ドル円見通し 157円台後半へ続伸、5月2日早朝の二度目介入時水準を超える
〇ドル円、5/29午前157.39へ上昇、5/23高値157.19を超え、午後に157円を割り込むも買われ一段高
〇5/30未明157.70を付け、5/2早朝に政府・日銀が二度目の市場介入を行った直前の高値157.58を上回る
〇ドル円の上値を抑える要因はあるものの、日米金利差拡大による円安継続感優勢の印象
〇日本10年債利回り、1.075%となり12年振りの高水準更新続く
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは大幅続落、ナスダックも下落
〇157.30以上を維持する内は上昇余地ありとし、157.75超えからは158円前後への上昇を想定する
〇157.30割れからは下向きとし、156.93割れからは下落期入りとして156円台中盤への下落を想定する
【概況】
ドル円は5月29日午前に157.39円へ上昇して5月23日深夜高値157.19円を超え、午後に一時157円を割り込んだところを買われて一段高に入り、30日未明に157.70円を付けて5月2日早朝に政府・日銀が二度目の市場介入を行った直前の高値157.58円を上回った。
日本10年債利回りが1.0750%へ上昇して12年振り高値を更新していることや日銀が6月会合で国債購入の減額に踏み込むとの見方や三度目の市場介入への警戒感がドル円の上値を抑える要因ではあるものの、FRB高官や地区連銀総裁らによる年内利下げ見送り姿勢やインフレ再燃なら利上げもあり得るとのタカ派的な発言が続いて米長期債利回りが顕著に上昇していることで日米金利差拡大による円安継続感が優勢の印象だ。
昨夜はユーロドルが急落して1.080ドルを割り込み5月16日高値1.08947ドル以降の安値を更新し、前日まで上昇基調にあったポンドドルが反落するなどドル高感が強まったこともドル円を押し上げた。
5月30日未明に発表された全米12地区連銀景況報告(ベージュブック)では、全般的な経済活動が4月初めから5月半ばにかけて「拡大し続けた」とし、4月時点の「若干拡大した」から景況判断を上方修正したが市場の反応は限定的だった。
30日夜は米国の1-3月期GDP改定値、週間新規失業保険申請件数等の発表やニューヨーク連銀総裁とダラス連銀総裁の講演が注目されるが31日夜の米4月PCE(個人消費支出)デフレーターが当面の最大焦点となっている。
【国内10年債利回り、12年振り高水準更新続く】
5月29日も国内長期金利が上昇した。長期金利指標の新発10年物国債(第374回債)流通利回りは前日比0.04%上昇の1.075%となり2011年12月以来凡そ12年半ぶりの高水準に達している。日銀が5月13日の国債買い入れオペで従来よりも買い入れ額を縮小したため、3月のマイナス金利解除に続て6月会合では長期金利抑制のための国債買い入れ規模の大幅な減額に踏み込むとの見方が強まり、円安をけん制するために7月会合では小幅利上げもあり得るとの声も出ており、5月13日の0.94%から上昇期に入り、1%を超えた後も上昇が続いている。
日銀の安達審議委員は29日に月間6兆円規模で国債買い入れを継続していることについて「将来どこかの時点で減額させる」、「債券市場の需給や機能度などを勘案し段階的に減額していくのが望ましい」と述べている。また円安に対しても「物価目標実現に影響を与えると予想される場合には金融政策による対応も選択肢の一つ」として利上げもあり得るとの認識を示している。
今のところは米長期債利回り上昇の影響が優先されてドル円は上昇しているが、三度目の市場介入や日銀による引き締め姿勢等がタイムリーに報じられればドル円の上昇にブレーキがかかることも考えられる。
【米長期債利回りは総じて続騰、NYダウは大幅続落】
5月29日の米長期債利回りは利下げ開始先延ばし感により総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の4.62%となり5月16日に付けた4.31%以降の高値を更新して4月25日に付けた昨年末以降のピークである4.74%からの下落幅に対する3分の2戻しラインの4.60%を超えた。
30年債利回りは前日比0.07%上昇の4.74%となり、5月16日に付けた4.47%以降の高値を更新し、4月25日に付けた昨年末以降のピークである4.85%からの下げ幅に対する3分の2戻しラインの4.72%を超えた。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比変わらずの4.98%で終了したが、一時4.99%をつけて5月16日に付けた4.71%以降の高値を更新して徐々に4月30日に付けた年初来ピークの5.05%へ迫っている。
一方で米長期金利上昇を嫌ってNYダウは前日比411.32ドル安と大幅下落したが、5月20日に40077.40ドルの史上最高値を付けてから下落に転じており、28日の216.73ドルから続落している。ナスダック総合指数は半導体大手エヌビディアの好決算を好感した買いが続いて5月28日に17032.66ポイントを付けて史上最高値を更新したが、29日は米長期債利回り上昇とダウの続落を嫌って前日比99.30ポイント安と下げた。
ダウが反騰入りしてナスダックとともに上昇基調を強めることができるか、ナスダックが反落してダウとともに株安基調へ入るのか、31日の米PCE統計次第で見えてくるのではないかと思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月23日深夜高値157.19円からジリ安の推移に入ったが、5月21日深夜安値から5日目となる28日夜安値を押し目として29日早朝へ一段高したことで新たな上昇期に入ったとし、23日深夜高値を基準として目先の高値形成期を29日午前から30日深夜にかけての間と想定した。30日未明へ一段高しているのでまだ上昇余地ありとし、今夜の米GDP改定値等から大幅に続伸する可能性もあると注意するが、29日午後反落時安値156.93円割れからは下落期入りとして31日夜から6月4日夜にかけての間への下落を想定する。ただし、いったん下落期入りした後の反騰でこの間の高値を更新するところからは新たな上昇期入りとする。
