ドル円週間見通し 151円割れを持ち合い相場の徳俵として戻す(週報4月第二週)

ドル円は4月5日に150.80円まで下げて、持ち合いから一旦転落したものの、5日夜の米雇用統計直後には151.74円まで戻した。

ドル円週間見通し 151円割れを持ち合い相場の徳俵として戻す(週報4月第二週)

151円割れを持ち合い相場の徳俵(とくだわら)として戻す

〇先週のドル円、株安等から週末150.80まで下落するも、米雇用統計の好調に151円台後半に戻して越週
〇米3月雇用統計、NFP大幅増の+30.3万人、失業率3.8%に低下、平均時給は前月比+0.3%に上昇
〇米早期利下げ期待低下、6月利下げ織り込みも5割台まで後退、年内2回利下げにとどまる可能性浮上
〇週末、米10年債利回りの終値は昨年末以来の高値4.41%、上昇続けば152円突破へのトリガーとなるか
〇152円手前の水準では政府・日銀による実弾介入の可能性あるも、152円超え断固阻止かは疑わしい
〇ドル円を持ち合いから下放れさせるのは、CPIの不冴えか中東情勢悪化からの世界連鎖株安のケース
〇151円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは、持ち合い上放れへ進む可能性
〇150.80割れからは3月21日安値150.26前後への下落を想定

【概況】

ドル円は4月3日夜に151.95円をつけたものの3月27日夜高値151.96円に届かず、152円手前での市場介入警戒による上値抵抗感が厚いとして下落に転じ、株安と米長期債利回り低下によるリスク回避型の円高により5日午前には150.80円へ下落して151円台を維持してきた持ち合いレンジから一時転落した。しかし円安基調は変わらないとして買い戻され、5日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数が予想を大幅に上回り失業率も改善したことによる米長期債利回り上昇をみて151.74円へ反騰し、その後も151.50円割れを買われてしっかりして先週を終えた。

【米雇用統計で利下げ先延ばし感高まる】

米労働省が4月5日に発表した3月の雇用統計では非農業部門就業者数が前月比30万3000人増となり2月の27万人増及び市場予想の20万人増を大幅に上回った。失業率は3.8%となり前月及び市場予想の3.9%を下回る改善だった。インフレ指標の平均時給伸び率は前年同月比4.1%上昇と2月の4.3%から減速したが予想と一致し、前月比は0.3%で予想と一致したが2月の0.2%(速報の0.1%から上方修正)を上回った。
賃金上昇によるインフレ圧力の低下は見られるものの就業者数の大幅増加と失業率改善は景気の強さを示しており、FRBにとっては利下げを急ぐ必要が後退している印象を与えた。

米金利先物市場における6月利下げ開始期待度は発表前の6割台中盤から5割台前半へ低下した。まだ5割を超えているが、今後のCPI等により5割を切る場合は7月や9月開始へずれ込む可能性が高まると思われる。利下げ回数についてハト派姿勢のパウエル議長は3月FOMCで示した年内3回利下げ想定を維持している印象だが、5日にはボウマン理事が5日に「金融政策の引き締め過ぎを避けるため、緩やかな利下げが結局適切になる」が「利下げが適切な段階ではまだない」と述べ、米ダラス連銀のローガン総裁は、利下げを検討するのは時期尚早だと述べており、年内2回利下げに留まる可能性も指摘され始めている。3月FOMCでは19人中10人が3回利下げ、9人が2回以下の利下げを想定した。

【米10年債利回り終値は昨年末以来高値、ダウは4日続落後に反発】

4月5日の米雇用統計が強めだったことで米長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.10%上昇の4.41%で終了、4月3日に付けた4.43%を超えなかったものの終値ベースでは昨年12月27日終値3.79%以降の最高とした。30年債利回りは0.08%高の4.56%で終了、4月3日の4.57%を超えなかったものの終値としては昨年12月27日終値3.95%以降の最高とした。利下げ問題に敏感な2年債利回りは前日比0.11%上昇の4.76%で終了、2月23日に付けた4.76%に迫り、終値としては1月12日終値4.15%以降の最高とした。

いずれも年3回利下げではなく2回以下となる可能性や、利下げ開始が6月ではなく9月等に先送りされる可能性を反映しており、ドル円にとっては日本長期債利回りが低水準に留まる中で日米金利差拡大による上昇要因となり、米長期債利回り上昇が続けば152円突破へのトリガーとなる可能性がある。
一方で4月5日のNYダウは前日比307.06ドル高と上昇したが、直前4営業日で1200ドルを超える下落だったことに対する売られ過ぎ感から買い戻されたが、第1四半期の大上昇から第2四半期入りで下落に転じている可能性があり、世界連鎖株安を招く場合は日経平均の下落とともにドル円への売り圧力となりかねない状況と思われる。ナスダック総合指数は199.44ポイント高と戻したが前日の228.38ポイント安解消には至らなかった。

【151円台中心の持ち合いから上放れを試す】

【151円台中心の持ち合いから上放れを試す】

ドル円は4月5日に150.80円まで下げて3月22日以降続いてきた151円割れを回避した持ち合いからいったん転落したものの、3月21日未明の米FOMC通過後のドル安局面で付けた安値150.26円割れには至らず、5日夜の米雇用統計直後には151.74円まで戻した。
4月5日安値150.80円については151円台中心の持ち合い相場における徳俵に足が残って切り返した状況と考え、さらに安値更新へ進まないうちは151円台中心の持ち合い相場の継続とし、持ち合い上放れ=152円台へ向かう可能性を残した状況と考える。

