ドル円見通し 146円台序盤から147円台前半へ戻すが右肩下がりの範囲
〇ドル円、12/4午前序盤146.22まで下げたが、米長期債利回りの反発を見て12/5未明147.44まで戻す
〇今週は週末にかけて重要指標の発表相次ぐ、ドル円としては今晩のJOLTS求人件数も見定めたいところ
〇日銀は金融政策検証の「多角的レビュー」開催、これまでの政策を肯定、政策変更はまだ先か
〇米長期債利回りは先週末にかけての大幅低下から反発、NYダウは5日ぶり反落
〇146.70以上での推移中は一段高余地ありとし、147.50超えからは148円台中盤への上昇を想定する
〇146.70割れからは146.22試しとし、底割れからは145円台後半への下落を想定する
【概況】
ドル円は12月1日夜の米11月ISM製造業景況指数が13か月連続で50を割り込み、パウエルFRB議長の発言がタカ派的ではなく利上げ終了感を助長したとして148円を挟んだ揉み合いから下落に転じて12月2日未明には安値で146.65円をつけて11月29日安値146.67円をわずかに割り込み11月13日夜の年初来高値151.90円以降の安値を更新して先週を終えていた。
週明けの12月4日は手掛かりに欠けたが、週末に一段安した流れを引き継いで午前序盤に146.22円まで安値を切り下げたが、146円割れを試すのは時期尚早として買い戻され、米長期債利回りが先週末への大幅低下から反発したのを見て5日未明には147.44円まで戻した。
今週は週末にかけて重要指標の発表も相次ぐが、12月5日の米ISMサービス業景況指数と米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、6日には米ADP民間雇用者数、7日には週間新規失業保険申請件数、8日に米11月雇用統計と続く。最近ではJOLTS求人件数に対する市場反応も大きいため、ドル円としては今晩の米経済指標を見定めたいところだ。
米商務省が12月4日夜に発表した10月の米製造業受注は前月比3.6%減で9月の2.3%増から悪化して2か月振りのマイナスとなり市場予想の2.6%減を下回った。変動の激しい輸送関連を除くと前月比1.2%減、国防関連を除くと前月比4.2%減だったことは利上げ打ち止めに寄与するものだが、市場の反応は限定的だった。
【金融政策検証の「多角的レビュー」はこれまでの政策肯定、政策変更はまだ先か】
日銀は12月4日に過去25年間続いてきた金融政策を検証する「多角的レビュー」として日銀幹部とエコノミストらによる討論会形式の会合を日銀本店で開催した。黒田総裁時代から続いてきた異次元の金融緩和政策と現状について効果と副作用を検証するものと位置づけられ、今後の金融政策の修正ないし継続への布石となる会合とされ、来年5月に二回目の会合と今回の会合結果を踏まえた総括を行うとしている。
今回の会合は非公開だが、時事通信社は独自取材により、マイナス金利政策や長短金利操作など異例の金融緩和策については「デフレではない状況をつくり出した」と評価され、黒田前総裁による2013年からの異次元緩和導入以降は「物価が0.7%程度押し上げる効果があった」と分析されたと報じた。副作用としては債券市場での円滑な取引が阻害されたことが指摘され、日銀が将来利上げに踏み切る場合には金融機関が預け入れている当座預金への利息支払いが増大して日銀の収益が悪化し、急速な利上げを行う場合には日銀が赤字に陥るとの試算も出席者から提出されたという。
ドル円は11月13日に151.90円まで上昇してから下落に転じていることで過度な円安加速への懸念が後退し、欧米豪等による大幅利上げに対して金融緩和を継続したことによる取り残された感は米国の利上げ打ち止めと来春以降の利下げ期待により日銀へのプレッシャーが後退している印象もある。植田総裁は4月就任以降に黒田前総裁末期に続いてYCCの柔軟化を追加したが、マイナス金利等の金融緩和政策の基本は変えていない。
世界的なインフレ鎮静化の動きも踏まえれば、今年前半に市場が意識していたほどには金融緩和政策からの出口へ急ぐ姿勢は緩んでいるのではないかと考える。マイナス金利解除については5月の次回会合以降とすれば、当面は152円未到達による円高への修正を続けつつ、日米金利差を見ながら安値を試して行く展開と考えるが、11月13日からの円高規模については、今年3月8日からの下落時や6月30日からの下落時並みで落ち着く可能性もあるのではないかとみる。
【米長期債利回りは大幅低下一服で戻し、ダウは5日ぶり反落】
12月4日の米長期債利回りは総じて上昇した。先週末にかけての大幅低下が一服、今週の米経済指標発表が相次ぐ前にポジション調整的に戻した印象だ。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.06%上昇の4.26%となった。12月1日には一時4.20%をつけて直近のピークである10月23日の5.02%以降の最低を更新したが、4日は一時4.30%まで戻してから上昇幅を削った。
30年債利回りは先週末比0.02%上昇の4.41%となった。12月1日は4.39%まで低下して直近のピークである10月23日の5.18%以降の最低を更新したが、5日は下げ渋りの様相で、一時4.46%%まで戻してから上昇幅を削った。
2年債利回りは先週末比0.10%上昇の4.64%となった。12月1日は4.54%となり直近のピークである10月19日の5.26%以降の最低を更新したが、急落後の修正で5日は一時4.67%まで戻してから上昇幅を削っている。
11月28日のウォラーFRB理事による利下げへの言及、12月1日のパウエルFRB議長による発言がタカ派的ではなかったことにより利上げ打ち止め感と利下げ開始への期待が強まっている状況は変わりないと思われる。今週は12月12−13日の米FOMC(連邦公開市場委員会)を控えてFRB関係者は政策への言及を控えるブラックアウト期間に入っている。