60分足の一目均衡表では5月29日早朝への一段高により遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き返したが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とするが、先行スパンからの転落を回避して再び好転するところからは上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は5月29日午前高値から30日未明高値への一段高に際して指数のピークがほぼフラットな弱気逆行がみられるため、50ポイント台を維持する内は一段高余地ありとするが、次の高値更新時も指数のピークが切り下がる場合は反落警戒とし、50ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、157.30円を下値支持線、157.75円を上値抵抗線とする。
(2)157.30円以上を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、157.75円超えからは158円前後への上昇を想定する。158円以上は反落警戒とするが、157.50円を上回っての推移なら31日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)157.30円割れからは下向きとし、156.93円割れからは下落期入りとして156円台中盤(156.65円から156.35円)への下落を想定する。156.50円以下は買われやすいとみるが、156.93円を下回っての推移なら31日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
5/30(木)
休場(マレーシア、ブラジル)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 0.8%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 1.9%、予想 1.5%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感・確定値 (速報 -14.3、予想 -14.3)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 95.6、予想 96.2)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%、予想 6.5%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 1.6%、予想 1.3%)
21:30 (米) 1-3月期 個人消費・改定値 前期比年率 (速報 2.5%、予想 2.2%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター・改定値 前期比年率 (速報 3.7%)
21:30 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 -0.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人、予想 179.7万人)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 3.4%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -4.5%、予想 -2.0%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
29:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
5/31(金)
マレーシア休場
07:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、スピーチ
08:30 (日) 5月 東京区部CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 1.6%、予想 1.9%)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.6%、予想 2.6%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前月比 (3月 4.4%、予想 1.5%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (3月 -6.2%、予想 -1.1%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 1.2%、予想 1.8%)
10:30 (中) 5月 国家統計局 製造業PMI (4月 50.4、予想 50.4)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -12.8%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 5月 HICP(調和消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 5月 コアHICP 前年同月比 (4月 2.7%、予想 2.7%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(4月26日-5月29日)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCE(個人消費支出) 前月比 (3月 0.8%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 2.8%、予想 2.8%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 37.9、予想 40.9)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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