5月23日夜高値を超え5月3日夜安値からの二段目上昇続く
〇ドル円、米CB消費者信頼感指数大幅上昇で米長期債利回り一段高、5/29早朝159.20つける
〇5/3夜安値151.85以降の高値更新、5/16午前安値153.60起点とした二段目の上昇継続
〇市場介入警戒感や週後半の米GDP改定値・PCEデフレータの発表控え、高値更新後はやや慎重な動き
〇ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、インフレ再燃の際には利上げも必要との認識示す
〇豪英独等の長期債利回りも上昇、為替市場は円の弱さ目立ち、クロス円全般の上昇がドル円上昇に波及
〇エヌビディア好決算による上昇でナスダックは買われ、長期金利上昇を嫌ってダウは下落
〇157円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は157.50前後への上昇を想定
〇156.85割れからは5/28夜安値156.58試しとし、156.58割れからは156.25から156.00への下落想定
【概況】
ドル円は5月23日未明のFOMC議事要旨がタカ派だったことと23日夜の米5月PMIが予想を上回ったことによる米長期債利回り上昇で5月23日深夜に157.19円へ上昇したが、その後は市場介入への警戒感と国内長期金利上昇が重石となってジリ安の推移に入り、28日夜には156.58円まで安値を切り下げていた。しかし28日夜の米コンファレンス・ボードによる5月消費者信頼感指数が予想を大幅に上回ったことをきっかけに米長期債利回りが一段高したため29日早朝に159.20円を付けて5月23日深夜高値を上抜き5月3日夜安値151.85円以降の高値を更新し、5月16日午前安値153.60円を起点とした二段目の上昇を継続した。
5月29日午前序盤も157円台を維持しているが、三度目の市場介入への警戒感、30日夜の米GDP改定値と31日夜の米5月PCEデフレーターの発表も控えていることで高値更新後はやや慎重な動きに見える。
国内長期金利の上昇は続いており、28日の新発10年物国債(第374回債)流通利回りは1.035%に上昇して2012年4月以来12年1か月振りの高水準に達している。6月13-14日の日銀金融政策決定会合において国債買い入れが減額されるとの観測が金利上昇を招いていることはドル円に対して上値を抑える圧力だが、それ以上に米長期債利回りが上昇していることでドル円は一段高へ進んでいる。
【米5月消費者信頼感指数、予想を大幅に上回る】
5月28日夜に発表された米コンファレンス・ボード(CB)による5月消費者信頼感指数は102.0となり4月の97.5から大幅に上昇して市場予想の95.9への悪化に反して改善した。現況指数は前月の140.6から143.1へ、期待指数は68.8から74.6へいずれも大幅に上昇した。
米連邦住宅金融庁(FHFA)による3月米住宅価格指数は前月比0.1%上昇にとどまり2月の1.2%上昇から鈍化したが、前年同月比6.7%上昇となり2月の7.1%を若干下回ったものの大幅な上昇率を維持した。
S&P・コアロジック/ケース・シラーによる3月の米住宅価格指数は前月比0.3%上昇で2月の0.6%上昇から鈍化したが前年同月比7.4%上昇となり2月の7.3%上昇を上回った。
住宅関連統計とCB消費者信頼感指数が予想以上に強かったことで米国の早期利下げ期待度が低下して米長期債利回り上昇とドル円の上昇要因となった。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は5月28日に「インフレ率がFRB目標2%へ持続的に低下するとの確信を得るまで必要な限り現行水準にとどまる可能性がある」とし、「予想外の指標が確認されれば物価抑制で必要な措置を取る」と述べてインフレ再燃の際には利上げも必要との認識を示した。
【米長期債利回り上昇、米国株式市場はダウ安・ナスダック高】
5月28日の米長期債利回りは総じて上昇した。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が追加利上げの可能性を排除しないとしたことやCB消費者信頼感指数の上昇等により9月利下げ期待度が後退したことと、米財務省の2年債690億ドルと5年債700億ドルの大量入札による需給緩和感で債券売り・利回り上昇を招いた。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.09%上昇の4.55%となり5月16日に付けた4.31%以降の高値を更新して4月25日に付けた昨年末以降のピークである4.74%からの下落幅に対する半値戻し4.53%を超えた。
30年債利回りは先週末比0.10%上昇の4.67%となり5月16日に付けた4.47%以降の高値を更新、2年債利回りは先週末比0.03%上昇の4.98%となり5月16日に付けた4.71%以降の高値を更新して徐々に4月30日に付けた年初来ピークの5.05%へ迫ってきた。
豪英独等の長期債利回りも上昇しているため為替市場は必ずしもドル全面高ではなく、ユーロドルや豪ドル、米ドルは5月16日に付けた4月後半以降の高値に迫り、ポンドドルは4月22日以降の高値を更新している。円の弱さが目立つためポンド円はすでに4月29日の市場介入による急落分を解消して一段高しており、クロス円全般の上昇がドル円の上昇にも波及している。
