来週の為替相場見通し:『米金利低下でドル円急落。但し下値余地は限定的か』(12/2朝)

ドル円は一時146.68(9/12以来、約2カ月半ぶり安値圏)まで急落するなど、冴えない動きが続いています。

来週の為替相場見通し:『米金利低下でドル円急落。但し下値余地は限定的か』(12/2朝)

『米金利低下でドル円急落。但し下値余地は限定的か』

〇ドル円、週明け149.68まで上昇後ウォラーFRB理事のハト派発言で週央にかけ146.68まで下落
〇その後は一時148.51まで反発するもISM製造業指数の不冴え等に147円近辺に値を崩す
〇ユーロドル、週央にかけ1.10台を回復するも欧州インフレ減速観測等に1.09割れに反落
〇ドル円、主要テクニカルポイントを下抜け、「三役逆転」も成立、地合いの悪化が警戒される
〇ファンダメンタルズは日米金融政策格差とそれに伴う円キャリートレードの再開期待がドル円を支持
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの再開(売り一巡後の持ち直し)をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.75ー148.75、(EURUSD):1.0700−1.1000

今週のレビュー(11/27−12/1)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.46で寄り付いた後、早々に週間高値149.68まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)株式市場の冴えない動き(中国株や日経平均株価の冴えない動き→リスク回避の円買い再開)や、(2)米10月新築住宅販売件数(結果67.9万件、予想72.1万件)の市場予想を下回る結果、(3)米11月ダラス連銀製造業活動指数(結果▲19.9、予想▲16.5)の市場予想を下回る結果、(4)米11月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲5、予想+1)の市場予想を下回る結果、(5)ウォラーFRB理事による「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ政策金利を引き下げる根拠は十分にある」とのハト派的な発言(タカ派と目されるウォラーFRB理事によるサプライズ的なハト派発言)、

(6)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りが週初に記録した4.51%から4.24%まで急低下)、(7)ドル円ロング勢の大規模ロスカット、(8)テクニカル的な地合いの悪化(日足ローソク足が90日移動平均線や一目均衡表雲下限を下方ブレイク)が重石となり、週央にかけて、週間安値146.68(9/12以来、約2カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。

その後は、(9)急ピッチな下落に対する反動買いや、(10)安達日銀審議委員による「粘り強く金融緩和を継続する」とのハト派的な発言、(9)米第3四半期GDP改定値(結果+5.2%、予想+4.9%)の市場予想を上回る結果、(10)中村日銀審議委員による「今は慎重な対応が必要。金融緩和政策修正にはもう少し時間かかる」「現在の物価上昇はコストプッシュの色彩強く、持続的な2%目標実現に確信持てる状況でない」とのハト派的な発言、(11)米11月シカゴ購買部協会景気指数(結果55.8、予想46.0)の力強い結果、(12)サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「現時点では利下げについて全く考えていない」「FRBが利上げを完了したかどうかを考えるのは時期尚早」とのタカ派的な発言、(13)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレ圧力が続けば再び利上げの可能性もある」とのタカ派的な発言、(14)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りは4.24%から4.36%へ急上昇)を支えに、一時148.51まで反発する場面も見られましたが、一巡後に伸び悩むと、

(15)米11月ISM製造業景況指数(結果46.7、予想47.8)の不冴な結果や、(16)シカゴ連銀グールズビー総裁による「インフレは我々の望み通りに低下している」「インフレ率は2%に向け順調に進んでいる」とのハト派的な発言、(17)米長期金利の再低下が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/2午前2時30分現在)では、147.07前後まで値を崩す動きとなっております。尚、今週発表された米10月PCEコアデフレータ(結果+3.5%、予想+3.5%)は市場予想通りの結果となったため、ドル円相場への影響は限られました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0937で寄り付いた後、(1)ラガルドECB総裁による「総合インフレ率が向こう数カ月で再び上向く可能性あり」「インフレとの戦いはまだ終わっていない」とのタカ派的な発言や、(2)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「ECBはまだ利下げを検討すべき段階にはない」とのタカ派的な発言、(3)ドイツ12月GFK消費者信頼感指数(結果▲27.8、予想▲28.2)の市場予想を上回る結果、(4)フランス11月INSEE消費者信頼感指数(結果87、予想84)の市場予想を上回る結果、(5)ウォラーFRB理事による「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ政策金利を引き下げる根拠は十分にある」とのハト派的な発言、(6)米金利低下に伴うドル売り圧力、(7)心理的節目1.1000突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売りが支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1018(8/10以来、約3カ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(8)ドイツ11月調和消費者物価指数速報値(結果+2.3%、予想+2.5%)の市場予想を下回る結果や、(9)米第3四半期GDP改定値(結果+5.2%、予想+4.9%)の市場予想を上回る結果、(10)イタリア中銀パネッタ総裁による「ユーロ圏のコアインフレ率は2024年も減速を続ける見通し」「インフレ率の低下が加速すれば、金融政策が緩和される可能性がある」とのハト派的な発言、(11)ユーロ圏11月消費者物価指数速報値(結果+2.4%、予想+2.7%)および、同コア指数(結果+3.6%、予想+3.9%)の市場予想を下回る結果、

