ドル円見通し FOMC後に4月29日安値を割り込む急落、2度目の市場介入か(24/5/2)

ドル円は4月29日夕刻安値154.50円へ下落したが、狼狽売り一巡で持ち直しに入り5月1日午後には157.98円まで戻していた。

ドル円見通し FOMC後に4月29日安値を割り込む急落、2度目の市場介入か(24/5/2)

FOMC後に4月29日安値を割り込む急落、2度目の市場介入か

〇昨日ドル円、4/29の急落による狼狽売り一巡で持ち直しに入り、午後に157.98まで戻す
〇本日早朝FOMC後に157.01まで下げたところ、5時過ぎから市場介入と思われる急落商状に
〇直前の157.58から153.01へ急落、売り一巡による買い戻しで朝は155円台へ戻す
〇円高基調転換への当局の思惑滲む、5/2-3にかけ追撃的な市場介入を行う可能性も
〇しかし米利下げ先送り感によるドル高基調続けば、一時的な急落消化しつつ再び160円台挑戦か
〇FOMC、予想程にタカ派ではなく、年後半の利下げ余地を残す
〇5/1の米経済指標はまちまちだが景況感の悪化が目立つ
〇米長期債利回りは低下、NYダウは反発、ナスダックは続落
〇本日夜は米新規失業保険申請件数と四半期労働コスト、5/3夜は米4月雇用統計発表予定
〇154.50割れからは下落再開とみて5/2早朝安値153.01試しとする
〇156.20超えからは157円前後への上昇を想定

【概況】

ドル円は4月29日午前に160.16円を付けて1990年4月2日高値160.36円以来の160円台に到達したところで市場介入と想定される急落に見舞われて4月29日夕刻安値154.50円へ下落したが、狼狽売り一巡で持ち直しに入り5月1日午後には157.98円まで戻していた。
5月1日夜の米経済指標を見ながらやや下落し、2日早朝の米FOMCが予想程にタカ派ではなかったとしてドル安反応がみられたためにFOMC後に157.01円まで下げていたが、2日5時過ぎから市場介入と思われる急落商状に陥り直前の157.58円から153.01円へ急落し、売り一巡による買い戻しで2日朝には155円台へ戻している。

4月29日の急落は日銀資金動向により5兆円規模の介入だったとされ下げ幅は5.66円に及んだが、5月2日早朝の急落は直前高値から4.57円、1日夕刻高値からは4.97円の下げ幅であり、29日の急落時に近いインパクトだった。4月29日午前の祝日、FOMC通過から落ち着いていた5月2日早朝の介入だったとすれば、効果的な時間帯で仕掛け、再び160円へ迫ることを容認せずに円高基調へ転換させたいとの当局の思惑も滲むところであり、5月2日から3日にかけても追撃的な市場介入を行う可能性もあると思われるが、米国の利下げ先送り感によるドル高基調が続けば介入による一時的な急落を繰り返し消化しつつ再び160円台へ挑戦してゆくことも考えられる。
5月2日夜には米週間新規失業保険申請件数と四半期労働コスト、3日夜には米4月雇用統計と重要イベントが続く。

【FOMC 年後半の利下げ余地を残す】

米FRB(米連邦準備制度理事会)は4月30−5月1日のFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)の結果を2日早朝に発表した。政策金利は年5.25〜5.50%として6会合連続で据え置き、声明ではインフレ鈍化について「ここ数カ月一段の進展がない」とし「インフレが持続的に2%へ向かうというより大きな確信を得るまで利下げは適切と考えていない」とした。3月の米CPIが予想を上回り、3月のPCEデフレーターも2月から伸びが加速したことを踏まえて利下げ判断の先送り感が強まった印象となった。
しかし、今回のFOMCでは金融緩和期に買い入れてきた保有資産の売却ペースについて国債を従来の月600億ドルか250億ドルに減額しており量的な引き締めを緩める姿勢も見せた。

パウエルFRB議長はFOMC後の会見で持続的なインフレ鈍化については「予想よりも時間がかかる可能性がある」としたが、次の政策変更が「利上げとなる可能性は低い」とし、インフレ鈍化が持続する「確信が得られれば利下げが視野に入る」、「個人的には今年のインフレ鈍化進展を予想している」と述べて年後半の利下げ余地を示した。市場予想程にはタカ派へシフトするものではなく、慎重な姿勢が続くとしても今後の4〜6月期のインフレ統計が顕著な鈍化傾向を示せば9月に利下げを開始して年末までに複数回の利下げを行う可能性は残ったという印象だ。

