ドル円見通し 日銀の高田審議委員発言から急落するも149円台維持で反騰(24/3/1)

日銀のマイナス金利解除後も緩和的な状況が続くとの見方が149円割れを回避しての反騰につながった印象だ。

ドル円見通し 日銀の高田審議委員発言から急落するも149円台維持で反騰(24/3/1)

ドル円見通し 日銀の高田審議委員発言から急落するも149円台維持で反騰

〇ドル円、2/29午前の日銀高田審議委員発言報道をきっかけに急落商状、夕刻149.61まで下げる
〇その後150.14まで戻すも、米1月PCEデフレーター鈍化によるドル安で3/1未明に149.20へ一段安
〇しかし149円台序盤を売られ過ぎ感により買い戻され、3/1朝には150円到達へ戻す
〇日銀の高田審議員、講演にて出口検討が必要との見解示す
〇昨日発表の米1月PCEデフレーターは予想通りに鈍化、4か月連続の低下
〇米長期債利回りは総じて低下、NYダウは4日ぶりの反騰、ナスダックも上昇
〇149.75を上回るうちは反騰継続の可能性ありとし、150.50を試す上昇を想定する
〇149.75割れからは下落再開として149.20試しとし、底割れからは148円台後半への下落を想定する

【概況】

ドル円は2月29日未明に150.84円を付けて2月13日夜の米CPI発表後の急伸で付けた2月14日早朝高値150.88円に迫ったが、151円手前の抵抗感が払しょくできずにやや下げ、29日午前に日銀の高田審議委員が講演において金融緩和政策からの出口へ向けた検討が必要等と述べたとの報道をきっかけとして150.50円を割り込んで急落商状に陥り、夕刻に149.61円まで下げてから150.14円まで戻したものの米1月PCEデフレーターが12月から鈍化したことによるドル安で3月1日未明には149.20円へ一段安した。しかし149円台序盤を売られ過ぎ感により買い戻され、1日朝には150円到達へ戻した。
日銀のマイナス金利解除へ向けた動きと米国のインフレ鈍化による6月利下げを意識した下落であり、2月13日の米CPI発表から急伸する前の安値149.26円を若干割り込んだが、日銀のマイナス金利解除後も緩和的な状況が続くとの見方が149円割れを回避しての反騰につながった印象だ。

【日銀の高田委員、出口検討が必要】

日銀の高田審議員は2月29日の滋賀における講演で、「不確実性はあるものの2%の物価安定の目標実現がようやく見通せる状況になってきた」「強力な金融緩和からの出口対応に向けた検討が必要」との見解を示した。高田氏はイールドカーブコントロール(YCC=長短金利操作)やマイナス金利解除などの出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討が必要と述べた。

3月15日には連合による大企業の賃上げ回答の集計発表があり、日銀は3月18-19日に金融政策決定会合を開くため、春闘内容次第ではマイナス金利解除が決定される可能性もあると注目している。
マイナス金利解除については日銀の植田総裁も2月22日に「デフレではなくインフレの状態にある」と述べて条件が整いつつある印象を与えている。しかし、2月8日に内田副総裁がマイナス金利解除後についても「短期政策金利の連続的な利上げは想定しておらず、緩和的な金融環境を維持していく」と述べ、植田総裁も2月9日に「マイナス金利の解除を実施したとしても緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と述べており、市場はマイナス金利解除が近いとの認識を織り込みつつ、解除後に急激な円高へ進むとの警戒感はやや緩んできている印象もある。

【米1月PCEデフレーターは予想通りに鈍化】

米商務省が2月29日に発表した1月のPCE(個人消費支出)デフレーター上昇率は前年比2.4%となり市場予想と一致して12月の2.6%から鈍化した。4か月連続の低下となり2021年2月以来の低水準となった。エネルギーと食品を除いたコア指数の上昇率は前年比2.8%で予想と一致して12月の2.9%から鈍化した。コア指数の前月比は0.4%で予想と一致して12月の0.1%から伸びが再加速しており、緩やかなインフレ鈍化傾向を示しつつもまだ上振れのリスクも残っている印象を与えた。
前年比の項目別ではエネルギー関連で4.9%低下、自動車等耐久財が2.4%低下する一方でサービス価格は3.9%上昇しており、今後はサービス価格と賃金上昇が落ち着くかどうか注目される。

