Monthly Market Insights(24/2)マイナス金利解除はやはり今春? 

1月22日・23日の日程で開催された日銀の金融政策決定会合で、政策変更はなされなかった。

Monthly Market Insights(24/2)マイナス金利解除はやはり今春? 

Monthly Market Insights(24/2)マイナス金利解除はやはり今春?

1月22日・23日の日程で開催された日銀の金融政策決定会合で、政策変更はなされなかった。昨年末から認証不正問題の拡大でダイハツ工業が国内自動車工場の稼働を停止したことや正月に発生した能登半島地震の影響などを考えれば、このタイミングでの金融緩和縮小方向での政策変更は選択肢として取り得なかったことは容易に想像がつく。

経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、冒頭の基本的見解<概要>において、2%の物価安定の目標については、「実現する確度は少しずつ高まっている」との文言が追記されたり、リスクバランスについては「2025年度は下振れリスクの方が大きい」との文言が削除されたり、と少なくとも前回の2023年10月レポートからの後退は見られなかったと言って良いだろう。

しかし、展望レポートを読む度に感じるが、金融政策運営については、2023年4月発表文以降「・・・・内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、・・・」という定型フレーズが必ず織り込まれるようになった。
「不確実性がきわめて高い」という文言は、もはや常套句になった感があるが、「不確実性がきわめて高い」という経済・金融の状況が、ここ一年近く継続しているとはあまり思えない。「不確実性」という言葉を使うのなら、「不確実性がいくぶん和らぎ」とか、「不確実性が一気に高まり」とか、先行きの不透明感の濃淡を表現することで市場参加者とのコミュニケーションをもっと図れば良いのにと思う。
今の時点で「不確実性がきわめて高い」のなら、アメリカの大統領選(11月5日)に向けて、その直前となる10月31日発表の展望レポートでは、どういう表現を使うつもりだろうか、と突っ込みたくもなる。

今回の展望レポートでは、2023〜2025年度の政策委員の大勢見通しにおいて、2024年度・2025年度ともに、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の見通しの中央値が前回の10月の展望レポートと同じ1.9%と発表された。
この1.9%という数値は実に絶妙だ。物価目標の2%にはいまだに届かないが、2%までほんの一息のところにある、と思いっきり数字で表現している。前回に続き1.9%の見通しが続いていることから見ても前回の2023年10月レポートからの後退はなかったと読むべきだろう。
このところの「2%の物価目標の持続的・安定的な実現する確度は引き続き少しずつ高まっている」という総裁のコメントと合わせて考えれば3月会合もしくは4月会合でのマイナス金利政策の変更は俎上に載ったままだと言えよう。

ここで、注目されるのが「賃金と物価の好循環」が実現されるか、ということだが、この「賃金と物価の好循環」というキャッチコピーそのものに違和感がある。本来は、「労働生産性の向上に伴う賃金と物価の好循環」というべきではないだろうか。賃上げの原資を産み出す労働生産性の向上がない中での賃金と物価の好循環など短命に終わることが目に見えているからだ。

労働生産性の向上は、より付加価値の高い商品・サービスの提供や、自動化、ICT化などで、生産の量の拡大や質の改善を図ることから始まる。そのアウトプットの向上に見合った対価を得ることで、単位時間当たりの生産性が高まり賃上げの原資ができる訳だが、ここは日銀の責務の範疇ではない。あえて言えば、長期金利を低位に誘導することで設備投資をしやすい環境を作ることだが、長期金利を0%近辺に抑える政策はすでに7年を超えて継続している。

途中、コロナ禍の時代があったにせよ、企業が抱える潜在的な設備投資需要を前倒しで実行できる金融環境を日銀が7年以上も継続したのに、労働生産性が上がらないとすれば、それは企業サイドの知恵不足・努力不足・実行力不足。もしくは生産性を上げるのに現場の実態に即した支援策を打てない政府サイドの問題だ。

日銀の責務は物価の安定と金融システムの安定だ。
日銀としては、異次元の金融緩和を更にサポートする意味で導入されたマイナス金利政策という異常な政策から脱却する千載一遇のチャンスを迎えている。
賃上げの確度が高まれば、いつでも動ける状態にあるのだから、3月もしくは4月の決定会合でマイナス金利政策からは脱却するのが正解のように思える。むしろ展望レポートの発表のない3月の方が動き易いのではないか。

マイナス金利政策が変更されたところで、おそらく円の短期金利の水準が0.1%上がるだけだという認識も市場参加者に刷り込まれてきた。とは言え、日米金利差が縮小することへの市場の恐怖は強いかもしれないが、コロナ危機の顕現化した2020年3月は米国が一か月に二回政策金利を下げ、米ドルと円の短期金利差は一気に1.5%も縮まった。ドル円相場はその一か月で8円下げて10円上げるという短期的な値動きこそ荒かったものの、結局、行ってこい相場に留まった。
市場の不連続性を回避するのは、日銀がどれだけ丁寧な説明ができるか次第で、それが出来れば市場の混乱は限定的に留まるだろう。

なお、筆者の今年のドル円為替相場の見通しについては、ドル円年間見通し2024年のドル円為替相場を考える(24/1/30) | FX羅針盤
の記事をご参照いただければ幸甚である。

次回に続く

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