ドル円週間見通し 市場介入を警戒しつつ米雇用統計へ向けて高値切り上げを試す

ドル円は5月31日夜には157.36円まで戻していたところから156.55円へいったん反落したが、リスク選好感で6月1日早朝には157.34円へ戻して31日夜の急落幅をほぼ解消した。

ドル円週間見通し 市場介入を警戒しつつ米雇用統計へ向けて高値切り上げを試す

市場介入を警戒しつつ米雇用統計へ向けて高値切り上げを試す

○先週のドル円、5/31夜に157.36まで戻した後に156.55へ反落、6/1早朝には157.34へ戻す
○目先のドル売り一巡感と、NYダウの大幅上昇によるリスク選好感がサポート
○5/31の米長期債利回りは総じて低下、前日比0.05%低下の4.50%で週を終了
○NYダウは年内利下げ開始期待への楽観を回復、前日比574.84ドル高と今年最大の大幅上昇
○157.58超えでも三度目の市場介入なく、次があるならば160円に迫るところとの見方が強まった印象
○158円超えてさらに続伸の場合は、二段目上昇としての上値目途となる158.50前後への上昇を想定
○156.37を割り込む場合は二段目上昇の一巡として156.00、155.50を順次試して行くとみる

【概況】

ドル円はFRB高官や地区連銀総裁らによる年内利下げ見送り姿勢やインフレ再燃なら利上げもあり得るとのタカ派的な発言が続いたことを背景とした米長期債利回り上昇による押し上げで5月30日未明に157.70円を付けて5月3日安値151.85円以降の高値を更新したが、国内10年債利回り上昇や市場介入への警戒感及びNYダウの大幅続落が日経平均の大幅安に飛び火したことにより157円を割り込み、米1-3月期GDP改定値の下方修正により156.37円まで下げた。
5月31日の日中はドル円の先高感の根強さで買い戻され、米4月PCEデフレーターが予想と一致したことやシカゴPMIが大幅に悪化したことによる米長期債利回り低下を見て31日夜には157.36円まで戻していたところから156.55円へいったん反落したものの、目先のドル売り一巡感とNYダウの大幅上昇によるリスク選好感で6月1日早朝には157.34円へ戻して31日夜の急落幅をほぼ解消した。

【米4月PCEは前年比で3月から横ばい】

5月31日に米商務省が発表した4月の米PCE(個人消費支出)デフレーターは全体の前年比が2.7%で市場予想と一致して3月と同水準にとどまり、コア指数の前年比も2.8%で予想と一致して3月と同水準だった。コア指数の前月比は0.2%で3月及び市場予想の0.3%を下回った。4月の個人消費支出は前月比0.2%で3月の0.7%から大幅に鈍化して市場予想の0.3%も下回った。

この後に発表された米MNIインディケーターズによるシカゴ購買部協会景況指数が35.4となり市場予想の41.0への改善見込みに反して4月の37.9から低下したことも米長期債利回り低下要因となった。
これらはインフレ再燃を強く意識させるものではなく個人消費や景況感に陰りがみられるものとしてFRBによるさらなる利下げ先延ばしには寄与しないとして金利先物市場の9月利下げ開始期待度が若干上昇して米長期債利回りは低下した。しかしFRBの目標とする2%には程遠く、PCEのサービス価格は依然として高水準であり早期利下げを迫る程のものではなかったといえる。

【米長期債利回りは総じて続落、NYダウは大幅高】

5月31日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の4.50%で週を終えた。4月25日に付けた昨年末以降の最高値である4.74%から5月16日に4.31%へ低下し、利下げ先延ばし感が強まったことで5月29日の4.64%まで切り返したものの、30日に前日比0.07%低下と失速して31日も続落した。まだ上昇一服による調整レベルだが、6月7日の米雇用統計へ向けて重要指標の発表が続く中で再上昇するのか低下基調に入るのか注目される。

30年債利回りは30日の0.06%低下から31日も0.03%低下して4.65%で終了し、2年債利回りも30日の0.05%低下から31日も0.05%低下して4.88%で終了した。

一方でNYダウは米長期債利回り低下を見て年内利下げ開始期待への楽観を回復して前日比574.84ドル高と今年最大の大幅上昇となった。ナスダック総合指数は2.06ポイント安に終わったが、米半導体大手エヌビディアの好決算により5月28日に17000ポイント台へ到達して史上最高値を更新したところで当面の買い材料一巡として29日の前日比99.30ポイント安、30日の183.50ポイント安からの続落となったが高水準を維持している。
ドル円にとっては米長期債利回り低下が重石だが、NYダウが持ち直したことで世界連鎖株安への不安感が後退してリスク選好感が増したことはプラス要因と思われる。

