ドル円見通し 米GDP等下方修正と米長期債利回り低下で大幅下落後も156円台後半に留まる(24/5/31)

ドル円は31日早朝にかけては目先の売り一巡で156.80円台へ買い戻されたものの157円には届かずにいる。

ドル円見通し 米GDP等下方修正と米長期債利回り低下で大幅下落後も156円台後半に留まる(24/5/31)

米GDP等下方修正と米長期債利回り低下で大幅下落後も156円台後半に留まる

〇昨日のドル円、日経平均急落や米長期債利回り反落を受け、156.52へ下落
〇その後一旦は157円台に戻すも、米GDP改定値等の不調によるドル売り等で続落、156.37へ一段安
〇国内10年債利回り、一時1.10%へ上昇、12年振り高水準に
〇5/30の米経済指標は総じて低調、年内1回の利下げは可能との見方やや強まる
〇米長期債利回りは総じて反落、NYダウとナスダックの大幅続落で世界連鎖株安への不安も
〇156.37割れからは156.00前後への下落を想定
〇157.25超えからは上昇再開とみて5/30未明高値157.70試しとする

【概況】

ドル円は5月30日未明に157.70円を付けて5月3日夜安値151.85円以降の高値を更新したが、29日のNYダウ大幅下落を受けて30日のアジア株式市場が総じて下落し日経平均が一時900円安を超える急落となったことによるリスク回避感と日本10年債利回りが一時1.10%をつけて12年振り高水準に達したこと、米長期債利回りが29日の上昇から低下に転じたことで30日夕刻に156.52円へ下落し、いったん157円台へ戻したものの30日夜の米GDP改定値や四半期ベースのコアPCEデフレーターが下方修正されたこと等をきっかけとしたドル売りと米長期債利回りの続落により30日夜安値156.37円へ一段安した。

31日早朝にかけては目先の売り一巡で156.80円台へ買い戻されたものの157円には届かずにいる。
今夜はFRBがインフレ指標として最重視している4月の米PCE(個人消費支出)デフレーターの発表がある。全体の前年同月比は3月と変わらず2.7%、コア指数も3月と変わらずの2.8%と予想されているが、予想を下回る場合は年内利下げの可能性が高まるとしてドル安円高に、予想を上回る場合は利下げ先延ばし感を意識してドル高円安へ進みやすいところだ。

【国内10年債利回り、一時1.10%へ上昇】

5月30日の国内債券市場では、長期金利指標の新発10年物国債(374回債)利回りが前日比0.02%低下の1.055%で終了したが、一時は1.100%をつけて12年振り高水準とした。この日の2年債入札が無難だったことで債券売りが落ち着いたことと前日に急伸した米長期債利回りが低下に転じたことで終盤へ低下したが、1.0%を超えてから連日高値を切り上げている。30日午前に日経平均が大幅下落したこともあり、円安・株安・債券安(利回り上昇)の日本トリプル安への懸念も取り沙汰された。

【米GDP改定値等が下方修正】

5月30日の米経済指標は総じて低調だったために米長期債利回り低下とドル安反応を招き、米国の利下げが先延ばしされているものの年内1回の利下げは可能との見方がやや強まったようだ。
5月30日夜発表の米1-3月期GDP改定値は年率換算前期比で1.3%増となり速報値の1.6%増から下方修正され、個人消費も速報の2.5%増から2.0%増へ下方修正された。
インフレ指標のGDPデフレーターは速報の3.1%と変わらず、四半期PCE(個人消費支出)デフレーターは速報の3.4%から3.3%へ下方修正、コア指数は3.7%から3.6%へ下方修正された。
米労働省による新規失業保険申請件数は5月25日までの週間で前週比3000件増の21万9000件となり3週ぶりに悪化し、4週平均では22万2500件で前週から2500件増加した。失業保険受給者総数は5月18日までの週間で179万1000人となり前週から4000人増加した。

