ドル円見通し 日銀副総裁発言からの円安一服、149円台前半中心の揉み合い
〇ドル円、2/12夜に一時148.90まで下げたところは買われたが、2/13未明高値は149.47に留まる
〇本日発表の米CPIをきっかけに、ドル円は150円へ挑戦するのかいったん仕切り直しに入るのか試される
〇米長期債利回りは上昇一服感、NYダウは史上最高値更新、ナスダックは4連騰後の下落
〇148.90以上での推移中は一段高余地ありとし、149.57超えからは150円前後試しとする
〇148.90割れからはいったん下げに入るとみて、148.50から148.30台にかけてを試す下落を想定する
【概況】
ドル円は2月2日夜の米雇用統計が予想以上に堅調だったことをきっかけとして直前の146.50円近辺から2月3日未明高値148.58円へ急伸し、2月6日未明に148.89円まで高値を伸ばしたところで買い一巡となり2月7日深夜にはいったん147.62円まで下げた。しかし2月8日の内田日銀副総裁発言が金融緩和政策終了へ向けてハト派姿勢だったことによる円売りで再上昇に入り、2月9日未明には149.47円へ上昇、さらに9日夕刻には149.57円を付けて昨年12月28日安値140.24円以降の高値を更新した。
2月9日夜に米国のCPI年次改定があり前年比は改定されなかったものの昨年12月の前月比は当初の0.3%から0.2%へ下方修正されたためにドル円は一時149.00円まで下げてから戻したが高値更新へは進めず、10日午前には149円台序盤へ下げた。12日夜に一時148.90円まで下げたところも買われたが13日未明高値は149.47円に留まった。
【早期利下げ期待盛り返すか、2月13日夜の米CPIに注目】
市場の関心は今夜の米CPIと15日夜の米小売売上高へ向いている。1月の米CPI上昇率に対する市場の事前予想は全体の前月比が0.2%(12月0.3%)、コア指数で0.3%(12月0.3%)。1月の米小売売上高に対する事前予想は前月比0.2%増(12月0.6%増)から鈍化すると見込まれている。これらを通過して米国の利下げ開始時期を探ることになるが、金利先物市場における期待度は3月利下げが1割台でほぼなくなったとされ、5月利下げは一時9割まで盛り上がったものの現状は5割台で五分五分の様相。ドル円としては米CPIをきっかけとして150円へ挑戦してゆくのかいったん仕切り直しに入るのか試される週となる。
FRB高官や地区連銀総裁らによる早期利下げ期待へのけん制が繰り返された結果だが、市場もそうした発言を織り込み済としつつある。NYダウが史上最高値更新まで大上昇してきたり米経済指標がさほど悪くないとはいえ、利下げを躊躇すればこれまでの金融引き締めによる弊害も顕在化し、早めに利下げすれば株価高によるバブル的な資産インフレを巻き起こす可能性もあるため、早すぎる利下げのリスクと遅すぎる利下げのリスクの中間点に来ているのだろうと思われる。2月4日にパウエルFRB議長がインタビューで米連邦政府債務問題に言及したことは異例でもあり、米国にとっての大きなリスク問題への警鐘とすれば、いつまでも躊躇していられない内心を示したような印象も受ける。
米労働省は2月9日に2023年のCPI(消費者物価指数)の年次改定を行った。前年比は改定の対象とならなかったが、前月比は2023年8月から12月までの全体が0.5%、0.4%、0.1%、0.2%、0.2%とされ、コア指数では0.2%、0.3%、0.2%、0.3%、0.3%とされたが、エネルギーを除くと4.4%、1.2%、-2.1%、-1.6%、-0.2%と3か月連続でマイナスだった。PPI(生産者物価指数)の伸び率は8月から12月までの全体が0.7%、0.4%、-0.4%、-0.1%、-0.1%で3か月連続のマイナス、コア指数では0.2%、0.2%、0.0%、0.0%、0.0%だった。
ニューヨーク連銀が2月12日に発表した1月消費者調査では、1年先期待インフレ率が3.00%となり4か月連続の低下で2020年12月以来の低水準となった。3年先期待インフレ率は2.35%で12月の2.62%から大幅に鈍化して2020年3月以来最低となった。
米財務省が2月12日に発表した1月の財政赤字は219億3000万ドルとなる前年同月比で43%減だったが、2024年会計年度(2023年10月から2024年9月)における累計赤字は5318億6000万ドルで前年同期比16.0%増となっている。FRBとしては利下げを躊躇することによる米国債利払い増による財政圧迫も避けたいところだ。
【米長期債利回りは上昇一服感、NYダウは史上最高値更新】
2月12日の米長期債利回りは米CPIを控えてまちまち。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比変わらずの4.18%だったが、一時4.202%をつけて12月27日の3.78%以降の高値としたが、4.20%前後に抵抗感あり高止まりの様相だ。
30年債利回りは先週末比0.01%上昇の4.38%、政策金利動向に敏感な2年債利回りは2月9日に4.50%をつけて1月12日の4.12%以降の高値としたが、12日は先週末比0.01%低下の4.48%と上げ渋った。