【5月1日の米経済指標はまちまちだが景況感の悪化が目立つ】

5月1日に米民間雇用サービス会社ADPが発表した4月の非農業部門民間就業者数は前月比19万2000人増となり3月の20.8万人(速報の18.4万人)を下回ったものの市場予想の17.5万人を上回った。
米労働省による3月雇用動態調査(JOLTS)求人数は前月比32万5000件減少の848万8000件となり市場予想の868.6万件を下回った。2月分は速報の875.6万件から881.3万件に上方修正された。
S&Pグローバルによる4月米製造業PMI確報値は50.0となり速報の49.9から若干上方修正されて市場予想の49.9を上回ったが、3月確報の51.9から悪化した。
米サプライ管理協会(ISM)による4月製造業景況指数は49.2となり3月の50.3から低下して市場予想の50.0を下回った。50が強弱分岐点だが50割れは今年2月以来2か月振り。内訳では新規受注が51.4から49.1へ悪化、生産が54.6から51.3へ悪化、雇用は47.4から48.6へ改善したが、価格は55.8から60.9へ上昇した。

【米長期債利回りは低下】

5月1日の米長期債利回りはFOMC声明及びパウエル議長会見内容が懸念されていた程タカ派的ではなかったとして低下し、終盤にやや戻したものの総じてマイナス圏で終了した。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.58%へ低下したところから戻したものの前日比0.05%低下の4.63%となり、30年債利回りは一時4.71%へ低下してから戻したものの前日比0.04%低下の4.75%となった。政策金利動向に敏感な2年債利回りは4月30日に5.045%をつけて年初来最高としていたが、1日は一時4.94%まで低下してからやや戻したものの前日比0.08%低下の4.96%に終わった。
一方で5月1日のNYダウは前日比87.37ドル高と反発した。4月30日に前日比570.17ドル安と大幅下落した後の戻りとしては鈍いが、パウエル議長の発言が思ったほどにはタカ派的でなかったとして買い戻されたようだ。ナスダック総合指数は4月30日の前日比325.26ポイント安から1日も52.34ポイント安と続落している。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は4月29日午前高値160.16円から夕刻安値154.50円までの急落が落ち着いてリバウンドに入っていたが、1日夕高値157.98円で戻り一巡となり、2日早朝の市場介入と思われる急落で29日夕安値を割り込み153.01円まで安値を切り下げた。
2日午前序盤にかけては狼狽売り一巡で155円台中盤へ戻しているため、目先の底を付けて再びリバウンドに入っている可能性があるとみて156円超えからは上昇期として6日午後から8日午後にかけての間への上昇を想定する。ただし、156円を超えないか一時的に超えても154.50円を割り込む場合は1日夕高値からの下落基調継続とみて2日早朝安値試しとし、底割れからは2日午後から6日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月2日早朝への急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。急落一巡による反騰が続く可能性もあるので156円超えから続伸する場合は先行スパンの上下限を試す上昇を想定するが、その後の反落で154.50円を割り込むところからは下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月2日早朝に10ポイント台へ低下してから戻しているものの50ポイントに届かずにいる。50ポイントから60ポイント手前にかけての水準は戻り売りも出やすいと注意し、次に30ポイントを割り込むところからは再び10ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、154.50円を下値支持線、156.20を上値抵抗線とする。
(2)154.50円を上回るうちは急落後のリバウンドを試す流れとみるが、156.20円までは戻り売りにつかまりやすいとみる。154.50円割れからは下落再開とみて2日早朝安値153.01円試しとし、底割れからは152円前後、次いで151円台中盤を順次試す下落を想定する。
(3)156.20円超えからは157円前後への上昇を想定する。157円前後は反落警戒とし、156円台を維持しての推移なら3日の日中も高値試しを続けやすいとみるが、その後に155.50円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の予定】

5/2(木)
休場 中国
10:30 (豪) 3月 貿易収支 (2月 72.80億豪ドル、予想 73.00億豪ドル)
10:30 (豪) 3月 住宅建設許可件数 前月比 (2月 -1.9%、予想 3.0%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数・一般世帯 (3月 39.5、予想 39.8)
16:55 (独) 4月 HOCB 製造業PMI改定値 (3月 42.2、予想 42.2)
17:00 (欧) 4月 HOCB 製造業PMI改定値 (3月 45.6、予想 45.6)
21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -689億ドル、予想 -691億ドル)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (10-12月 3.2%、予想 0.8%)
21:30 (米) 1-3月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (10-12月 0.4%、予想 3.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.7万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 178.1万人、予想 179.7万人)
23:00 (米) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 1.4%、予想 1.6%)

5/3(金)
休場 中国、日本
17:30 (英) 4月 サービス業PMI改定値 (速報 54.9、予想 54.9)
18:00 (欧) 3月 失業率 (2月 6.5%、予想 6.5%)
21:30 (米) 4月 非農業部門就業者数 前月比 (3月 30.3万人、予想 25.0万人)
21:30 (米) 4月 失業率 (3月 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前年同月比 (3月 4.1%、予想 4.0%)
22:45 (米) 4月 S&Pグローバル サービス業PMI改定値 (速報 50.9、予想 50.9)
23:00 (米) 4月 ISM非製造業景況指数 (3月 51.4、予想 52.0)


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る