一方、NYダウは先週末比41.06ドル安と下落、5日ぶりの反落となった。年初来高値更新まで上昇した後で利益確定売りが優勢となって上げ渋りの様相だ。ナスダック総合指数も119.54ポイント安と下落しており、年初来高値に迫ったところで足踏みの様相だ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は11月29日午前安値146.67円を12月4日午前安値146.22円で割り込んだが、その後に1円を超える反発を見せているため、29日午前安値から3日目となる12月4日午前安値で目先の底を付けて戻したと思われる。
11月30日深夜高値を基準として目先の高値形成期は12月5日夜から7日深夜にかけての間と想定されるが、戻りは短命の可能性もあると注意し、146.70円割れからは12月4日午前安値試しとし、底割れからは新たな下落期入りとして7日午前から11日午前にかけての間への下落を想定する。
11月23日未明以降、戻り高値切り下がり基調にあるため、11月13日からの下落基調を抜け出すにはまず12月1日未明高値148.51円を超える必要があると思われる。
60分足の一目均衡表では12月5日未明への反発で遅行スパンが好転したが先行スパンの下限にとどまっている。遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを上抜くところからは上昇が勢い付く可能性があるとみるが、先行スパンを上抜けないか一時的に上抜いても再び転落する場合は下げ再開からの一段安を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月5日未明への上昇で60ポイントを超えたが、その後は伸び悩みとなっている。50ポイント以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは60ポイント台後半への上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開と仮定して30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.70円を下値支持線、147.50円を上値抵抗線とする。
(2)146.70円以上での推移中は一段高余地ありとし、147.50円超えからは148円台中盤(148.35円から148.65円)への上昇を想定する。148.50円以上は反落注意とするが、147円を割り込んでも回復するうちは6日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)146.70円割れからは12月4日午前安値146.22円試しとし、底割れからは145円台後半(145.85円から145.50円)への下落を想定する。145.50円以下は反騰注意とするが、146.50円以下での推移なら6日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
12/5(火)
休場 タイ
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 50.4、予想 50.5)
12:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 4.35%、予想 4.35%)
17:55 (独) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.7)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.2)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.5)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 0.5%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 -12.4%、予想 -9.5%)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.8)
24:00 (米) 10月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (9月 955.3万件、予想 930.0万件)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 51.8、予想 52.0)
12/6(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4−6月 0.4%、予想 0.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4−6月 2.1%、予想 1.8%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前年同月比 (9月 -4.3%、予想 3.7%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.3%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -2.9%、予想 1.1%)
19:30 (英) 英中銀、金融安定報告公表
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (10月 11.3万人、予想 12.0万人)
22:30 (米) 10月 貿易収支 (9月 -615億ドル、予想 -642億ドル)
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 4.7%、予想 4.9%)
24:00 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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