一方でNYダウの2月12日は先週末比125.69ドル高と上昇し、高値で38927.08ドルを付けて史上最高値を更新、終値ベースも史上最高値とした。ナスダック総合指数は2月9日まで4連騰し、12日は16080.07を付けて2022年10月以降の最高値を更新したが利食いに圧されて先週末比48.11ポイント安に終わった。しかし米国の利下げ開始が多少遅れても金融緩和期に入ることによるソフトランディングから景気拡大へ向かうとの楽観的な株高期待がやや過熱している印象であり、FRBの利下げ開始を躊躇させる要因にもなっているようだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は2月7日深夜安値147.62円から9日高値149.57円まで一段高したところで上昇一服に入った。2月7日深夜から3日目となる12日夜安値で148.90円を付けてから戻しているためすでに目先の底を付けて上昇期に入っている可能性があると注意し、2月9日高値を超えないうちは12日夜安値148.90円割れから下げ再開として13日夜から14日夜にかけての間への下落余地ありとするが、9日高値超えからは新たな上昇期入りとして14日午後から16日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、2月9日夕高値以降を149円台前半中心の持ち合いとしているので方向感にかけるが、12日夜安値割れを回避するうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、12日夜安値割れからは下落が長引くとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は2月8日夜に80ポイントを超えてから12日夜に30ポイント台まで低下したが、13日未明への反発時には一時60ポイントを超えてその後も50ポイント台を維持している。50ポイント台を維持するうちは上昇余地ありとし、65ポイント超えからは70ポイント台中盤への上昇を想定するが、50ポイント割れを下向きとし、45ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月12日夜安値148.90円を下値支持線、2月9日夕高値149.57円を上値抵抗線とする。
(2)148.90円以上での推移中は一段高余地ありとし、149.57円超えからは150円前後試しとする。150円手前は反落警戒とするが、149.50円以上を維持しての推移なら14日もも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)148.90円割れからはいったん下げに入るとみて148.50円から148.30円台にかけての水準を試す下落を想定する。148.30円以下は反騰注意とするが、148.90円を割り込んでの推移なら14日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
2/13(火)
休場 中国、香港、台湾、ベトナム、ブラジル
16:00 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 4.2%、予想 4.2%)
19:00 (独) 2月 ZEW景況感 (1月 15.2、予想 17.3)
19:00 (欧) 2月 ZEW景況感 (1月 22.7)
22:30 (米) 1月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (12月 3.4%、予想 2.9%)
22:30 (米) 1月 コアCPI 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 コアCPI 前年同月比 (12月 3.9%、予想 3.7%)
2/14(水)
休場 中国、台湾、ベトナム
16:00 (英) 1月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (12月 0.4%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 1月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (12月 4.0%、予想 4.2%)
16:00 (英) 1月 コアCPI 前年同月比 (12月 5.1%、予想 5.2%))
16:00 (英) 1月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (12月 5.2%、予想 5.2%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -0.3%、予想 -0.2%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -6.8%、予想 -4.1%)
23:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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