152円手前の水準では政府・日銀による実弾介入が入っても不思議ないが、大規模介入のあった2022年10月21日高値151.94円をわずかでも超えたこと、2週以上にわたって151円台を中心とした持ち合い=現行の円安水準を結果的に容認してきたことを踏まえれば、果たして152円超えを断固として阻止する姿勢なのか疑わしいところもある。152円に対しては神田財務官によるけん制から神田シーリングという見方もされているが、かつて125円台を黒田シーリングとしたように植田総裁が「これ以上の円安はない」と発言するような植田シーリングでなければ市場を押さえつけられないのではないかと思う。

3月19日の日銀会合でマイナス金利とYCCを解除したにもかかわらず円高を誘導すべく追加利上げ姿勢をアピールしていれば会合後の円安反応にはならなかっただろうと思われるが、暫くは金融緩和状態が続くことを繰り返し強調したことで円安を招き、その後も市場反応を修正するような強烈なプレッシャーをかけなかったことが現在の円安状態継続をもたらしている。米長期債利回りがさらに上昇すればファンダメンタルズは円安継続となり、市場も介入姿勢を挑発するように152円超えへ向かうと考えられ、152円到達時に実弾介入がなければ介入があるまで153円、154円、155円を順次試して行くと思われる。
ドル円を現状の持ち合いから下放れさせるとすれば、そのきっかけは2022年11月10日の米10月CPI上昇率が予想を大幅に下回ったことによるドル安=逆CPIショックの再現で米長期債利回りが急低下する場合か、中東情勢悪化によるリスク回避で世界連鎖株安が発生してクロス円全般が急激に円高へ風向きを変える場合だろう。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、4月5日安値150.80円を下値支持線、3月27日高値151.96円及び152円を上値抵抗線とする。
(2)151円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは持ち合い相場の継続により持ち合い上放れへ進む可能性があるとみる。151.96円から152円前後では市場介入警戒で売られやすいとみるが、実弾介入無しで152円台へ乗せる場合には152円台中盤(152.35円から152.65円)を試し、さらに153円台へ進む流れと考える。
(3)4月5日安値150.80円割れからは3月21日安値150.26円前後への下落を想定する。150.0円台前半へ下げた後も150.80円以下に留まる場合は持ち合い下放れの開始と考え、その後に150円を割り込む場合は昨年12月以降の上昇一巡による下落期入りとみて149円前後へ向かう下落を想定する。

【当面の予定】

4/8(月)
休場 タイ、インドネシア
08:30 (日) 2月 勤労統計・現金給与総額 前年同月比 (1月 2.0%、予想 1.9%)
08:50 (日) 2月 経常収支・季調前 (1月 4382億円、予想 2兆9907億円)
08:50 (日) 2月 経常収支・季調済 (1月 2兆7275億円、予想 2兆97億円)
08:50 (日) 2月 貿易収支・国際収支ベース (1月 -1兆4427億円、予想 -1958億円)
14:00 (日) 3月 景気ウオッチャー現状判断 (2月 51.3、予想 51.3)
14:00 (日) 3月 景気ウオッチャー先行き (2月 53.0、予想 53.5)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 1.0%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 -5.5%)
15:00 (独) 2月 貿易収支 (1月 275億ユーロ)
24:30 (英) ブリーデン英中銀副総裁、講演

4/9(火)
休場 インドネシア、マレーシア(ゴム市場)、フィリピン
08:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、タウンホール会議参加
09:30 (豪) 4月 ウエストパック消費者信頼感指数 (3月 84.4)
10:30 (豪) 3月 NAB企業景況感指数 (2月 10)
14:00 (日) 3月 消費者態度指数・一般世帯 (2月 39.1、予想 39.6)
26:00 (米) 財務省3年債入札

4/10(水)
日米首脳会談、韓国総選挙
休場 トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.3%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年同月比 (2月 0.6%、予想 0.8%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:15 (日) 植田日銀総裁、信託大会挨拶

21:30 (米) 3月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (2月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (2月 3.2%、予想 3.5%)
21:30 (米) 3月 コアCPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (2月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 コアCPI 前年同月比 (2月 3.8%、予想 3.7%)
21:45 (米) ボーマンFRB理事、ECBフォーラム参加
22:45 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
23:00 (米) 2月 卸売売上高 前月比 (1月 -1.7%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫
25:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、パネル討論会
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 3月 月次財政収支 (2月 -2963億ドル)
27:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨

4/11(木)
休場 マレーシア、インドネシア、インド、トルコ
08:50 (日) 3月 マネーストックM2 前年同月比 (2月 2.5%)
10:30 (中) 3月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (2月 0.7%、予想 0.4%)
10:30 (中) 3月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (2月 -2.7%、予想 -2.8%)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀行) 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
21:30 (米) 3月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (2月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (2月 1.6%)
21:30 (米) 3月 コアPPI・食品・エネルギー除く 前月比 (2月  0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 コアPPI 前年同月比 (2月 2.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.1万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
26:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会合参加

4/12(金)
休場 トルコ、インドネシア
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル建て (2月 1251.6億ドル、予想 722.0億ドル)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前月比 (1月 -0.1%)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (1月 -3.4%)
13:30 (日) 2月 設備稼働率 前月比 (1月 -7.9%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.4%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.2%)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 0.2%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.2%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 0.5%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・商品 (1月 -145.15億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支 (1月 -31.29億ポンド)

21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.1%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (3月 79.4、予想 80.0)
27:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
28:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会

注:ポイント要約は編集部

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