米CPIショックによるドル全面安で150円に迫る
〇ドル円、米10月CPIが予想を下回ったことをトリガーに米長期債利回りが急低下しドル全面安
〇11/3安値から11/13高値までの上昇幅2.70に対して、下げ幅は1.77となり凡そ3分の2を削る
〇米10月CPI上昇率、前月比・予想比ともに鈍化、前月比0.0%は2022年7月以来の低水準
〇市場はFRB追加利上げ頭打ちとみて、2024年5月に利下げされる確率が6割を超える
〇為替市場、ユーロやポンド、豪ドル等が急上昇
〇NYダウ、米長期債利回り低下を好感し前日比489.83ドル高と大幅上昇、11/10から3連騰
〇150.50以下での推移中は一段安警戒、11/14安値割れからは149円台後半への下落を想定
〇150.70超えからは売り一巡後の反騰入りとみて151円を試す上昇を想定する
【概況】
ドル円は11月13日深夜に151.90円を付けて10月31日高値151.71円を超えて年初来高値を更新し、昨年10月21日高値151.94円に迫ったところから13日深夜安値151.20円へ下落し、その後の持ち直しで151.70円台へ切り返していたが、米10月CPI上昇率が予想を下回ったことをトリガーとして米長期債利回りが急低下してドル全面安となったため、22時台に151円を割り込み、NY時間後半には150.13円まで大幅続落した。
10月31日の日銀金融政策決定会合と11月2日未明の米FOMC及び11月3日夜の米10月雇用統計を通過しながら乱高下となり、11月6日からの連騰で乱高下のレンジを超えてきたが152円を目前として高値警戒感も根強い状況にあった。
そこに米CPIの鈍化によるドル安反応が重なったことでいったん仕切り直しの売りが集中した印象だ。
11月3日の安値149.20円から11月13日高値151.90円までの上昇幅2.70円に対して14日安値150.13円までの下げ幅は1.77円となり凡そ3分の2を削った。しかし、米国の利下げはまだ先で利上げ状態は継続すること、日銀は金融緩和政策を解除しきれない状況が続くことを踏まえれば、10月30日安値や11月3日安値からの反騰等と同様に、突っ込んだところを買われて上昇(円安)を再開する可能性もあるのではないかと考える。
【米CPIは予想外の鈍化】
11月14日夜に米労働省が発表した10月のCPI(消費者物価指数)上昇率は、全体の前月比が0.0%で9月の0.4%から大幅に鈍化して市場予想の0.1%を下回り、前年同月比は3.2%で9月の3.7%から大幅に鈍化して市場予想の3.3%を下回った。前月比の0.0%は2022年7月以来の低水準で、前年同月比の鈍化は4か月振りだった。
変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIの上昇率は前月比0.2%で9月の0.3%および市場予想の0.3%を下回り、前同月比は4.0%で9月の4.1%から鈍化して市場予想の4.1%を下回った。
予想を下回るCPI鈍化により、市場はFRBの追加利上げが見送られて頭打ちとなり、来年初夏には利下げもあり得るとの見方を強め、米長期債利回りは低下、為替市場はユーロやポンド、豪ドル等が急上昇し、ドル円も急落してドル全面安となった。
シカゴ連銀のグールズビー総裁はCPI発表後に「インフレ低下が続いていることを示すもの」としたが、PCE(個人消費支出)物価指数で年2%の政策目標を達成するには「まだ道のりがある」と述べて早期利下げ期待に釘を刺した。しかし米金利先物市場では2024年5月に利下げされる確率が6割を超えてきた。
【米長期債利回りは急低下、ダウは上昇】
11月14日の米長期債利回りは米10月CPI上昇率が予想を下回ったために総じて大幅低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.19%低下の4.45%となった。10月23日の5.02%をピークとして下落に転じ、11月9日に4.47%まで低下したところから戻していたが、14日の低下により10月23日以降の最低を更新した。
30年債利回りは前日比0.13%低下の4.63%となったが、一時4.60%まで低下して11月8日に付けた4.61%を割り込んで10月23日に付けた5.18%以降の最低とした。
利上げ動向に敏感な2年債利回りは前日比0.20%低下の4.84%となった。10月19日に5.26%でピークを付けて11月3日の4.81%まで低下したところからFRB高官らの追加利上げ余地への言及で戻し、11月13日には一時5.08%をつけていたが、14日は一時4.81%をつけて11月3日以降の上昇幅を解消している。
一方でNYダウは米長期債利回り低下を好感して前日比489.83ドル高と大幅上昇して10日から3連騰とし、ナスダック総合指数は326.64ポイント高の大幅上昇で10月26日安値12543.86以降の高値を更新して14000台に乗せてきた。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は11月13日深夜に151.90円まで年初来高値を更新してから151.20円まで下げたところは一時的な下落として早々に買い戻されたが、14日夜の米CPI鈍化はややサプライズ型のドル全面安反応となったために13日深夜安値を割り込んでからもさらに大幅続落した。
急落後の反動高にも注意がいるところだが、150.50円を超えないか一時的に超えても維持できないうちは15日の日中から16日深夜にかけての間への下落余地ありとみる。150.70円超えからは目先の底を付けて戻しに入ったとみて20日にかけての上昇を想定する。ただし、151円台まで戻せないうちは戻り一巡後にもう一度安値試しへ向かう可能性があると考える。
60分足の一目均衡表では11月14日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。両スパンともに実線と大きく乖離している。遅行スパン悪化中は一段安警戒とするが、26本基準線超えからは強気転換注意とし、遅行スパン好転からは先行スパンの上下限を試す上昇を想定する。
60分足の相対力指数は11月15日早朝に10ポイント台へ急低下し、その後も30ポイント以下にとどまっている。40ポイント以下での推移中は一段安警戒とするが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、40ポイント超えからは50ポイント前後への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月14日安値150.13円を下値支持線、150.70円を上値抵抗線とする。
