先週の急落幅に対し半値近く戻すが、3度目の介入警戒感も強まる
〇昨日ドル円、夜に155.66をつけ、4/29高値から5/3安値までの下げ幅の半値戻し156.00に迫る
〇5/7、8の日銀総裁発言に対する市場の反応は鈍い
〇米雇用統計不冴えで9月利下げへの期待度増すも、FRBの利下げ開始判断はまだ先という印象
〇米10年債利回りは6日ぶり反発、ダウは6連騰
〇ダウ、ナスダック共に利下げ開始期待と先送り警戒感を天秤にかけつつ史上最高値更新へ進めるか模索
〇本日夜は、英中銀政策金利発表、ECB副総裁講演、米新規失業保険申請件数等の発表予定
〇155円台を維持するうちは上昇余地ありとし、5/8夜高値超えからは156円試しを想定
〇155円割れからは154円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は5月3日夜安値151.85円からのリバウンドを継続して5月8日夜に155.66円をつけてこの間の戻り幅を3.81円とした。4月29日高値160.16円から5月3日夜安値までの下げ幅8.31円に対する3分の1戻し154.62円をクリアし、半値戻しの156.00円に迫っている。
日銀の植田総裁が8日午後の講演で「最近の円安の動きを十分に注視している」等と円安けん制姿勢を示したものの市場の反応は鈍かった。
米長期金利指標の10年債利回りが6日ぶりに上昇したことやボストン連銀のコリンズ総裁が利下げ判断は当初の想定よりも時間がかかると述べたこと、5月3日以降はユーロやポンド、豪ドル等の上昇が一巡してドル高がやや優勢の流れとなっていることがドル円の戻りを継続させたが、3度目の市場介入への警戒感も徐々に高まってきている。半値戻しラインの156円を超えても市場介入がなければ3分の2戻しの157.39円や2度目の市場介入があった5月2日早朝高値157.58円等を目指す可能性もあるが、戻り一巡からいったん仕切り直し的に下げやすい時間帯と注意したい。
今夜は英中銀の政策金利発表とベイリー英中銀総裁会見、デギンドスECB副総裁講演、米新規失業保険申請件数、米財務省の四半期入札(30年債、250億ドル)等がある。
【日銀総裁の円安けん制効果は鈍い】
日銀の植田総裁は5月8日の講演で「最近の円安の動きを十分に注視している」、「一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率が上振れするリスクが高まる場合は政策上の対応が必要になる」と述べて追加利上げの可能性に言及し、月間6兆円規模の国債買い入れについても「減額していくことが適当」とした。最近の円安について「企業の事業計画の策定を困難にするなど不確実性を高め、日本経済にマイナス」とし、「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることは意識しておく必要がある」とも述べた。
植田総裁は5月7日に岸田首相と会談しており、その際も「最近の円安について日銀の政策運営上十分に注視することを確認した」、「政府と日銀が密接に連携を図り政策運営に努めていく点を確認した」と述べて円安へのけん制姿勢を示したが、7日及び8日の総裁発言に対する市場の反応は鈍かった。
【米国の利下げ開始先送り感】
5月3日の米雇用統計で非農業部門就業者数が予想を下回り失業率が悪化してインフレ指標である平均時給の伸び率も鈍化したことで9月利下げへの期待度が増したが、5月7日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が年内の利下げ回数がゼロになる可能性もあると指摘するなど、FRBの利下げ開始判断はまだ先という印象だ。
ボストン連銀のコリンズ総裁は5月8日に「物価安定には当初の想定よりも時間がかかる」、「十分な時間をかけながら労働市場が健全さを保ちつつインフレ率を2%へ低下させてゆくことについて楽観している」と述べた。「FOMCはどれくらい長く現行の政策金利水準で据え置くのが適切なのか忍耐強く精査している」とし、早期利下げへの慎重姿勢を示した。
クックFRB理事も8日に金利高止まりに対するリスクよりもまずは物価安定の促進=インフレ抑制が重要だとして早期利下げについてやや否定的な姿勢を示した。
【米10年債利回りは6日ぶり反発、ダウは6連騰】
5月8日の米長期債利回りは前日までの低下一巡で総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは5月1日から5営業日連続低下となり4月25日に付けた直近のピークである4.74%以降の最低を更新したが、8日は前日比0.04%上昇の4.50%となり6日ぶりに反発した。ボストン連銀総裁の利下げへの慎重姿勢等もあり連続低下一巡で戻した印象だ。30年債利回りも0.04%上昇の4.64%となり6日ぶりに反発し、2年債利回りも0.01%上昇の4.84%となった。
一方で5月8日のNYダウは前日比172.13ドル高と上昇して5月1日から6連騰としており、米雇用統計が冴えなかったことによる9月利下げに対する楽観的な期待感が続いたが、ナスダック総合指数は29.80ポイント安となり7日の16.69ポイント安から小幅続落しており、4月19日からの反騰一服の様相となっている。ともに米国の利下げ開始への期待と先送りへの警戒感を天秤にかけつつ史上最高値更新へ進めるのか模索しているところだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月3日夜安値151.85円からのリバウンドを継続して8日夜へ高値を切り上げたが156円手前に抵抗感も見られる。3連騰による戻り一巡でいったん下げに入りやすいところと注意し、155円割れからは下落期入りとみて9日の日中から10日夜にかけての間への下落を想定する。ただし、いったん下落した後に一段高する場合は新たな上昇期入りとして13日から15日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では5月3日夜安値からの反発により遅行スパンが好転して7日午後への続伸で先行スパンを上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とし、先行スパン下限を試すとみる。
