ドル円見通し 日銀動向を気にしつつ、米PPI発表後のドル高優勢で3月12日夜高値を超える(24/3/15)

米長期債利回りが上昇、為替市場はドル全面高となった。

ドル円見通し 日銀動向を気にしつつ、米PPI発表後のドル高優勢で3月12日夜高値を超える(24/3/15)

日銀動向を気にしつつ、米PPI発表後のドル高優勢で3月12日夜高値を超える

〇ドル円、3/14夜の米PPI発表後のドル高で上昇しかけるも、日銀報道で22時台に147.44まで反落
〇その後全般のドル高に合わせ148円台回復、3/15の3時台に148.35まで上昇し3/12夜高値を上抜く
〇米PPI、全体の前月比は予想を上回る伸び、米長期債利回りが上昇し為替市場はドル全面高へ
〇日銀、来週の会合でマイナス金利を解除する方向で調整に入ったと報じられる
〇米長期債利回りは大幅上昇、米国株は長期金利上昇を嫌って下落
〇147.44以上を維持するうちは一段高余地ありとし、148.50超えからは149円前後への上昇を想定する
〇147.44割れからは下落期入りとみて、147.00前後への下落を想定する

【概況】

3月14日夜に発表された米2月PPI(生産者物価指数)上昇率が全体の前月比で0.6%となり市場予想の0.3%を大幅に上回り、米2月小売売上高が市場予想を下回ったものの1月のマイナスからプラスへ改善し、新規失業保険申請件数も予想を下回る改善となった。これらを見て米長期債利回りが上昇、為替市場はドル全面高となった。
ドル円は3月12日夜の米2月CPI発表後に148.16円へ上昇した後は高値更新へ進めず、14日夜の米PPI発表後のドル高で上昇しかけたところ、22時過ぎに日銀は来週の会合でマイナス金利等解除を決定する見込みと一部メディアが報じたことで22時台に147.44円まで反落したが、日銀動向についてはある程度織り込んできたとして短期的な円買いが一巡すると全般のドル高に合わせて148円台を回復し、15日3時台には148.35円まで高値を伸ばして3月12日夜高値を上抜いた。

日銀のマイナス金利等解除へ向けた動きについては3月18-19日会合で決定される可能性があり、それまでは円高バイアスがかかりやすい状況にあるものの、3月11日にかけての大幅下落で材料的には消化しつつある印象だ。一方で米国の利下げについては6月会合での利下げ決定への期待度が6割まで低下しており、インフレ高止まりリスクを踏まえて年内利下げ回数が昨年12月時点の3回から減る可能性も指摘されているため、3月19-20日のFOMC結果を見るまではドル高バイアスがかかりやすい状況ともいえる。ドル円は日米の金融政策姿勢の強弱を見定めながらやや戻し気味に方向感を探るところと思われる。
3月15日は連合の春闘第1回集計結果、米国市場時間ではNY連銀製造業景況指数、米鉱工業生産、米ミシガン大の3月消費者信頼感指数と期待インフレ率の発表がある。

【米PPI、全体の前月比は予想を上回る伸び】

3月14日夜に米労働省が発表した2月PPI(生産者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.6%となり1月及び市場予想の0.3%を大幅に上回り、前年同月比は1.6%で1月の1.0%及び市場予想の1.1%を大幅に上回った。ガソリンが1月に低下した反動で大幅上昇したこと等エネルギー関連が全体の上昇率を押し上げたが、コア指数の上昇率は前月比が0.3%で市場予想の0.2%を上回ったものの1月の0.5%から低下し、前年同月比は2.0%で予想の1.9%を上回ったものの1月と変わらなかった。コア指数の鈍化傾向は続いているものの全体はまだ高止まりないしは上振れしやすい状況と思われ、2月CPIを踏まえれば米FRBが利下げ開始について先延ばしするリスクよりも早まるリスクが意識されやすい状況と思われる。

