ドル円見通し 植田日銀総裁答弁と首相会談をきっかけに一時141円台へ急落
〇ドル円、日銀総裁の国会答弁と首相会談報道から売りの連鎖反応、12/8未明141.67まで暴落的な下落
〇サプライズ感のある総裁発言と受け止められ、狼狽的な売り注文の連鎖反応が発生したか
〇日銀総裁の国会答弁や副総裁の発言、出口戦略への姿勢を印象付ける
〇米長期債利回りはまちまちの動き、10年債利回りは反発、NYダウは4日ぶり反発
〇143円を上回るうちは上昇余地ありとし、144.50超えからは145円台前半を目指す上昇を想定する
〇143円割れからは下落再開とみて、12/8未明安値141.67試しとする
【概況】
ドル円は12月4日午前に146.22円を付けて11月13日夜高値151.90円以降の安値としたところから下げ渋り、7日午前にかけては147円を挟んだ揉み合いで推移していたが、植田日銀総裁が国会答弁で「年末から来年にかけてチャレンジングになる」と発言したことをきっかけに下落に転じ、岸田首相と今年3回目の会談を行って金融緩和政策の出口戦略について説明したとの報道から売りの連鎖反応となり12月8日未明には141.67円まで暴落的な下落となった。売られ過ぎの反動で8日早朝には144円台を回復しているが、日銀の出口戦略へ向けた動きはまだ鈍いとみていた市場にとってはサプライズ感のある総裁発言と受け止められ、12月4日安値を割り込んだところからは狼狽的な売り注文の連鎖反応が発生したと思われる。
ドル円の急落に焦点が向いていたため、7日夜の米労働省による新規失業保険申請件数に対する市場の反応は鈍かったが、12月2日までの週間で前週比1000件増の22万件となり2週連続で悪化したことはドル安要因となりユーロ等の反発に寄与した。失業保険受給者総数は11月25日までの週間で186万1000人で前週から6万4000人減少した。
【日銀、出口への姿勢を印象付ける】
日銀の植田総裁は12月7日の参院財政金融委員会において「年末から来年にかけてチャレンジングになる」と答弁し、その後に岸田首相と会談して金融緩和政策からの出口戦略についての基本的な考え方を説明したと報じられた。
植田総裁は金融緩和政策の出口について、「賃金と物価がバランスよく上昇していくのか難しい見極めを試される局面が近い」とし、来年の春闘の賃上げ動向を見ながらマイナス金利解除の判断をしてゆく姿勢を示した。植田総裁はその後に首相官邸で岸田首相と会談した際には金融緩和政策からの出口戦略についての考え方を首相に説明したと記者団に述べている。
12月4日に日銀は黒田総裁時代から続いてきた異次元金融緩和の功罪について多角的レビューを行い、内容は非公表とし、来年5月に二度目のレビューと総括を行うとした。
12月6日に日銀の氷見野副総裁が「賃金と物価の好循環が強まっていくメリットは幅広く家計と企業に及ぶ。出口を良い結果につなげることは十分可能だ」、「マイナス金利を解除しても経済への悪影響は限定的」との見方を講演で示すなど、従来の慎重姿勢から一歩踏み出した発言という受け止め方も見られていた。
日銀は12月18-19日に次回の金融政策決定会合を行う。米FRBによるFOMCは12月12-13日にある。FOMCが利上げ打ち止めと来春の利下げへの市場の期待を後退させずに米長期金利が低下し、日銀が来年の出口戦略へ進む姿勢を示すなら、日米金利差による円高ドル安が一段と進行する可能性もあるが、日銀が12月7日から8日未明にかけての急激な円高を見て市場の過剰反応をおちつかせようとするハト派的な内容にとどめるならドル円の下落もいったん落ち着く可能性があると考える。
【米10年債利回りは反発、ダウも反発】
12月7日の米長期債利回りはまちまちの動きだった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の4.15%となった。直近のピークである10月23日の5.02%から12月6日の4.10%まで低下してきたが、7日は一時4.18%まで戻してから上げ幅を削ったがプラス圏を維持して下げ渋りとなった。ドル円の急落と日銀が出口戦略へ向かうなら米国債への投資魅力が後退すると見て債券売り・利回り上昇となった側面も指摘されているが、大きな流れは10月23日からの低下傾向の継続と思われる。
30年債利回りは前日比0.04%上昇の4.26%となり、10月23日の5.18%をピークとした下落の継続で12月6日に4.21%まで低下した後は下げ渋りの様相であり、7日は4.28%へ戻してから上げ幅を削っている。
利上げ動向に敏感な2年債利回りは前日比0.01%低下の4.59%となり、10月19日に5.26%でピークを付けてからの大幅低下が12月1日の4.54%で落ち着き、その後は12月1日の高安レンジ内で下げ渋り型の持ち合いで推移して上値は重い印象だ。
一方、NYダウは前日まで3営業日続落していたが7日は前日比62.95ドル高と4日ぶりに反発した。グーグル親会社のアルファベットやAMD等が上昇してハイテク株高となったことが貢献した。ナスダック総合指数も193.28ポイント高と上昇した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は12月4日午前安値で目先の底を付けたとして12月5日夜から7日深夜にかけての間への上昇を想定し、4日午前安値割れからは新たな下落期入りとしていたが、7日午後に4日午前安値を割り込んでから大幅下落した。しかし4日午前安値から4日目となる8日未明安値から2円を超える反騰となっているため、8日未明安値で底を付けて戻りを試していると思われる。
次の高値形成期は8日の日中から13日にかけての間と想定されるので、143円以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、143円割れから続落する場合は12月8日未明安値141.67円試しとし、底割れからは新たな下落期入りとなる可能性があると注意したい。
60分足の一目均衡表では12月8日未明への大幅下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは戻りをさらに試すとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は12月7日午後に10ポイント台序盤へ急低下したが、8日未明への一段安に際しては指数のボトムがフラットとなる強気逆行を見せているので戻りを試す流れとみる。ただし、30ポイント以下での推移が続き始める場合はもう一段安を試す流れとして10ポイント割れを試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.00円を下値支持線、144.50円を上値抵抗線とする。
(2)143円を上回るうちは上昇余地ありとし、144.50円超えからは145円台前半を目指す上昇を想定する。145円以上は反落警戒とするが、143円台を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143円割れからは下落再開とみて12月8日未明安値141.67円試しとし、底割れからは140円試しへ向かう流れとみる。140.50円以下は反騰警戒とするが、143円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
12/8(金)
休場 コロンビア、フィリピン
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー現状判断DI (10月 49.5、予想 49.1)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー先行判断DI (10月 48.4、予想 48.1)
16:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 -0.4%、予想 -0.4%)
16:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 3.2%、予想 3.2%)
22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 15.0万人、予想 18.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 3.9%、予想 3.9%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.1%、予想 4.0%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (11月 61.3、予想 62.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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