ドル円年間見通し 「ややドル高」見通し、ただ後半はドル安か(24/1/30)

「年間を通したドル/円の見通しは、『ドルの中立』ないしは『ドルのやや強気』  年間レンジは130-154円」−−と予想する

ドル円年間見通し 「ややドル高」見通し、ただ後半はドル安か(24/1/30)

「ややドル高」見通し、ただ後半はドル安か

今年も「ドル/円の年間相場見通し」をレポートさせていただく。例年の如くまずは「結論(メインシナリオ)」を指摘したうえで、「何故そうした結論になったのか」という理由について報じてみたい。では、今年の年間見通しの「結論」から。

「年間を通したドル円の見通しは、『ドルの中立』ないし『ドルのやや強気』年間レンジは130-154円」
−−と予想する。

@テクニカル 

「一年間に為替相場がどの程度動くのか」−−を数値化した「年間変動率」という考え方がある。過去に何度かレポートしているが、一昨年(2022年)に変動相場制以降でトップクラスの年間33%変動を記録したことで、ドル/円は年間を通した「年間変動率」も上昇し、「18%」程度動くことが現在の平均値となっている。
ちなみに、昨年のドル/円は127.22-151.92円という年間レンジで、変動幅は24.70円。そして変動率は18.85%だった。

筆者の使用しているデータで今年の取引が開始された140.90円を起点とし、自身の相場観である「中立もしくはドルのやや強気」を参考に、年間変動率の18%を上(ドル高)方向に10%、下(ドル安)方向に8%動く−−と仮定して計算すると、今年の予想レンジはザックリ「128.00-155.00円」となる。
これからすると、昨年並みそして「平均的な変動」と考えても、ドル/円は一年間に26-27円動いても決して不思議ではないわけだ。

いずれにしても、ドル/円相場は2018-20年に見られたような年間変動率が約10%、年間変動幅も10円程度にとどまり、「オワコン」商状と揶揄された状況から完全に抜け出した公算が大きい。ドル/円相場はレベル的な意味合いだけでなく、一年間を通した高ボラティリティ、変動幅の拡大という観点からも2022年を境として、「新たなステージ」に入ったと思われる。
そんな今年のドル/円の今年のレンジ予想は、先の計算で求められたレンジを参考に少しだけ修正を加えた24円レンジの「130-154円」としておきたいと思う。

一方、以下では別のテクニカル分析を参考にして、今年のドル/円が年間を通しておおよそどういう展開をたどるのかを予想したい。

詳細は別表を参照にされたいが、「ドル/円は10-15ヵ月周期でボトムを付ける」という短期サイクルがあることがわかっている。そして、その観点からすると、昨年末12月28日につけたドル安値140.26円が「前回のサイクルボトム」であった公算が大きいようだ。
何故なら、前々回のサイクルボトムに当たる2023年1月16日の安値127.22円から、140.26円までに要した期間が12ヵ月弱でパターンにピタリと合致しているうえ、周知のように昨年末140.26円を目先ボトムにドルは148.80円(本稿執筆時;1月26日現在)まで、8円を超える上昇をたどっていることによる。

@テクニカル 

仮に、その見方が正しいとすれば、足もとのドルは新たな上昇サイクルに入っており、過去の経験則からすると下落期間の半分程度、つまり5-7ヵ月程度の期間にわたりドル高傾向を維持しても不思議はなさそうだ。
そして、前段で指摘した内容との相関性を考えれば、そのなかでドルは年間高値「154円」程度を示現し、年末に向けて下落する−−ことになるのかもしれない。非常に大雑把に捉えれば、2024年相場は年明け以降「140円→154円→130円」といった値動きをたどることになるのではないかと、現段階では予想している。

A材料

為替を中心として、今年の金融市場に影響を与えそうな材料を考えた場合、大きく3つあると考えている。
すなわち「@日米を中心とした金融政策」、「A各国政治情勢」、そして「B地政学リスクの拡大」−−だ。

AとBについては、共通する事項も多いのでまとめて、まずはそちらの話から進めたい。
今年の世界政治情勢を見る際、最初に目に付くのは各国で重要な選挙が相次ぐことだろう。幾つか実例を挙げても、すでに終わった1月の「台湾総統選」を皮切りに、3月「ロシア大統領選」、4月「韓国総選挙」、6月「欧州議会選」、11月「米大統領選」−−などとなり、そのほか日程は未定ながら、日本においてもほぼ確実に衆院選が行われる見通しだ。各国とも選挙民は、それら選挙においていったいどういった判断を下すのだろうか。米大統領選が最たるものだが、場合によっては実施される各国選挙結果が為替市場に多大な影響を与えかねない。波乱要因として、十分に注意しておいて損はないと思っている。

一方、前述したような重要な選挙こそないものの、各種の経済的な問題と絡め中国政治情勢にも要注意だろう。不動産危機がいまだ続くなか国内景気が低迷。若年者を中心とした失業率の上昇やデフレ懸念の台頭、さらに中国国内からの止まらない資本流出−−など明るい話題がほとんどない状況だ。