【5月3日からの二段目上昇継続】

【5月3日からの二段目上昇継続】

次回のFOMCは6月11/12日、日銀金融政策決定会合は6月13/14日に予定されており、これらがドル円の夏秋相場の方向性を決める重要イベントになると思われるが、その前哨戦として6月7日の米5月雇用統計へ向けた重要指標の発表が相次ぐ中で円安基調を継続できるのか、いったん仕切り直しの下落期に入るのか試されることになると思われる。
財務省の外国為替平衡操作実施状況では4月29日から5月2日の二度にわたる覆面介入総額が9兆7885億円となり市場が推定していた4月29日の5兆円と5月2日早朝の3兆円を超える規模となり、2022年9月22日、10月21日、10月24日の三度の介入時(9兆1881億円)も上回っていたことが判明した。しかし5月2日早朝の市場介入直前高値157.58円を超えたところで三度目の介入がなかったため、次の介入があるとすれば再び160円に迫るところとの見方が強まった印象だ。

ドル円は二度の市場介入による大幅下落で付けた5月3日安値151.85円を起点とした上昇が5月14日夜高値156.75円までを一段目(上昇幅4.90円)とし、5月16日の反落時安値153.60円を押し目底とした上昇で5月14日高値を超えて二段目の上昇期に入り、5月30日未明高値157.70円までの上昇幅は4.10円となった。
5月30日夜安値156.37円から持ち直しているため、このまま157.70円を超えれば158円台後半、159円台と徐々に160円に迫り政府・日銀が三度目の市場介入を発動するのか姿勢が試されて行くと思われる。
市場介入を警戒したり米長期債利回りが5月29日を目先のピークとして低下傾向を続けて国内10年債利回りの上昇がさらに進む場合には5月30日夜安値156.37円を割り込んで二段目の上昇一巡による下落期入りとなり5月30日未明高値157.70円から3円前後規模の下落幅と仮定して154円台中盤を試して行く可能性が高まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月30日夜安値156.37円を下値支持線、5月30日未明高値157.70円を上値抵抗線とする。
(2)157.70円を超える場合、158円到達での市場介入に注意するが、158円超えてさらに続伸の場合は5月3日から5月14日への上昇幅と同規模の二段目上昇としての上値目途となる158.50円前後への上昇を想定する。市場介入なく米経済指標が強めで米長期債利回りが上昇する場合にはこのケースと考える。
(3)156.37円を割り込む場合は二段目上昇の一巡として156.00円、155.50円を順次試して行くとみる。155円台後半で買い戻されても戻り一巡後に安値を更新する場合は154円台後半へ下値目途を引き下げる。米経済指標が弱く米長期債利回りが低下傾向を続ける場合にはこのケースと考える。

【当面の予定】

6/3(月)
休場 マレーシア、ニュージーランド、タイ
08:50 (日) 1-3月期 全産業設備投資額 前年同期比 (10-12月 16.4%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 51.4)
16:55 (独) 5月 HOCB 製造業PMI・改定値 (速報 45.4)
17:00 (欧) 5月 HOCB 製造業PMI・改定値 (速報 47.4)
17:30 (英) 5月 S&Pグローバル 製造業PMI・改定値 (速報 51.3)
22:45 (米) 5月 S&Pグローバル 製造業PMI・改定値 (速報 50.9)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 49.2、予想 49.7)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 -0.2%、予想 0.2%)

6/4(火)
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 2.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (10-12月 118億豪ドル)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.9%)
23:00 (米) 4月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (3月 848.8万件)
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 1.6%、予想 0.7%)

6/5(水)
08:30 (日) 4月 勤労統計・現金給与総額 前年同月比 (3月 0.6%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 0.2%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 1.5%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 52.5)
16:55 (独) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.9)
17:00 (欧) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.3)
17:30 (英) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 52.9)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -0.4%)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 -7.8%)
21:15 (米) 5月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 19.2万人、予想 18.0万人)
22:45 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 5.00%、予想 4.75%)
22:45 (米) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 54.8)
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 49.4、予想 50.7)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

6/6(木)
休場 韓国
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 50.24億豪ドル)
10:30 (日) 中村日銀審議委員、講演、14:30〜会見
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -0.4%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -1.9%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.8%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 0.7%)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀)政策金利 (現行 4.50%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -694億ドル、予想 -694億ドル )
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.1万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、会見

6/7(金)
未 定 (中) 5月 貿易収支(米ドル建て) (4月 723.5億ドル)
07:45 (NZ) 1-3月期 製造業売上高 前期比 (10-12月 -0.7%)
08:30 (日) 4月 全世帯消費支出 前年同月比 (3月 -1.2%)
14:00 (日) 4月 景気先行指数CI・速報値 (3月 112.2)
14:00 (日) 4月 景気一致指数CI・速報値 (3月 113.6)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -0.4%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -3.3%)
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 223億ユーロ)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP・確定値 前期比 (改定値 0.3%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP・確定値 前年同期比 (改定値 0.4%)
21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 17.5万人、予想 18.5万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 3.9%)
23:00 (米) 4月 卸売売上高 前月比 (3月 -1.3%)
25:00 (米) クックFRB理事、挨拶
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 62.7億ドル、予想 104.0億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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