ドル円見通し 1月2日から4連騰するも、5日夜の乱高下から週明けは安値を切り下げる(24/1/9)

ドル円は、8日未明に143.66円を付けて6日未明安値を割り込んだが、その後はFRB高官のタカ派発言もあり144円台序盤へ戻した。

ドル円見通し 1月2日から4連騰するも、5日夜の乱高下から週明けは安値を切り下げる(24/1/9)

1月2日から4連騰するも、5日夜の乱高下から週明けは安値を切り下げる

〇ドル円、1/5発表の米雇用統計が予想より強く利下げ開始時期先送り感、発表当初はドル高反応に
〇その後、米ISMサービス業景況指数、予想を下回る低下となり発表直後に一時急落商状に
〇1/8は日本市場休場で日中はやや軟調推移、NY連銀1年先期待インフレ率低水準をきっかけに下落
〇しかし利下げ期待に対する米FRB高官らのタカ派的発言を受け、144円台序盤へ戻す
〇日銀は大地震の影響を見ながら春闘待ちで暫く現状維持を継続か
〇144.50以下での推移中は一段安余地ありとし、143.66割れからは143円前後への下落を想定
〇144.50超えからは145円前後試しを想定

【概況】

ドル円は1月5日夜の米雇用統計が予想よりも強めの数字が揃ったことによる米長期債利回り上昇で発表直後に145.96円を付けて12月29日未明安値140.24円以降の高値を更新したが、その後のISMサービス業景況指数が予想を下回る低下となったことで143.80円へ急落、売り一巡で6日未明に144.89円まで戻す乱高下となった。
1月1日に発生した能登半島大地震の影響で日銀のマイナス金利解除等が先送りされるとの見方が強まって円売りとなり、昨年末にかけての米3月利下げ開始期待度が低下したことによる米長期債利回りの反騰により1月2日から5日まで4連騰とし、1月5日夜には11月13日高値151.90円からの下げ幅11.66円に対する半値戻しラインの146.07円に迫ったが一歩届かず、日足は上下に長いヒゲを付ける波乱線となった。
1月8日は日本市場が休場で日中はやや軟調推移となり、NY連銀の1年先の期待インフレ率が3年ぶり低水準となったことをきっかけとして8日未明に143.66円を付けて6日未明安値を割り込んだが、その後はFRB高官のタカ派発言もあり144円台序盤へ戻した。

【米雇用統計、予想より強く利下げ開始時期先送り感も】

1月5日夜に米労働省が発表した12月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比21万6000人増となり、11月の17万3000人及び市場予想の17万人増を大幅に上回った。ただし、10月分については当初の15万人増から10万5000人増へ、11月分も当初の19万9000人増から17万3000人増となり2か月合計で7万1000人の下方修正となった。失業率は11月と同じ3.7%で市場予想の3.8%への悪化とはならなかった。
インフレ指標である平均時給伸び率は前月比0.4%で11月と変わらなかったが市場予想の0.3%を上回り鈍化しなかった。前年同月比は4.1%で11月の4.0%から伸びが加速して市場予想の3.9%への鈍化に反した。
非農業部門就業者数は直前2か月の下方修正を差し引いて評価する必要があるが総じて強めの内容であり、米国の利下げ開始期が3月よりも先送りされるのではないかと市場は受け止めて発表当初はドル高反応となった。

米国のインフレ率はFRBが最重要としているPCE(個人消費支出)デフレーターが11月の全体で2.6%(10月は2.9%)、コア指数で3.2%(10月は3.4%)と着実に鈍化しており、7−9月期の四半期では2.0%に達しているため、12月FOMCで示された今年3回の利下げ想定は変わらないと思われるが、早ければ3月の利下げというやや楽観的な期待感は後退している。
一方で、雇用統計後に発表されたISM(米サプライ管理協会)の12月サービス業景況指数は50.6となり11月の52.7から低下して市場予想の52.6を大幅に下回って2023年5月以来の低水準となった。事業活動は11月の52.7から50.6へ悪化、雇用は50.7から43.3へ悪化、価格は58.3から57.4へ悪化して米雇用統計後のドル高反応にブレーキを掛けたためにドル円は発表直後に一時急落商状となった。

【NY連銀の期待インフレ率低下】

1月8日にNY連銀が発表した12月消費者調査における1年先期待インフレ率は3.01%となり3か月連続の低下で2020年12月の3.00%以来の低水準となった。3年先も2.62%となり4か月ぶりの低下で2020年4月以来の低水準となった。発表後はドル売り反応がみられた。
米FRB高官らの発言はタカ派的で市場の3月利下げ期待に釘を刺した。ダラス連銀のローガン総裁は1月6日に「追加利上げの可能性を議論の対象から外すべきではない」とし、1月8日にはアトランタ連銀のボスティック総裁が「インフレ抑制を確実に継続させるため引き締めの姿勢を崩していない」と述べた。
FRBのボウマン理事は1月8日に「インフレ率が2%に低下し続けるなら過度な引き締めとならないよう金利引き下げプロセスを開始することが適切になる」と述べた。タカ派とみられている同理事の利下げ言及は市場の利下げ期待を助長したが、同理事は「利下げを開始する地点に我々はまだいない」として過剰な期待には釘を刺した。