米国や日本をはじめとする西側諸国は、中国とのデカップリングを積極的に進めているため、経済面で日本などが「中国リスク」による大きなダメージを負う危険性は低下しつつあるとの見方もあるが、問題は軍事的な動き。前述したB「地政学リスク」と絡む話になるけれど、中国は国内の不満の高まりから目を逸らすため、国内の団結を図るために台湾やフィリピンへの侵攻。さらには、尖閣諸島など日本をターゲットにした動きが、さらに先鋭化する危険も専門家のあいだでは取り沙汰されている。あまり想像したくないが、日本も「当事者」として戦禍に巻き込まれる危険性がゼロではないということを、十分に認識しておく段階にあるのではなかろうか。そして、これはもちろん為替市場においても波乱要因のひとつとなりかねない。以前ほど明確ではなくなりつつあるが、基本的な「有事のドル買い」という構図はいまだに健在。アジア地域を含めた「地政学リスク」の高まりは、結局のところドルの支援材料になりかねないと考える。

一方、@で取り上げた「日米を中心とした金融政策」は、昨年末にかけて日米金利差の「早期」縮小観測が有力視されていた。大まかに言って、米欧などが早い段階での金利の引き下げに転じると予想される反面、日本は日銀の植田総裁が昨年12月7日の参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことなどを材料に、いよいよ政策金利の引き上げが見込まれたことによる。一部では「1月金融政策変更」観測が取り沙汰されていたほどだ(結果は「見送り」で確定)。

しかし、周知ように今年に入り発表される米景気や雇用指標は総じて良好な内容であるうえ、米地区連銀総裁など当局者の発言も早期利下げを否定するものもある。現状であれば米利下げは「早くて5月以降」などといった見方が優勢であると思われる。
また、日本も日経新聞など一部メディアが政策の転換を依然として根強く囃し立てているものの、果たしてドラスティックな金利引き上げに動くことが出来るのか大いに疑問だ。ちなみに、ブルームバーグでは、1月1日に能登半島地震が起こった翌2日に「今年前半に予想されていた日本銀行のマイナス金利の解除は困難になったとの声も出ている」と指摘していたが、筆者はこの見方に疑問を抱いている。

何故なら、たとえば日銀は昨年11月1日に発表した「経済・物価情勢の展望」でも、「2025年の物価上昇率は2.0%を下回るものと考えられる」と指摘。昨年段階で2025年にはデフレに戻る危険性を念頭に入れていると、当初からかなり弱気な物価見通しを示していたからだ。今年に入って、路線を突然変更したわけではなく、以前からの見解を引き続き踏襲しているに過ぎない。

いずれにしても、そんな日銀について一部メディアは「4月にマイナス金利解除」観測を喧伝しているし、実際に市場でもそう考える向きが大勢だ。QUICKの最新調査によると、マイナス金利の解除時期は「4月までに」が9割を超えていたと報じられている。
とは言え、それでも筆者は、日銀の金融政策変更はあくまで慎重に実施されると予想するとともに、金利差縮小スピードは飽くまで緩慢。さらに、日米などの縮小幅にも限界があるのではないかと考えている。

Bその他

最後に、干支や風水などを参考にしたうえで、今年の社会全体を通しての見通しを指摘しておく。

まずは、今年の干支はと言うと、十干が「甲(きのえ)」で十二支は「辰(たつ)」。つまり、「甲辰」になる。
陰陽五行説によると、「甲」は十干の1番目にあたり、「生命や物事の始まりや成長を表す」という。これ自体はポジティブな見解になるが、逆にネガティブな見方を指摘すると「物事に対して耐え忍ぶ状態を表す」とされている。また、十二支である「辰」は始まりから5番目にあたり、唯一架空の生き物。そして、一般的にも水や海の神様として祀られてきたことは有名だが、そこから転じて「自然万物が振動し、草木が成長して活力が旺盛になる」ことを表すとされている。

一方、日経平均を中心とした2024年の日本株はここまで堅調。相場格言で取り沙汰される、いわゆる「辰巳天井」を地で行く展開だが、新年早々能登半島地震が発生するなか、世論調査における岸田内閣の支持率は低迷するなど国内政治情勢も散々だ。堅調な日本株を横目ににらみつつ、トータルとすれば次に向けた「成長」の第一歩、来年以降に向けた種蒔きあるいは仕込みの一年であるのかもしれない。

なお、12年に一度の「辰年」は、何故か日本を中心に各国でなかなか大きな政治の転換点になることが多いということを締めとして指摘しておく。
日本における比較的喫緊の事例だけにとどめても、36年前の1988年にはいま現在も自民党を大きく揺るがす「裏金疑惑」。「令和リクルート事件」とも揶揄されるものの元祖、本物の「リクルート事件」がまず発生していた。また、24年前の2000年は「病魔によって小渕首相が倒れ、『森内閣』が急遽発足」。その森内閣で挑んだ衆院選で自民は惨敗となった。対して民主党が改選前の95議席から127議席と大幅増を記録している。そして、前回に当たる2012年は2000年とまったく逆の結果に。野田首相のもと総選挙に臨んだ民主党が今度は大惨敗を喫する。自民党はなんと294議席の圧勝で喪っていた政権を奪還。そして、歴代最長となる第2次安倍政権が誕生していた。
過去の「辰年」経験則から考えると、今年の日本の政治情勢も非常に興味深く、一波乱も二波乱もある気がしてならない。

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