市場介入や介入警戒による売りの連鎖で先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性もあると注意するが、先行スパンからの転落を回避して遅行スパンが再び好転するところからは次の上昇期に入るとみる。
60分足の相対力指数は5月8日夜に70ポイント台後半へ上昇してから50ポイント台へ低下しているため戻り一巡による下落期入りを警戒する。60ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.00円を下値支持線、5月8日夜高値155.66円を上値抵抗線とする。
(2)155円台を維持するうちは上昇余地ありとし、8日夜高値超えからは156円試しを想定する。156円前後は反落警戒とするが、155円台を維持しての推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)155円割れからは154円前後への下落を想定する。154円前後は買われやすいとみるが、155円以下での推移が続く場合は10日も安値試しへ向かいやすいとみる。市場介入ないしは介入警戒感から売りの連鎖反応が発生して急落する場合は5月3日安値151.85円に迫る下落規模となる可能性もあると注意する。
【当面の予定】
5/9(木)
休場 ノルウェー、スイス、インドネシア、ロシア
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 585.5億ドル、予想 813.5億ドル)
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI速報値 (2月 111.8、予想 111.1)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI速報値 (2月 111.6、予想 114.0)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
20:30 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.8万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 177.4万人、予想 178.5万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札(250億ドル)
5/10(金)
休場 インドネシア、ロシア
08:30 (日) 3月 全世帯消費支出 前年同月比 (2月 -0.5%、予想 -2.3%)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調前 (2月 2兆6442億円、予想 3兆4407億円)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調済 (2月 1兆3686億円、予想 2兆442億円)
08:50 (日) 3月 貿易収支・国際収支ベース (2月 -2809億円、予想 5230億円)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状 (3月 49.8、予想 50.3)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行き (3月 51.2、予想 51.6)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 -0.3%、予想 0.4%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 -0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 1.1%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 1.4%、予想 0.3%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・物品 (2月 -142.12億ポンド、予想 -144.50億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支 (2月 -22.91億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
20:30 (欧) 欧州中銀理事会議事要旨
22:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (4月 77.2、予想 76.2)
25:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、講演
26:30 (米) バーFRB副議長、スピーチ
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -2365億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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