【日銀は大地震の影響を見ながら春闘待ちで暫く現状維持を継続か】

能登半島大地震の震災級被害により、日銀のマイナス金利解除等の出口戦略への動きが停滞するとの見方が強まっていることが1月2日からのドル円の連騰に寄与した。次回の日銀金融政策決定会合は1月22−23日に開催されるが市場は現状維持とみている。
12月7日に日銀の植田総裁が参院での答弁で出口戦略へ向けて「年末から来年にかけては一段とチャレンジングになる」と述べたことをきっかけとして早ければ1月にもマイナス金利解除への動きがみられるのではないかと市場は受け止めてドル円は急落した。日銀が12月会合で金融緩和を現状維持として出口へ向けた前傾姿勢を見せなかったことで1月のマイナス金利解除はないとの見方が強まったものの、春闘を見ながら4月には決断されるのではないかとの見方は残った。
しかし、植田総裁は年末のメディアインタビューで出口へ向けた地ならし的な発言をせず、1月4日の全銀協における挨拶で大地震の影響について「金融機能の維持および円滑な資金決済を確保するため銀行界と協力し、万全の措置を講じる」と述べており、当面は政策修正による混乱を避ける姿勢を保つと市場は受け止めている。

【米10年債利回りは上昇一服】

1月8日の米長期債利回りはNY連銀の期待インフレ率鈍化により総じて低下したが1月5日に雇用統計をきっかけに乱高下したレンジ内に留まった動きだった。
長期金利指標の10年債利回りは1月5日に一時4.10%をつけて12月27日の3.78%以降の最高としたが、8日は一時3.96%まで低下したところから戻したものの前日比0.02%低下の4.03%で終了した。
2年債利回りは12月27日につけた4.23%から上昇に転じてきたが、1月5日は雇用統計後の乱高下で一時4.49%をつけて4.39%で終了した。8日は一時4.31%まで低下してから持ち直して前日比0.01%低下の4.38%で終了した。
一方、1月8日のNYダウは前日比216.90ドル高と上昇して4日から3連騰とし、ナスダック総合指数は319.70ポイント高の大幅上昇で5日から連騰した。米国の利下げ開始時期についての見方は分かれるものの多少先送りされたとしても今年は利下げに向かい株高も続くとの楽観が優勢のようだ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は年末までの円高から年明けは円安へと流れを変えたが、1月2日午前安値を起点として4連騰の上昇で1月5日夜高値145.96円まで大上昇したものの、6日未明に143.80円まで反落してから145円に迫る反発となる乱高下が発生し、9日未明には143.66円を付けて6日未明安値を割り込んだ。このため、現状は1月5日夜高値を目先のピークとした下落期にあるとみる。安値形成期を9日未明から12日の日中にかけての間とし、144.50円以下での推移中は下向きとみる。ただし、144.50円超えからは強気転換注意とし、145円超えからは上昇期入りとして10日夜から12日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では1月5日夜高値からの下落により遅行スパンが悪化して9日未明には先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は1月9日未明に30ポイント台へ低下した後も50ポイント以下にとどまっているためまだ20ポイント台への低下を伴う下落余地ありとみるが、55ポイント超えからは反騰期入りとみて60ポイント台前半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月9日未明安値143.66円を下値支持線、144.50円を上値抵抗線とする。
(2)144.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、143.66円割れからは143円前後への下落を想定する。143円以下は反騰注意とするが、144円を下回っての推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.50円超えからは145円前後試しを想定する。145円前後は売られやすいとみるが、144.50円を上回っての推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

1/9(火)
14:00 (日) 日銀「需給ギャップと潜在成長率」試算値公表
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.4%、予想 0.2%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -3.5%、予想 -4.0%)
19:00 (欧) 11月 失業率 (10月 6.5%、予想 6.5%)
22:30 (米) 11月 貿易収支 (10月 -643億ドル、予想 -650億ドル)
26:00 (米) バーFRB副議長、講演(銀行規制関連)
27:00 (米) 財務省3年ハイイールド債入札

1/10(水)
08:30 (日) 11月 勤労統計-現金給与総額 前年同月比 (10月 1.5%、予想 1.5%)
09:30 (豪) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 4.9%、予想 4.5%)
24:00 (米) 11月 卸売売上高 前月比 (10月 -1.3%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年ハイイールド債入札
29:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演(経済見通し)


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る