米商務省による2月小売売上高は前月比0.6%増となり市場予想の0.8%増を下回ったものの1月のマイナス1.1%から改善、自動車を除くと0.3%増で1月のマイナス0.8%から改善した。
米労働省による新規失業保険申請件数は3月9日までの週間で前週比1000件減少の20万9000件となり2週連続で改善し、失業保険受給者総数は3月2日までの週間で181万1000人で前週から1万7000人増だった。
これら発表を受けて米金利先物市場における6月利下げ開始期待度は13日の66.7%から60.6%へ低下した。

【日銀、3月18-19日会合でマイナス金利等解除へ】

3月14日22時過ぎに時事通信社は独自取材として日銀が来週の会合でマイナス金利を解除する方向で調整に入ったと報じた。春闘で大企業の賃上げが昨年を上回っていること、15日の連合による第1回集計でも高い伸び率が見込まれるため、短期金利(無担保コール翌日物レート)をマイナス0.1%から「0〜0.1%」へ引き上げ、YCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)を撤廃する見通しという。利上げなら2007年以来17年振りとなる。YCC撤廃後には長期金利の急上昇を防ぐために国債の大量買い入れを当面続けるとされ、現状の買い入れ規模(月間凡そ6兆円)から大幅に減少することはないとされるが、上場投資信託(ETF)の買い入れは中止される見込みだという。
日銀の植田総裁は3月13日の参院予算委員会で「2%の物価目標の実現が見通せれば、マイナス金利とYCCの枠組み修正を検討する」等と答弁し、これまでの発言よりも前傾姿勢がトーンダウンしているのではないかとの見方もあったようだが、3月14日夜の時事報道により政策転換へ踏み込む確率が上がったようだ。

【米10年債利回りは連騰、米国株は長期金利上昇を嫌って下げる】

3月14日の米長期債利回りは米PPIや小売の改善等を見て大幅上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.10%上昇の4.29%で3月11日から4連騰となり、2月22日に付けたこの間のピークである4.35%へ迫ってきた。30年債利回りも前日比0.10%上昇の4.44%となり3月7日からの連騰を伸ばして2月22日に付けたこの間のピークである4.51%へ迫ってきた。
2年債利回りは前日比0.06%上昇の4.70%となり、3月11日から4連騰、2月23日に付けたピークの4.76%へ迫ってきている。
一方でNYダウは前日比137.66ドル安、ナスダック総合指数は49.24ポイント安と下落しており、米長期債利回り連騰を嫌って売られている。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は3月12日夜へ上昇した後は高値更新へ進めずにいたものの徐々に安値ラインを切り上げて60分足レベルでは上値抵抗線がほぼフラットな三角持ち合いの様相だったが、3月14日夜の上昇で12日夜高値を超えて持ち合い上放れに入った。3月11日安値から3日目となる14日夜安値を目先の底として一段高入りしているため、3月12日夜高値を基準として15日夜から19日夜にかけての間へ高値試しを続けやすくなったと思われる。しかし日銀会合を来週に控えているために上昇が勢い付くには時期尚早の印象もあり、3月14日夜安値147.44円を割り込む場合はいったん下げに入るとみて19日夜から21日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、3月14日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンへ一時潜り込んでから上抜けてきているため、遅行スパン好転中の高値試し優先とする。ただし、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は3月15日未明に70ポイントへ到達した後も60ポイント台を維持しているのでまだ上昇余地ありとする。50ポイントを割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、50ポイント割れから続落に入る場合は下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月14日夜安値147.44円を下値支持線、148.50円を上値抵抗線とする。
(2)147.44円以上を維持するうちは一段高余地ありとし、148.50円超えからは149円前後への上昇を想定する。149円手前は反落警戒とするが、148円台を維持しての推移なら週明けも高値試しへ進みやすいとみる。
(3)147.44円割れからは下落期入りとみて147.00円前後への下落を想定する。147円前後は買われやすいとみるが、147.44円を下回っての推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

3/15(金)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 0.7%、予想 0.1%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 -2.4、予想 -7.0)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.2%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.0%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.5%、予想 78.5%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (2月 76.9、予想 76.9)



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