米労働省による失業保険申請(季節調整済み)件数は2月24日までの週間で前週比1万3000件増の21万5000件となり4週ぶりに悪化した。失業保険受給者総数は2月17日までの週間で190万5000人となり前週から4万5000人増加した。
2月のシカゴ購買部景況指数は44.0となり1月の46.0から悪化して市場予想の48.0への改善に反した。
1月の米住宅販売保留指数は前月比4.9%低下となり12月の5.7%から悪化して市場予想の1.0%を下回った。前年同月比は6.8%低下となり12月の1.0%低下及び市場予想の4.4%低下を下回った。

【米長期債利回りは米PCEデフレーター鈍化で低下、ダウは反騰】

2月29日の米長期債利回りはPCEデフレーターの鈍化により総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.32%まで上昇してから米PCE統計発表後に4.23%へ低下、その後やや戻して前日比0.2%低下の4.25%で終了した。30年債利回りは前日比0.03%低下の4.38%、2年債利回りは0.02%低下の4.62%となった。
アトランタ連銀のボスティック総裁は2月29日にFRBの利下げ開始時期は「今年夏におそらく適切になる」と述べた。「勝利宣言は時期尚早」とし、「今後数カ月の動向を見守る必要がある」したものの、同総裁発言により6月FOMCでの利下げ開始期待が高まった。総裁はインフレ率が目標の2%達成する時期については2025年末と予想していたが想定よりも速やかだったために目標到達時期の予想を前倒しした」と述べている。

一方で米長期債利回り低下と夏の利下げ期待度が固まったことでNYダウは前日比47.37ドル高と上昇、4日ぶりの反騰となり、ナスダック総合指数は前日比144.18ポイント高と上昇し、2月23日に付けた2022年10月以降の最高値に迫り、終値ベースではこの間の最高値とした。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は2月27日未明高値150.83円と2月29日未明高値150.84円がダブルトップとなり3月1日未明安値149.20円へ急落した。その後の反騰で150円台へ戻すなど乱調な展開が続いているため、149.75円割れからは下落再開とし、3月1日未明安値を割り込む場合は1日夜から5日深夜にかけての間への下落を想定するが、150.50円を超える場合は3月1日夜から5日夜にかけての間への上昇と2月29日未明高値150.84円等のある151円手前を試す流れとみる。

60分足の一目均衡表では、2月29日午前からの急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、3月1日未明安値からの反騰により遅行スパンは好転しつつある。乱調な展開のため、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、先行スパンを上抜くところからは反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月28日夕刻から29日未明にかけての上昇時に指数のピークが切り下がる小規模な弱気逆行を見せてから急落に転じたが、29日昼から3月1日未明への一段安に際しては指数のボトムが切り上がる小規模な強気逆行を見せて反騰している。50ポイント以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは60ポイント台への上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下落再開として20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.75円を下値支持線、150.50円を上値抵抗線とする。
(2)149.75円を上回るうちは反騰継続の可能性ありとし、150.50円を試す上昇を想定する。150.50円前後では売られやすいとみるが、150.50円を超えて続伸する場合は2月29日未明高値150.84円等のある150.80円台への上昇を想定し、150円台を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)149.75円割れからは下落再開として3月1日未明安値149.20円試しとし、底割れからは148円台後半(148.85円から148.50円)への下落を想定する。148.50円前後は反騰警戒とするが、149.75円を下回ってsの推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

3/1(金)
10:30 (中) 2月 国家統計局製造業PMI (1月 49.2、予想 49.1)
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 50.8、予想 50.6)
14:00 (日) 2月 消費者態度指数・一般世帯 (1月 38.0、予想 38.3)
17:55 (独) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 42.3、予想 42.3)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 46.1、予想 46.1)
18:30 (英) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 47.1、予想 47.1)
19:00 (欧) 2月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (1月 2.8%、予想 2.5%)
19:00 (欧) 2月 コアHICP・速報値 前年同月比 (1月 3.3%、予想 2.9%)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 6.4%、予想 6.4%)
23:00 (英) ピル英中銀理事、講演

23:45 (米) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 51.5、予想 51.5)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 49.1、予想 49.5)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.9%、予想 0.2%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 79.6、予想 79.6)
24:15 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
27:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、パネル討論会
29:30 (米) クーグラーFRB理事、講演


注:ポイント要約は編集部

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