(2)150.50円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、14日安値割れからは149円台後半(149.90円から149.50円台)への下落を想定する。149.70円以下は反騰注意とするが、150.50円以下での推移か直前安値から0.70円を超える反騰がみられないうちは16日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)150.70円超えからは売り一巡後の反騰入りとみて151円を試す上昇を想定する。151円手前は反落注意とし、その後に150.50円を割り込む場合は下落再開とするが、150.70円を超えてからも150.50円以上を維持して推移するなら16日も戻りを試しやすいとみる。
【当面の予定】
11/15(水)
休場 ブラジル
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 5.5%、予想 7.0%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.4%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 0.2%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -4.6%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 0.5%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 6.7%、予想 4.8%)
16:00 (英) 10月 コアCPI 前年同月比 (9月 6.1%、予想 5.8%)
16:00 (英) 10月 RPI(小売物価指数) 前月比 (9月 0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (9月 8.9%、予想 6.4%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.6%、予想 -1.0%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -5.1%、予想 -6.3%)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 119億ユーロ、予想 67億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 67億ユーロ)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.7%、予想 -0.3%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.6%、予想 0.0%)
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 0.5%、予想 0.1%)
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 2.2%、予想 1.9%)
22:30 (米) 10月 コアPPI 前月比 (9月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 コアPPI 前年同月比 (9月 2.7%、予想 2.7%)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 -4.6、予想 -2.8)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
11/16(木)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 -0.5%、予想 0.4%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 -7.7%、予想 -3.6%)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調前 (9月 624億円、予想 -7357億円)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調済 (9月 -4341億円、予想 -7121億円)
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 0.67万人、予想 2.40万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 3.6%、予想 3.7%)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -0.1%、予想 -0.1%)
20:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人、予想 184.6万人)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 -0.3%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.7%、予想 -0.5%)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 -9.0、予想 -8.3)
22:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、会議挨拶
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.3%、予想 -0.4%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 79.7%、予想 79.4%)
23:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
23:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 40、予想 40)
24:35 (米) バーFRB副議長、講演
24:45 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
25:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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