予想 53.9)
17:00 (欧) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
17:30 (英) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 52.9、予想 52.9)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -0.4%、予想 -0.6%)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 -7.8%、予想 -5.3%)

21:15 (米) 5月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 19.2万人、予想 17.5万人)
22:45 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 5.00%、予想 4.75%)
22:45 (米) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 54.8、予想 54.7)
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 49.4、予想 50.9)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計



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