全米リアルター協会(NAR)による4月の米中古住宅販売仮契約指数は前月比7.7%減の72.3となり3月の3.6%増から悪化して市場予想の1.0%減を大幅に下回り2021年2月以来凡そ3年ぶりの大幅低下となった。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は30日に、FRBのインフレ2%目標達成に向けてここ数カ月は進展がないとし、「インフレはかなり和らぎ、今年下半期には再び緩やかになる」としたものの、「非常に近い将来に利下げを行う緊急性を感じない」として当面は政策金利維持が妥当との見方を強調した。FRB高官や地区連銀総裁らによる利下げ先延ばし主張やインフレ再燃の場合には利上げもあり得るとの見方が繰り返されてきたため、この日の総裁発言への市場反応は鈍かった。

【米長期債利回りは総じて反落、NYダウとナスダックの大幅続落で世界連鎖株安への不安も】

5月30日の米長期債利回りは総じて低下、指標の10年債利回りは前日比0.07%低下の4.55%、30年債利回りは0.06%低下の4.68%、2年債利回りは0.05%低下の4.93%となった。米GDP等の下方修正と31日夜の米4月PCE統計発表を控えた調整で前日の上昇分を解消する低下となったが、大きな方向性は31日夜の米PCE統計発表からの動きで決まるのではないかと思われる。
一方でNYダウは前日比330.06ドル安と大幅下落したが、5月28日の216.73ドル安、29日の411.32ドル安から3日連続の日足陰線(三羽烏)で下落しており、5月20日の史上最高値40077.40ドルから下落期入りしている印象を強めた。ナスダック総合指数も28日に17032.66へ史上最高値を伸ばしたものの29日の前日比99.30ポイント安から30日も183.50ポイント安と続落して上昇一巡感が出ている。30日は日経平均の大幅下落の他、上海総合株価指数等主要なアジア株価指数も下落しており、世界連鎖株安への不安感も見られ、株安リスクがドル円の重石となりつつある。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は5月21日深夜安値から5日目となる28日夜安値を起点として30日未明へ一段高したものの30日午前時点では29日午後反落時安値156.93円割れからは下落期入りとした。
30日午後に29日午後安値を割り込んで続落したため、30日未明高値を起点とした下落期に入ったと思われる。目先の安値形成期は31日夜から6月4日夜にかけての間と想定されるのでまだ下落余地ありとみるが、31日夜の米PCE統計等をきっかけに反騰入りする可能性もあるとみて157.25円超えからは30日未明高値157.70円試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとして6月3日深夜から6日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では5月30日夜への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜くところからは上昇再開と仮定して遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月30日午後から夜にかけての安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられるので、50ポイントに届かないか一時的に届いても維持できないうちは一段安余地ありとするが、55ポイント超えからは上昇期入りと仮定して60ポイント台後半へ上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月30日夜安値156.37円を下値支持線、157.25円を上値抵抗線とする。
(2)157.00円から157.25円手前にかけては戻り売り有利とし、156.37円割れからは156.00円前後への下落を想定する。156円以下は反騰注意とするが、米経済指標をきっかけに急落商状の場合は155円台後半(155.90円から155.60円台)へ下値目途を引き下げ、安値から0.70円以上の反騰がみられなければ週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)157.25円超えからは上昇再開とみて5月30日未明高値157.70円試しとする。157.70円前後でのダブルトップ形成に注意するが、高値更新からは158円台前半を目指す上昇期に入り週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

5/31(金)
マレーシア休場
10:30 (中) 5月 国家統計局 製造業PMI (4月 50.4、予想 50.4)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -12.8%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 5月 HICP(調和消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 5月 コアHICP 前年同月比 (4月 2.7%、予想 2.7%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(4月26日-5月29日)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCE(個人消費支出) 前月比 (3月 0.8%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 2.8%、予想 2.8%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 37.9、予想 41.0)


注:ポイント要約は編集部

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