一方でNYダウの5月28日は先週末比216.73ドル安と下落して史上最高値を付けた5月20日以降の安値を更新したが、ナスダック総合指数は先週末比99.09ポイント高と24日の184.76ポイント高から連騰して史上最高値を更新、17000ポイント台に乗せた。半導体大手エヌビディアの好決算による上昇でナスダックが買われ、長期金利上昇を嫌ってダウが下げている。両指数の乖離が拡大するのか足並みをそろえるのか、今週後半の米GDP改定値やPCEデフレーター等で見えてくるのではないかと思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月23日深夜高値157.19円からジリ安の推移に入ったが、5月21日深夜安値から5日目となる28日夜安値を押し目として29日早朝へ一段高したことで新たな上昇期に入っている。23日深夜高値を基準として目先の高値形成期は29日午前から30日深夜にかけての間と想定されるので、157円を割り込んでも回復する内は上昇余地ありとするが、28日夜安値156.58円割れからは下落期入りとして31日夜から6月4日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月29日早朝への一段高により遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き返したため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は5月29日午前に70ポイントへ迫っている。50ポイント台へ反落してもその後に60ポイント超えへ切り返す場合は上昇継続とみるが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落注意とし、50ポイント割れから30ポイント前後への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、156.85円を下値支持線、157.50円を上値抵抗線とする。
(2)157円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は157.50円前後への上昇を想定する。157.50円以上は反落警戒とするが、156.85円を上回っての推移なら30日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)156.85円割れからは28日夜安値156.58円試しとし、156.58円割れからは156円台序盤(156.25円から156.00円)への下落を想定する。156円台序盤は買われやすいとみるが、156.85円を下回っての推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
5/29(水)
休場(南ア)
10:30 (豪) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.5%、予想 3.4%)
10:30 (日) 安達日銀審議委員、講演、会見(14:00〜)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 38.3、予想 39.2)
15:00 (独) 6月 GFK消費者信頼感 (5月 -24.2、予想 -22.5)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (4月 0.5%、予想 0.2%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.4%)
23:00 (米) 5月 リッチモンド連銀製造業指数 (4月 -7、予想 -6)
26:00 (米) 財務省7年債入札
26:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
5/30(木)
休場(マレーシア、ブラジル)
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数 前月比 -0.2%
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 0.8%、予想 0.7%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 1.9%、予想 1.5%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感・確定値 (速報 -14.3)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 95.6、予想 86.2)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%、予想 6.5%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 1.6%、予想 1.3%)
21:30 (米) 1-3月期 個人消費・改定値 前期比年率 (速報 2.5%、予想 2.2%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター・改定値 前期比年率 (速報 3.7%)
21:30 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 -0.4%、予想 0.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人、予想 179.5万人)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 3.4%、予想 0.2%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -4.5%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
29:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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