(12)米11月シカゴ購買部協会景気指数の力強い結果、(13)サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「現時点では利下げについて全く考えていない」「FRBが利上げを完了したかどうかを考えるのは時期尚早」とのタカ派的な発言、(14)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレ圧力が続けば再び利上げの可能性もある」とのタカ派的な発言、(15)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0829まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間12/2午前2時30分現在)では、1.0875前後で推移しております。

来週の見通し(12/4−12/8)

<ドル円相場>
ドル円は一時146.68(9/12以来、約2カ月半ぶり安値圏)まで急落するなど、冴えない動きが続いています。日足ローソク足が、主要テクニカルポイント(21日移動平均線、90日移動平均線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に地合いの悪化が警戒されます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(ウォラーFRB理事は早期利下げの可能性を示唆したものの、「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ」という条件を付けているため、市場の反応は短絡的で行き過ぎ感あり。事実、サンフランシスコ連銀デイリー総裁や、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、パウエルFRB議長は「利下げ議論は時期尚早」とのスタンス継続。週末に発表された米11月ISM支払価格も予想46.0に対して結果49.9とインフレリスクの残存を示唆)や、

(2)日銀による金融緩和の長期化観測(今週は安達日銀審議委員や中村日銀審議委員より金融緩和を粘り強く続ける姿勢が強調→マイナス金利脱却議論は時期尚早との見方の再燃)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策格差とそれに伴う円キャリートレードの再開期待(日米金利差に着目した構造的なドル買い・円売り)、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています(一部で米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測が拡がっていますが、例え利下げに転じたとしても日米金利差が急速に縮まるわけではないため、円キャリートレードの優位性は当面の間、残り続ける見通し)。

こうした中、来週は上記1を見極める目的で、米国の主要経済指標(米11月ISM非製造業景況指数、米11月雇用統計、米12月ミシガン大消費者信頼感指数など)に注目が集まります(※来週はブラックアウト期間突入済みで米FRB高官発言が予定されていないため、米経済指標への注目度が高まり易い)。上記米経済指標が市場予想を上回る場合には、米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測→米長期金利急上昇→米ドル買いの経路でドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの再開(売り一巡後の持ち直し)をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):145.75ー148.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、11/29に記録した約3カ月半ぶり高値1.1018(8/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて、約2週間ぶり安値となる1.0829(11/17以来の安値圏)まで急落しました。強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」は継続しているものの、日足ローソク足が3営業日連続で大陰線を記録したため、テクニカル的に見て、地合いの急速な悪化が警戒されます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済を巡る先行き不透明感や、(2)ECBによる早期利下げ観測(今週発表されたドイツおよびユーロ圏のインフレ率は急低下→市場では早ければ来年4−6月期にECBが利下げに踏み切るとの見方が浮上)、(3)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記2を見極める目的でECB高官発言(ラガルドECB総裁やデギンドスECB副総裁)や、ユーロ圏10月生産者物価指数に注目が集まります。ECB高官よりハト派的な発言が見られる場合や、ユーロ圏PPIが市場予想を下回る場合には、インフレ率のピークアウト期待→ECBによる利下げ開始時期の前倒し観測→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『米金利低下でドル円急落。但し下値余地は限定的か』

ドル円日足

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